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6話 エンビス・アトカーシャ

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(エンビス・アトカーシャ侯爵視点)


 ふう、やれやれ……ようやくライアを追い出すことに成功したな。まったく1年も期間を与えたと言うのに役たたずめが……。


「しかし、エンビス様。よろしかったのでしょうか? ライア様にあのような仕打ちをして……」

「どういうことだ?」


 執事のメイザースが不安気な顔をしている。何をそんなに脅えているのか。


「いえ、彼女は仮にも伯爵家の娘なのですし……何もあそこまで酷い仕打ちをしなくても良かったのではないでしょうか?」

「ふん、あの女の家系が復讐をしてくると考えているのか?」

「いえ、それはないとは思いますが……」


 メイザースもそこは分かっているようだな。仮にライアの父親であるリューザ・フォビトン伯爵が何かを言って来たとしても、全て撃退できるようには考えてある。何も問題はない。


「メガリス国王陛下も承認されたのだからな。私達の関係が終わったことは、国家的に認められたということだ。何も怖がる必要はないさ」

「それは確かにそうかもしれませんが……」


 今日のメイザースはやけに絡んでくるな。そんなに脅えているのか? まあ、脅えている理由は想像できるが。


「国王陛下が承認したのは、ライアが酷い女だと認めたからだと言いたいのか?」

「はい、その通りです。これはエンビス様の作り話でしょう?」

「まあ、方便と言ってもらいたいがな」


 意味合いとしてはどちらでも変わらんか。ふはははははは。


「国王陛下に嘘を吐いたことになります……これはいくらエンビス様でもマズイのでは……」

「そこはバレないように手を打ってある。ライアの家系が余計なことをしないように監視の強化に努めるとしよう」


 通常であれば侯爵である私に逆らえるわけはないが、決死の特攻をされると厄介かもしれないからな。

「大丈夫だと良いのですが、こういった情報はどこから洩れるかわかりませんよ?」

「私を敵に回せばただでは済まないことくらいは貴族なら誰もが分かっているさ。そんな危険を冒す奴はまずいないだろう。心配することはない」

 念のためにフォビトン家の監視を行うことにする。これで万全というものだろう。まさか既に調査が進んでいるなんてことはないだろうからな。早すぎる。


「わかりました、その件は一旦置いておきます。それよりもエンビス様」

「どうかしたのか?」

「近々、フェリク・メガリス第二王子殿下がお越しになりたいとおっしゃっております。お時間の調整などしていただけますか?」

「なんと、フェリク王子殿下が? わかった調整しておこう」


 これは意外な人物の名前が出て来たものだ。私に会いたい理由でもあるのだろうか。まあ、深く考えても仕方がないが……仕方ない、時間の調整をするとしようか。王家の訪問を断るわけにはいかないからな。
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