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G.F. - 再始動編 -
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『じゃ…じゃあ信吾がなんって書いたか、先に教えてよ!』
『…えっ』
詩織が僕の顔を見たから、僕も詩織を見て返した。
何だか、詩織は必死な表情してた…仕方ない。
『うん。いいよ。僕の願いは…《詩織が、芸能界で元気いっぱいで、毎日楽しく活動できるように》…って』
『えぇぇ…』
詩織のその表情に、逆に僕が『えぇ??』だよ。
なんで、そんなもっと困ったような顔をするの?…詩織。
『あらぁ、いい子ね。信吾くん』
『素敵…パートナー想いが感じられて私は好き』
アンナさんと歩美さんが、そう言って褒めてくれた。
そして秋良さんがニヤリと笑った。
『追い詰められたな…詩織。今度こそお前の番だ』
悲壮感さえ感じられる詩織の顔が、みんなを見回して息を呑んだ。
『わ、私は…アイドルがんばりたい…って、書い…』
『嘘はダメよ。詩織』
アンナさんが優しく、詩織にそう言った。
『詩織、お前…普段は自分の意思とは裏腹に、得意の演技で隠したりできるくせに、神様に願い事するときだけは何故か隠せないのな。わははは』
『えぇっ?な、なんで…!?』
詩織を見て笑う秋良さん。
その秋良さんを複雑な表情で見ている詩織。
『詩織ちゃん、言っちゃってたのよ。小さな声で』
『ちっ、小さな声で!?』
ナオさんも詩織を見て、そう言って優しく頷いた。
…そうなんだ。詩織はみんなが黙って祈願書に願い事を書いていたときに「えっと…あの…あっ、そう!…うんと…女ゆ…になり…っと。おっけ♪」って、小さな声で言ってたんだ。
それがファミリーのメンバー全員に《丸聞こえ》だった…。
『詩織…お母さんに《私がもし、女優になりたいって言ったら、変かなぁ…?》って訊いたこと、あったでしょ?』
アンナさんのその一言に、詩織は大きな目を見開いて、背をピンと伸ばして凍ったように固まって…けど頬っぺは温かそうに真っ赤になってた。
『お母さんは《うん。変かも》って、笑ってたみたいだけど…私は、素敵な願いだって思う』
『うん。私も鮎美ちゃんも、アンナさんも秋良くんたちも。みーんなが詩織ちゃんの願いよ叶え!って思ってるから』
アンナさんと春華さんがそう言うと、詩織はやっと凍結から解かれたように、ヘナヘナと崩れるように肩を落とした。
『何よりも私が一番に、《詩織にアイドルになってほしい》って思い続けていたことが原因だと思うんだけど…』
アンナさんが立ち上がってゆっくりと詩織の隣へと行き、詩織の頭を撫でてあげた。
『…だったら私もそれに責任を感じる』
『うぅん…アンナさんやめてよ。アンナさんはなにも悪くない。だから責任なんて…』
詩織はアンナさんと視線を合わせて、にこりと笑い合った。
『詩織…あなたは自分の思いのままに、なりたいように、やりたいように自由にすればいいの。そうしなさい』
『うん。けど…』
『お前が自由にすることで、芸能界から爪弾きにされるってんなら、すぐに藤浦に戻ってこい』
『…えっ』
秋良さんが詩織を指差した。詩織もそんな秋良さんを、驚いたような目で見た。
『そのときは俺が、俺らの店に《専属モデル&特別従業員》として雇ってやる』
『えっ…けど私…』
『毎年昇給、年2回のボーナス、有給も多めでもいいし、それと年1回の慰安旅行も約束する…こんな好条件付きだぞ?どうだ?』
『うん…ってか、違う。問題はそこじゃな…』
黙って互いをじーっと見合いはじめた詩織と秋良さん。
そんな2人が急に同時に、吹き出したように『わははは』『きゃははは』と大笑いしだした。
『私も詩織ちゃんとなら、一緒に働いてみたいな!』
『ねぇ、待って鮎美ちゃん。ちょっと挑戦だけさせて』
ようやく笑いが止まって、ふぅと落ちついた詩織が歩美さんを見た。
『うん。女優への挑戦よね…頑張って!』
『…うん』
『私も、心から応援してるから』
『ありがとう…鮎美ちゃん』
歩美さんも詩織の隣までくると…それがまるで自然に、詩織と歩美さんは抱擁し合った。
「私…まだ詩織ちゃんに、あのときの恩返しができてな…」
「きゃはは。私に恩返しなんていいから。だったら…祈願書に書いたあの願い事を早く叶えて…幸せになって」
『…えっ!?』
耳元でささやくように話していた詩織と歩美さん…だったけど、歩美さんが急に甲高い声をあげて、慌てて抱擁を解いて詩織を見た。
歩美さんに、にやりと笑って見せる詩織。
「み…見ちゃったの!?私の…」
「うぅん。見たんじゃないよ。見えちゃったの。ちらっと。私は…凄く素敵っていうか、2人凄ぉくお似合いだと思うんだけどなぁ」
『!!』
今度は、歩美さんが急に頬を赤らめて…?
