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10話 王子殿下 その1
しおりを挟む「初めましてかな? アリッサ嬢とハルナンナ嬢」
「あ、アルバート王子殿下……!?」
いきなりの王子殿下の訪問に私は上手く言葉を出すことができないでいた。どうして王子殿下がこんなところへ?
「アルバート・ヴェノム王子殿下……名前を覚えていただけるなんて、光栄でございます。私がハルナンナ・マクレガー。こちらがアリッサ・マクレガーです。以後、お見知りおきを……」
「ああ、よろしく」
ハルナンナ姉さんは私ほど焦ってはいないようだったけれど、王子殿下の突然の参入には驚いているようだった。言葉が詰まり気味だったし。
「へえ……第三王子殿下のお越しかいな。これはめずらしいな」
冒険者のカインツさんは私達ほど驚いている様子はなかった。特に敬語で話しているわけでもないし。
「あなたは?」
「俺はカインツ・ヨルデという者や。単なる冒険者やけど、冒険者の中では有名なんやで」
「カインツ殿……噂には聞いていますよ。街道の魔物討伐などを引き受けてくれているとか……あなたのおかげで治安も意地できているのでしょう。ありがとうございます」
「王子殿下に敬語で話されたら照れてしまうわ。普通に話してくれていいよ。同年代やろ?」
「私は21になりますが」
「俺は23歳やほとんど変わらんやん。アリッサ嬢達は少し下になるんかな?」
アルバート王子殿下は21歳か……カインツさんが23歳か、なるほど。
「私は20歳……妹のアリッサは17歳になります」
「ほう、けっこう近い年齢やん俺達。アリッサ嬢は17歳か……ふんふん」
カインツさんは何か納得している様子だった。私達4人は比較的年齢が近い集団ということになるかしらね。一回りは離れていないわけだし。
「カインツ殿、それでは普通に話させてもらう」
「ん、よろしくな。王子殿下はどういう理由でここに来たんや?」
「ああ、それは……アリッサ嬢が薬屋を経営していると聞いて、その真偽を確かめに来たんだが……どうやら事実だったようだ」
「え、ええ……事実ではありますが」
流石に私がアルバート王子殿下相手に普通に話すわけにはいかなかった。敬語で答える。
「貴殿は少し前までトトメスと婚約関係にあった。それは間違いないかな?」
「は、はい。間違いありません」
「ふむ……そうか」
「王子殿下……如何いたしましたでしょうか?」
「いやなに……最近になってトトメスから薬の大量生産体制の営業があってな。なにやらおかしいとおもったのだが……」
あ、やっぱり大量生産の話は王家に向かっていたのね。アルバート王子殿下はその関係で来たわけか。
「もしかすると……アリッサ嬢は調合技術を盗まれたのではないか?」
いきなり核心の話になってしまった。トトメスがわざわざ盗んだことを言うとは思えないし、もしかするとアルバート様はすごい洞察力の持ち主かもしれないわね。
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