婚約破棄とのことですが、あなたは既に詰んでいますよ？

4話

「私の屋敷の者と内通していた事実、それから、勝手に私の周りを調べていた事実を合わせて告発してやろう。犯人捜しも同時に行うとしようかな」

「コルデン様……」


　なんだかマズイ状態になっている気がする。コルデン様は伯爵という地位についており、国王陛下から土地も与えられている。そんな人が本気で動いたらどうなるか……お父様や姉さまが分からないはずないのに。先ほどから無用に挑発しているように見えるけれど。

「お父様その……大丈夫なのですか？」

「心配するな、ローズ。全て計算の内だよ」

「大丈夫よ、ローズ。心配することはないわ」

「そ、そうですか……？」

　お父様と姉さまは全く焦っている様子はなかった。コルデン様が告発などを本気でしたとしても大丈夫だと考えているようね。私はまだそのカラクリを理解していないので心配だった。


「まずは犯人捜しからだな。おい、お前。すぐに内部の調査をするんだ」

「私でございますか？」

「そうだ」

　コルデン様が指示した人物は最初にお父様と姉さまを連れて来た執事だった。

「内部の調査というのは、私共、執事やメイドに話を聞くということでよろしいでしょうか？」

「その通りだ。すぐに内通者を探し出すんだ」

「……あまり、意味がないかもしれませんが、よろしいのですか？」

「どういう意味だ？」

　その執事はコルデン様に歯向かっているようだった。もしかして、彼が内通者なのだろうか？　お父様や姉さまを連れて来たのも彼だし……。でも、その考えは安易すぎるかもしれないわね。


「いえ、コルデン様は犯人捜し……つまり内通者は誰なのか、と考えていらっしゃるようですが……その考えは間違いではないかと思われます」

「はあ？　意味が分からんぞ」


　コルデン様はまたイライラし始めた。自分の命令に従う様子がないからだろうか。


「分かるように言え！　伯爵である私に向かって失礼だとは思わないのか！」

「失礼致しました。コルデン様に分かるように話しますと、我々は全員、ローズ様達の味方ということになります」

「はっ？　全員だと……？　どういうことだ……？」

「極めて端的に話したと思うのですが」


　あまりの執事の言葉に呆然としてしまっているのはコルデン様だった。ええと……全員が私の味方ということは……ん？

「つまりはコルデン様。この屋敷内の執事とメイドは全員、コルデン様の敵ということになりますな」

「な、なんだと……！？　そんなことが……！」


　とんでもない返しがお父様から発せられた。私も開いた口が塞がらない思いだ。嘘でしょ……？