G.F. -ゴールドフイッシュ-

筆鼬

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G.F. - 再始動編 -

page.538

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『…はーぁ。やーっと着いたぁ♪』


小さく両手を挙げて、笑顔でそう言った詩織。
僕も美弥さんも詩織に続いて、一緒にちょこんと手を挙げて笑った。

長くて緩い坂を登り切って、詩織と僕と樋口は赤色の大きな鳥居の下にいた。
やっぱり僕は去年よりも、少し気楽に坂を歩き進むことができた。

詩織や美弥さんや樋口とのお喋りや、その会話を聞く余裕さえあったんだから。
だけどそれでも時々、ちょっとつまずくことを心配して、一歩出た足のつま先を気にすることもあったけど。
来年ももし、この石畳の登り坂を振り袖で登ることがあったとするなら…次こそはもう全然大丈夫だと思う。

詩織は去年に引き続き、振り袖での歩き方は一番余裕そうだった。姿勢も綺麗だったし。
樋口は僕ほどじゃないけど、上手に歩いてた。



それと詩織はこの坂を登りながら、気を遣ってやや積極的に、何度か樋口に話し掛けていた。
『大学は楽しい?』とか『気持ちいいねー♪』とか『大丈夫?疲れない?』とかって。

対して樋口は、別に笑顔を見せるでもなく、何だかへんてこりんな珍回答で詩織や僕を困惑させていた。
詩織はその度に、ふと一瞬真顔になってたけど、すぐ笑顔に戻ってずっと明るい笑顔を絶やさなかった。


『はーい。鈴ちゃんと鮎美ちゃんと春華さん。お疲れさまー♪』


詩織が赤い鳥居の下で2人を迎える。そして続いて…。


『アンナさんとナオさんもー。お疲れさまー♪』


そして、僕らアンナファミリーの後ろをゾロゾロと付いて来ていた瀬ヶ池の女の子たちも僕らを追い越して、鳥居をくぐり、参道から境内へと進んでいく。


『おぉ?よーし。全員着いたようだな!』


秋良さんがみんなを見てそう言った。
続いてアンナさんがみんなに次の行程をひと言、言い掛けたところに…。


『じゃあ、参拝の前に手水舎ちょうずやで手と口を…』

『アンナさん。ちょっと待って…!』


詩織が小さく右手を挙げた。
みんなが《…?》な表情で、詩織を見た。


『手水舎で口をすすいだら、帰るまでもう汚い言葉を言えなくなるから、その前に一言言わせて…』


詩織は挙げた右手を下ろし、軽く目を閉じた。


『この中に…裏切り者がいます…』

『はぁ?裏切り者??おいおい誰だよ!』


秋良さんがそう言ったところで、詩織は目をカッと見開いて、力強く指差した。


『そこの《おとぼけ3人ボーイズ!》あなた達のことでしょうが!』


腕を組んで他人事のようにみんなを見ていた秋良さん、そんな秋良さんをじっと見て指差して笑っていた大基さん、ちょっと悪びれた表情を見せていた啓介さん。
この3人を詩織は指差していた。


『秋良くん!大基くん!啓介くん!あなた達です!』

『はぁぁ?俺らが?なんで!?』





…あの石造りの大きな鳥居を通過して、坂を登りはじめて赤い鳥居まであと半分くらいまで来たところで…。


『ちょっとペース合わせてゆっくり歩くの飽きたから、俺ら先に行くわ』


秋良さんがそう言って…。


『あははは。お前ちょっと待てよ。秋良ー』


続いて大基さんが笑いながらそう言って…。


『振り袖3人娘たち。歩く後ろ姿が凄く可愛くて良い感じだったよ。気を付けてゆっくり登っておいでよ』


最後に啓介さんがそう言って…。
僕らの後ろを歩いて来てくれるはずだったイケメン3人は、僕らを追い越して先に行ってしまった。


『あ…でも啓介くんだけは、私たちに《歩く後ろ姿が可愛いよ♪》って言ってくれて、優しかったから今回だけはギリギリで許すことにします』

『はぁぁぁ!!?啓介!!お前!俺らを裏切りるつもりか!』


その一言を放った秋良さんを詩織が一喝した。


『裏切り者は秋良くんと大基くんでしょ!!反省なさい!』






『あぁ…まぁ、済まなかった。反省する。けどお前らはもう少し早く歩け』
『俺も秋良に以下同文でーす。反省しまーす』


…態度だけは正直だけど…というか、ぎこちない言葉だけど秋良さんも大基さんも少しは反省している様子…?
そしてアンナさんも春華さんも詩織も、それを見ていたみんなが可笑しくて大笑いしてた。

ただ、振り袖は《ちょこちょこ歩き》が基本なんだから《早く歩け》は、僕は無理な要望だと思うけどなぁ。























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