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5話 王子殿下 その3
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「ふぇ、フェリク……? 大丈夫?」
「えっ? あ、ああ悪い……俺はなんだか変な顔をしていたかな?」
「い、いえ……そういうわけではないけれど……」
私が声を掛けた時、フェリクはいつもの顔に戻っていた。安心したけれど、さっきの鬼の形相は一体……。
「そうか、婚約破棄は聞いていたけれど、裏にはそんな事情があったんだね」
「ええと……そうなるわね」
エンビス・アトカーシャ侯爵のことをフェリクに伝えたけれど……大丈夫よね? ちょっとだけ不安になってしまう。彼の先ほどの表情が……。
「身体の要求が受け入れられなかったからと言って、身勝手に婚約破棄を。しかも、君の悪い噂まで流しているのか。なんという奴だ」
「王子殿下、如何なさいますか?」
「うん、そうだな」
フェリクの護衛として付き添っている人が言葉を出した。名前は確かアドベスさんだったかしら。昔、私とフェリクが気軽に会っていた時にも護衛役を務めていたはずだわ。そう考えると、長くフェリクに仕えている人なのよね。
「そちらの話は今は止しておこうか。それよりも……俺はライアとの久しぶりの再会を喜びたいからね」
「は、はい。畏まりました」
「うん」
「フェリク、ありがとう。私も同じ気持ちよ」
「ははは、そうだったか。じゃあ、積もる話でもしようか。そういえば、以前は君の屋敷の庭で遊んでいたよな」
「そうだったわね。あれは確か……」
私達はその後、積もる話で盛り上がった。フェリクがそれ以上、エンビス様のことを聞いて来なかったのには驚いたけれど……。
------------------------------------
(フェリク王子殿下視点)
「それじゃあ、俺は一度王宮に帰るとするよ。ライアも元気でな。今回は会えなかったけれど、リューザ殿にもよろしく言っておいてくれ」
「分かったわ、フェリク。あ、アドベスさんもさようなら」
「勿体ないお言葉でございます、ライア様。それでは……」
俺とアドベスはライアの屋敷から出て行った。ライアは色々と辛いことがあっただろうに、元気な様子を崩していなかった。芯の強い子だな。そのまま馬車に乗る。
「フェリク様」
「ああ、分かっている。とりあえずは……」
「如何いたしましょうか?」
「エンビス・アトカーシャのことを詳しく調べてくれ。ライアが言っていた言葉の裏も取る必要があるからな」
ライアのことは信用しているが、制裁を下す為には証拠が必要になってくる。俺はそれをアドベスに伝えた。
「わかりました、王子殿下」
「あとは……エンビスが行っている事業で王家が携わっているものがあるはずだ。それのピックアップも頼む」
「畏まりました」
エンビスめ……俺の大切な幼馴染であるライアに好き勝手言いやがって。絶対に許せない。確実に後悔させてやるからな……馬車がライアの屋敷から離れて行く中、俺はずっと歯を食いしばっていた。
「えっ? あ、ああ悪い……俺はなんだか変な顔をしていたかな?」
「い、いえ……そういうわけではないけれど……」
私が声を掛けた時、フェリクはいつもの顔に戻っていた。安心したけれど、さっきの鬼の形相は一体……。
「そうか、婚約破棄は聞いていたけれど、裏にはそんな事情があったんだね」
「ええと……そうなるわね」
エンビス・アトカーシャ侯爵のことをフェリクに伝えたけれど……大丈夫よね? ちょっとだけ不安になってしまう。彼の先ほどの表情が……。
「身体の要求が受け入れられなかったからと言って、身勝手に婚約破棄を。しかも、君の悪い噂まで流しているのか。なんという奴だ」
「王子殿下、如何なさいますか?」
「うん、そうだな」
フェリクの護衛として付き添っている人が言葉を出した。名前は確かアドベスさんだったかしら。昔、私とフェリクが気軽に会っていた時にも護衛役を務めていたはずだわ。そう考えると、長くフェリクに仕えている人なのよね。
「そちらの話は今は止しておこうか。それよりも……俺はライアとの久しぶりの再会を喜びたいからね」
「は、はい。畏まりました」
「うん」
「フェリク、ありがとう。私も同じ気持ちよ」
「ははは、そうだったか。じゃあ、積もる話でもしようか。そういえば、以前は君の屋敷の庭で遊んでいたよな」
「そうだったわね。あれは確か……」
私達はその後、積もる話で盛り上がった。フェリクがそれ以上、エンビス様のことを聞いて来なかったのには驚いたけれど……。
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(フェリク王子殿下視点)
「それじゃあ、俺は一度王宮に帰るとするよ。ライアも元気でな。今回は会えなかったけれど、リューザ殿にもよろしく言っておいてくれ」
「分かったわ、フェリク。あ、アドベスさんもさようなら」
「勿体ないお言葉でございます、ライア様。それでは……」
俺とアドベスはライアの屋敷から出て行った。ライアは色々と辛いことがあっただろうに、元気な様子を崩していなかった。芯の強い子だな。そのまま馬車に乗る。
「フェリク様」
「ああ、分かっている。とりあえずは……」
「如何いたしましょうか?」
「エンビス・アトカーシャのことを詳しく調べてくれ。ライアが言っていた言葉の裏も取る必要があるからな」
ライアのことは信用しているが、制裁を下す為には証拠が必要になってくる。俺はそれをアドベスに伝えた。
「わかりました、王子殿下」
「あとは……エンビスが行っている事業で王家が携わっているものがあるはずだ。それのピックアップも頼む」
「畏まりました」
エンビスめ……俺の大切な幼馴染であるライアに好き勝手言いやがって。絶対に許せない。確実に後悔させてやるからな……馬車がライアの屋敷から離れて行く中、俺はずっと歯を食いしばっていた。
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