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12話

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 お父様との話も終わってから数日が経過した。私と兄さんはいつも通り、私室で話し合っている。


「なんだか振りだしに戻ったって感じかしら?」

「そうだな。まだ、始まったばかりだったが……しかし、シンディのことが分かったのは良かったじゃないか」

「ええ、そうね……そうとも言えるかしら」


 シンディのことがわかったのは良かった……そうなんだけれど、あんなに挑発的に攻めて来るとは思わなかったわ。まさか、私達の家にまで直接押しかけて来るなんて……。

 これでは何からすればいいのか分からなくなってしまった。


「まだ、アルフのことを信じているのか?」

「信じているわ、兄さん。いえ、今回の件があったから余計に信じる気になったというか。彼もシンディに操られているのよ。アルフだけじゃなく、デモン侯爵家そのものがね」

「ふむ……なるほど、そう考えれば合点がいくというものだな」


 それが分かったからと言って、リジェント伯爵家になにが出来るのか? となってしまう。せいぜい、前の婚約破棄はやっぱり不当だと訴えを起こすくらいかしら? それと同時にシンディの調査を秘密裏に行うくらい?


「婚約破棄が不当なのは当然なんだから、この訴えを起こすのは普通だと思うの。シンディだってそのくらいは考えていると思うけれど」

「ふむふむ、それで? 裏ではシンディの調査を行うのか?」

「そうね、なにか訴えの際の決め手を得られるかもしれないし。それともう一度、アルフに会うのもいいかもしれないわ」

「アルフに会うのか?」


 彼は操り人形になっているだけなら、もう一度会えば、真実を話してくれる可能性だってある。私は彼の良心に賭けてみたかった。


「まあいい。まずは1つずつ片付けていくとしようか。まずは婚約破棄が不当だとする訴え、シンディの身辺調査、そしてアルフに会うということだな」

「そうね。アルフに再び会うのは私がやるわ」

「婚約破棄の訴えは父上が、シンディの身辺調査は私が担当しよう。シンディという人物が特定された以上、的が絞れて良かったと言えるしな」


 本来の調査は誰がアルフの周りにいるのか、ということから開始しなければいけなかった。でも今回は的が絞れている。ただし、相手がかなりの大物だけれどね……。

「婚約破棄の件は父上に相談してみよう。お前は護衛を連れて、アルフと一人で会える場所を考えていてくれ」

「わかったわ、兄さん」


 どうすればアルフと一人だけで会えるのか……これは意外に難しかった。パーティーではシンディが邪魔になるだろうし。そうなれば……あの廃屋はどうだろうか? 元々は教会だった場所だけれど、貴族街の一画にそんな場所がある。デモン家に廃屋の周辺の修理を依頼する手紙を秘密裏に作成すれば……アルフなら気付いてくれるかもしれない。
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