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23話
しおりを挟む「何のことだ? お前は確かにミリーがシエナをいじめていたと言ったではないか!」
ボイド様はさっきまでよりも焦っているかもしれない。急に腹心のリュークが意見を変えたのだから当たり前だとは思うけれど……。リュークはリュークで先ほどからボイド様とシエナ様に頭を下げている。
「申し訳ありません、ボイド様。シエナ様。私は執事失格でございます」
「やめなさい、リューク! そんな言葉聞きたくないわ! 今すぐに黙って! お願いだから……!」
「そのご命令には従うことはできません。お許しください、シエナ様」
「リューク……!」
謝罪をしているリュークだけれど、言っていることは芯が通っていた。やっと本当のことを言う気になった態度なのだろう。まあ、全てを妄想で語られても必ずどこかで歪みが生じるしね。他の執事の一人でも違うことを言っていたら大変なわけだし……。
「やめて……やめてちょうだい……リューク……!」
シエナ様は椅子から立ち上がるとそのまま地面に崩れ落ちた。彼が裏切ることが余程のショックなのだと思うわ。そんなシエナ様を見ながらリュークは話し続けた。
「私は……シエナ様に命令されて、嘘の発言をしました。ミリー様にいじめられているように嘘を吐けと言われたわけです。その時の状況は彼女と二人で入念に話し合いました。痣が見えないように殴られたという設定も、その時に考え付いたのです」
「ば、馬鹿な……そんな、お前……!」
ボイド様も崩れ落ちるまでは行かなかったけれど、後ろに倒れそうになっていた。まあ、それもそのはず。信じ切っていたシエナ様が裏で操っていたのだから。これはそれを証明する貴重な発言になるだろう。
「私は何度も自分の良心と命令……この二つに悩みました。どちらを取ればいいのか、と。ですが、今日、ハッキリしたのです。私は良心を取ることにしました」
「そ、そんな……リューク、あなた……わかっているの! 自分がどうなるか、考えているの!?」
「はい、シエナ様。私はどのような罪に問われても受け入れるつもりです。シエナ様も共に罪を受け入れましょう」
「い、嫌よ……そんなの! 私は別に悪いことなんてしていない……! そこの女が悪いのよ! 私から愛しのお兄様を取ったりするから……! 私は悪くない、悪くないわ! 認めないわよ……!」
「シエナ……お前……」
ボイド様は悲しそうな顔をしていた。彼女が黒幕だったことを、ようやく信じ始めて来たのだろうか。シエナ様は予想通りというか、ヒステリー気味になっているけれど。しかし、犯した罪から逃れることはできないわ!
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