G.F. -ゴールドフイッシュ-

筆鼬

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G.F. - 再始動編 -

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僕が自分の年齢を言ったとき…YOSHIKAさんは少し驚いた表情を見せた。


『20歳なの!そんな若いのに、こんな繊細で丁寧なメイクができるって…凄くない!?君!』


YOSHIKAさんだけじゃない。ヘアメイクのお姉さんも『えぇー!?』って驚いてた。
そこで僕は『そうなんです!僕って凄いんです!』なんて、言えるはずもなく…。


『あの…ありがとうございます…』


…軽く頭を下げてお礼を言っただけ。


『あ!じゃあ今、君は美容学校に通ってて、今日は撮影のアルバイトで』

『僕は美容学校とか通ってません。東京に来るために、大学を辞めてきたばかりです…』

『えっ?じゃあ…メイクは?どうやってできるようになったの!?』


なんか…変な質問が多いな…って思いつつ。


『初めは…地元の美容院の女性店長さんから教わりました。そのあとは…独学です』

『独学!?天才なの!?君』

『いや…でも、教えてくれた美容院の店長さんのメイク技術が凄かっただけです。僕なんか…』


大きく『えーっ!?』って言ったあと…YOSHIKAさんは落ち着いて、少し静かになって…。


『凄いね!君…感動ものだわ…』


YOSHIKAさんの『ごめんなさい。続けて』という言葉で、僕はまたメイクの続きを始めた。







『…完成したんですが…どうですか…?』


《ドレスに合うメイク》を想像して…いつもの《薄め系ナチュラルメイク》を少しアレンジして雄二さんの言っていたとおり、アイラインとアイシャドウ、それとリップカラーを少しだけ濃いめにしてみた。

…で、YOSHIKAさんの感想は…?


『やっぱり若い子がメイクしてくれたからかなぁ。いつもしてたメイクが、少しオバさんぽかったかも?って思えてくる…』


首を左右に振ったり、上下に振ったりして鏡で確認しているYOSHIKAさん。


『私は…いつもより、こっちのメイクの方が好き。可愛いって感じ…っていうかぁ』

『?』


今日は何度目か…YOSHIKAさんが、また僕を見た。


『この可愛い系メイクを、この…何だっけ?名前』

『あ…岩塚信吾です』

『この若い男の子の信吾くんがしてくれたんだよ!これって奇跡じゃない!?』


監督さんが『わははは』って笑ってる。
雄二さんも、なんだか少し自慢げ。


『では、次は私のお仕事です…はい』


ヘアメイクのお姉さんが、前髪を留めていたヘアクリップを外して、僕に返してくれた。


『私も思うよ。メイクの天才児だね!』

『いや、そんな…』







『YOSHIKAさんの準備ができました!』


他のスタッフの人が叫ぶように言った。


『部屋移動します。エレベーターで最上階です』


あ…この部屋は控え室として借りてたんだ。なるほど。
それで、本当の撮影現場…最上階へ移動…と。







…なに?この高級ホテルの最上階の部屋…広っ!

中世フランスの宮殿の部屋みたい…。
天井も、壁も、柱も…家具も、テーブルや椅子も、置いてあるグランドピアノも…。

真っ白と木調と、ちょっと金色と!
それでYOSHIKAさんの赤いドレスが凄く映える。

まるで女王アリの周りに集まる働きアリみたいに、YOSHIKAさんの周りをスタッフの人たちが囲む。
そして色んな指示の会話ややり取りが、あれこれと忙しく飛び交った。

モデルのYOSHIKAさんは、まるで綺麗なお人形さんみたいに、そっとそこにたたずんでいた。







椅子に座ってみたり…立ち上がって窓から外の風景を覗いてみたり…ちょっとドレスを気にするみたいなポーズをとったり…。

そんなYOSHIKAさんの姿を、雄二さんがカメラで連続して撮っていく。


『もう少しそっちに。ライティング頼む』

『はい!』


雄二さんもスタッフの人に指示を出す。


『そこで笑顔…よし。少しうつむいて…もう少しこっちだ…はい。いいよOK』


…僕は初めて。本物のモデルさんの撮影風景を見るのは。


『次は背中を撮ろうか。ゆっくり後ろへと振り向いて』

『待ってください。ドレスのそこのシワが気になります…直します!』


スタッフの女性がYOSHIKAさんと雄二さんのあいだを、体勢を低くしながら入ってササっとドレスを手直しし、また離れる…。

そんなこんなで、ドレス姿での撮影は終わった…。


























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