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9話 凄腕冒険者 その2
しおりを挟む私は凄腕冒険者らしいカインツさんの要望で、大回復薬の調合をすることになった。姉さんの発案ではあるけれど、まさかそのまま作ることになるとは。カインツさんもかなりお調子者のようだわ。
「材料は……大丈夫ですね。作れます。大量には無理ですけど」
大回復薬のレシピを確認して作れることを把握した。調合自体の難易度は回復薬より難しい。とりあえず何個作ればいいんだろうか?
「個数の指定ってありますか?」
「とりあえず3つ貰えるか?」
「わかりました」
3つくらいならなんとかなりそうね。丁度、お客さんが少ない時間帯で良かったわ。材料を錬金窯に入れて混ぜて……その他諸々をこなしていく。大回復薬の完成だ。
「ええと……」
最後は検品をして終了というわけだ。この検品作業が大変なのであった。魔法の一種であるサーチを使うのだけれど、万が一にも粗悪品を出すわけにはいかないからね。
「なんや、ちゃんと検品作業もしてくれるんやな」
「当然じゃないですか。粗悪品が作れてしまうケースもあるので」
検品作業は意外と大変なのだけれど、この部分を端折ることはできない。1個1個丁寧に検品しないとね。
「巷ではこの検品作業が大変らしいけど、簡単に纏めたな。流石は天才の子ってところか」
「天才じゃないですよ私は。少し才能があるくらいです」
照れくさいから天才とかいう言葉は使わないで欲しかった。完成した3つの大回復薬はカインツさんに渡した。
「どうもどうも。これいくらなん?」
「あ、決めてなかったですね。どうしよう……」
大回復薬は売る予定はなかったので値段を決めてなかった。どうしようか……ええと。
「今回は初回サービスということで、3つまとめて5000ゴールドで如何でしょうか?」
「ほう、大回復薬が3つで5000ゴールドは安いな。回復薬よりもさらに希少やのに」
「今回だけですよ。価格については市場流通を鑑みて変更する可能性が高いので」
「まあ、それでも構わへんよ」
私が迷っている間にハルナンナ姉さんが話を纏めてくれた。5000ゴールドか……安いみたいだけれど、適正価格だとどのくらいなんだろうか?
「ここがパメラ屋か……」
と、その時だった。高級な馬車が店の前に止まったのは。中から現れたのは……。
「失礼、ここがパメラ屋というお店で間違いはないかな?」
カインツさんも振り返っている。お店の前に現れたのは紛れもなく王子殿下だった。アルバート・ヴェノム第三王子だ……え、なんでどうして?
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