お姉さまに婚約者を奪われたけど、私は辺境伯と結ばれた~無知なお姉さまは辺境伯の地位の高さを知らない~

マルローネ

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38話 修道院から戻り…… その1

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 あれから、数カ月以上の月日が流れた。本日は、マリア姉さまがクルシス家に戻って来る日となっている。模範生だった為、マリア姉さまは想像以上に早く修道院を出られることになった。

「月日が流れるのは早いものですね……」

「確かにそうだな。テレーズもそう思うのか?」

「はい。カイン様もですか?」

「ああ……最近は特にな」


 マリア姉さまの帰りを待っているのは、私とカイン様の二人だった。ちなみに、お父様とお母様に関しては姉さまを迎えに行く立場となっている。

「私達の正式な結婚も先延ばしにしていたが……これで、滞りなく進められそうだな」

「そうですね、カイン様。嬉しいです」

「そ、そんなにハッキリ言われると照れてしまうな……」

「あ、申し訳ありませんでした……!」


 お互いに顔を見合わせた状態で真っ赤になってしまい、すぐに明後日の方向を見た。周りを固めている使用人達にはクスクスと笑われている。はあ……ラゴウ様とマリア姉さまの一件があった為に、私とカイン様は婚約はしつつも、正式に結婚まではいかないという、なんとも中途半端な状況が続いてしまっていた。

 これはマリア姉さまの為でもあったんだけれど、国内にはまだまだ私達に対して好意的ではない貴族も居るわけで。そういう人達から見れば、マリア姉さまが修道院に行っている間に、その妹が結婚をして本当に幸せなのか? といった意味の分からない突っ込みが入る可能性があった。

 国王陛下や王妃様もカイン様を通して味方になってくれるので、一蹴されておしまいなのは分かり切っていたのだけれど……。でも、私は敢えて姉さまが帰ってくるまで待つことにした……なぜ彼女を待ったのかは分からないけれど、おそらくマリア姉さまにも祝福して欲しかったんだと思う。

「私は……マリア姉さまに裏切られましたけど、今ではカイン様との結婚を祝福してほしいと思っています」

「そうか……」

「おかしいでしょうか? 自分でも良く分からない感情ではあるんですけど」

「いや、全くおかしいことではないさ。姉妹というのは本来ならそういうものだ。それに……そういう感情が生まれた、というのであればテレーズが成長した証なのだろう。姉を許せる気持ちが生まれた、という意味でな」

 なるほど、成長……か。確かに私もこの数か月間遊んでいたわけではないけど、上手く実感が湧かなくても成長はするものなのね。むしろ、実感しないものの方が本当の成長と言えるのかもしれないわね。


 私は姉さまの帰りを待つ間、しみじみとカイン様の言葉を反復していた。成長、成長、と……。



-------------------


「テレーズ……ただいま」

「ね、姉さま……お帰りなさいませ……」

「あ、ああ……マリア嬢、私の方からもおかえりと言わせてもらいたい、その……うん」


 その後、マリア姉さまは帰って来た。お父様やお母様と並んで……。心のなしか、マリア姉さまの顔つきが変わっているように感じられる。凛々しいと言えばいいのかしら? 無駄な威圧感も消えているようだし。そう、それはとても良いことなんだけれど……。

 私もカイン様もまともにマリア姉さまの顔を見ることが出来なくなっていた。失念していたけれど、姉さまは修道院に入っていたのだ。つまり……丸坊主の状態で戻って来たのだから。

 絶対に笑ってはいけないと、太ももの当たりを強くつねってやり過ごすことにした私だけど、カイン様も同じようなことをしていたのには驚いた。相性はバッチリというわけね……。
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