婚約破棄されたけど、私はあなたを信じます!

マルローネ

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6話

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「なんてこった……テレーズの話は信じていたが、こうして見るとますます信用せざるを得なくなるな……」

「そうですね、兄さん……私だって信じたくない……」

「テレーズ……」


 アルフとシンディの二人は遠目から見ても輝いていた。単にドレスや服装が豪華という以外にも……その人が放つオーラみたいなものがあるのかもしれない。冒険者の間なんかでは強い人は纏うオーラが違うと聞いたことがあるわね。

「なんだかオーラが違いますね」

「確かにな。周りの貴族は少しでも関係性を持とうと必死なようだ」

「確かに……必死ですね」


 他の貴族達を悪く言うわけではないけれど、みんなこぞってアルフ達のところに向かっていた。伯爵や子爵、男爵の立場からすれば天上の二人に見えなくもないしね。ドーム伯爵が真っ先に向かったのも体裁を保つためだろうし。

 でも……私とデュラン兄さんの二人は前に進むことが出来なかった。それどころか、自然と会場の隅へと追いやられて行く。アルフとシンディの前に行くことが出来ない……私達は邪魔なんだと、誰かから言われているかのようだ。

 どうして私達がこんな目に……こんな目にというか、何もされてはいないのだけれど、隅に行かなければならないのだろうか? 元々はアルフが婚約破棄したのが原因なんだし、あの二人こそ隅を歩くべきでは?


--------------------------


「あの二人……どうして、あんなに堂々と歩けるんだろう? おかしいですよね……絶対に」

「そうだな。テレーズの言う通りだ。本来ならば、立場が逆でなければおかしい」


 見たところアルフは婚約破棄をして、新しい女性、シンディを手に入れたということになるだろうか? 私は婚約破棄をされた身なのだから慰謝料の請求ができるはずなのに……それも出来ない。おかしいことだらけだった。こんなのは我慢できない……絶対に許すべきではない。

 それはアルフが本音で婚約破棄をしたんじゃない、という願望とは別の何か……感情的なものだった。


「兄さん、こんなのはどう考えてもおかしいです。私達も堂々としていましょう! ね? いいでしょう?」

「ははははは、それでこそテレーズというものだ。確かに私達が隅を歩く必要はないな。逆にあの二人を隅に歩かせるくらいの勢いで、表に出ようじゃないか」

「そうですよ、その意気です!」


 こんなおかしなことに付き合う必要なんてない。私達は堂々としていればいいんだから。あの二人に挨拶だって普通にしてやろう。私と兄さんは決心を込めて前に歩き出した……。
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