伯爵は意気揚々と婚約破棄をしたが、彼女の領内での努力を甘く見ていたようです

マルローネ

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11話 バルカンの訪問 その3

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 私とアルベド様、グレス兄さんの3人は交渉の話をしている二人に近づいた。最初に私達に気付いたのはリッチさんだ。バルカン様専属の執事だったはずだけど。

「あ、貴方様は……! バルカン様!」

「どうかしたのか、リッチ……? なっ、アルベド王子殿下……!?」

「久しぶりだな、バルカン殿。こんなところまで視察に訪れるとは、なかなか熱心じゃないか」

 アルベド様の姿を見たバルカン様は明らかに強張っていた。現場監督のジョージさんにおそらく要求について聞いていたところなのだろうけど。

「アルベド王子殿下……それに、後ろにいるのはアリサとグレス殿ですな。なぜ、3人がこのような場所に?」

「ある程度、想像はつくかと思うが、貴殿の領内で大規模なボイコットが起きていると聞いたので視察に来たのだ」

「なるほど……そういうことでしたか。わざわざ、アルベド王子殿下にお手数を掛けてしまいまして、申し訳ありませんでした」

「いや、ボイコットそのものに関しては仕方がないだろう。そちらの件に関しては謝罪は不要だ」

「さ、左様でございますか。作業員のボイコットに関しては必ず止めさせますのでご安心ください」

 バルカン様は自信満々に言っているけれど、アルベド様には信用されていないようだ。言い方がマズい気がしてしまうし。

「強制的に止めさせる……そのように聞こえるが?」

「いえ、現場監督から話を聞いていたのですが、彼らの要求があまりにも現実離れしていましたから……どうしようかと考えているところであります」

「現実離れって……私達は」

「お前は黙っていろ、ジョージ!」

「うっ……」

 ジョージさんに睨みを利かせて黙らせるバルカン様。どうやら、余裕がなくなっているようね。

「アリサ嬢。婚約破棄をされた相手としばらく一緒になるが、構わないかな?」

「アルベド様……はい、私は大丈夫です」

 一人だけだったら絶対に嫌だったけれど、アルベド様とグレス兄さんが傍にいてくれれば大丈夫だわ。私はいつの間にか二人から勇気をもらっているし。

「ありがとう、アリサ嬢。それでは、バルカン殿」

「はっ、なんでしょうか王子殿下」

「少し作業場の中で話をしないか? このまま立ち話もなんだしな。個室に入らないと周囲の作業員達も不安になるだろう」

「お話でございますか? それは……」

「なんだ? なにもやましいことがなければ問題はあるまい?」

「か、畏まりました……作業員に個室を用意させます」

「うむ、ありがとう」

 流石はアルベド第三王子殿下だった。バルカン様は否定的だったけれど、従わざるを得ないようね。まあ、あまり逆らった行動を取れば王家を敵に回すことになりかねないから仕方ないのだけれど。それに、バルカン様の領地であるマリンキー地方は王国全体を見てもかなりの領土だ。この中で行われている事業が中断しているという事実は、王家にとっても見過ごすことは出来ないはず。

 だからこそ解決させる為に、バルカン様とのお話を提案されたのだろうけれど。個室を用意するようにジョージ様に働きかけているバルカン様の後ろ姿は、どこか自信なさげだった。まあ、当然だろうけどね。
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