『あぁ?な、なんだ?どうした…歩美ちゃん??』
秋良さんが詩織を見る。
歩美さんはお座敷の部屋の隅っこに座って、顔を隠すように僕らに背中を向けている。
『お前、歩美ちゃんになんか言ったのか?詩織』
『うぅん。なーんにもでーす。ただ《私も応援するよ♪》って』
『…はぁ?』
『…えっ』
詩織が僕の顔を見たから、僕も詩織を見て返した。
何だか、詩織は必死な表情してた…仕方ない。
『うん。いいよ。僕の願いは…《詩織が、芸能界で元気いっぱいで、毎日楽しく活動できるように》…って』
『えぇぇ…』
詩織のその表情に、逆に僕が『えぇ??』だよ。
なんで、そんなもっと困ったような顔をするの?…詩織。
『あらぁ、いい子ね。信吾くん』
『素敵…パートナー想いが感じられて私は好き』
アンナさんと歩美さんが、そう言って褒めてくれた。
そして秋良さんがニヤリと笑った。
『追い詰められたな…詩織。今度こそお前の番だ』
悲壮感さえ感じられる詩織の顔が、みんなを見回して息を呑んだ。
『わ、私は…アイドルがんばりたい…って、書い…』
『嘘はダメよ。詩織』
アンナさんが優しく、詩織にそう言った。
『詩織、お前…普段は自分の意思とは裏腹に、得意の演技で隠したりできるくせに、神様に願い事するときだけは何故か隠せないのな。わははは』
『えぇっ?な、なんで…!?』
詩織を見て笑う秋良さん。
その秋良さんを複雑な表情で見ている詩織。
『詩織ちゃん、言っちゃってたのよ。小さな声で』
『ちっ、小さな声で!?』
ナオさんも詩織を見て、そう言って優しく頷いた。
…そうなんだ。詩織はみんなが黙って祈願書に願い事を書いていたときに「えっと…あの…あっ、そう!…うんと…女ゆ…になり…っと。おっけ♪」って、小さな声で言ってたんだ。
それがファミリーのメンバー全員に《丸聞こえ》だった…。
『詩織…お母さんに《私がもし、女優になりたいって言ったら、変かなぁ…?》って訊いたこと、あったでしょ?』
アンナさんのその一言に、詩織は大きな目を見開いて、背をピンと伸ばして凍ったように固まって…けど頬っぺは温かそうに真っ赤になってた。
『お母さんは《うん。変かも》って、笑ってたみたいだけど…私は、素敵な願いだって思う』
『うん。私も鮎美ちゃんも、アンナさんも秋良くんたちも。みーんなが詩織ちゃんの願いよ叶え!って思ってるから』
アンナさんと春華さんがそう言うと、詩織はやっと凍結から解かれたように、ヘナヘナと崩れるように肩を落とした。
『何よりも私が一番に、《詩織にアイドルになってほしい》って思い続けていたことが原因だと思うんだけど…』
アンナさんが立ち上がってゆっくりと詩織の隣へと行き、詩織の頭を撫でてあげた。
『…だったら私もそれに責任を感じる』
『うぅん…アンナさんやめてよ。アンナさんはなにも悪くない。だから責任なんて…』
詩織はアンナさんと視線を合わせて、にこりと笑い合った。
『詩織…あなたは自分の思いのままに、なりたいように、やりたいように自由にすればいいの。そうしなさい』
『うん。けど…』
『お前が自由にすることで、芸能界から爪弾きにされるってんなら、すぐに藤浦に戻ってこい』
『…えっ』
秋良さんが詩織を指差した。詩織もそんな秋良さんを、驚いたような目で見た。
『そのときは俺が、俺らの店に《専属モデル&特別従業員》として雇ってやる』
『えっ…けど私…』
『毎年昇給、年2回のボーナス、有給も多めでもいいし、それと年1回の慰安旅行も約束する…こんな好条件付きだぞ?どうだ?』
『うん…ってか、違う。問題はそこじゃな…』
黙って互いをじーっと見合いはじめた詩織と秋良さん。
そんな2人が急に同時に、吹き出したように『わははは』『きゃははは』と大笑いしだした。
『私も詩織ちゃんとなら、一緒に働いてみたいな!』
『ねぇ、待って鮎美ちゃん。ちょっと挑戦だけさせて』
ようやく笑いが止まって、ふぅと落ちついた詩織が歩美さんを見た。
『うん。女優への挑戦よね…頑張って!』
『…うん』
『私も、心から応援してるから』
『ありがとう…鮎美ちゃん』
歩美さんも詩織の隣までくると…それがまるで自然に、詩織と歩美さんは抱擁し合った。
「私…まだ詩織ちゃんに、あのときの恩返しができてな…」
「きゃはは。私に恩返しなんていいから。だったら…祈願書に書いたあの願い事を早く叶えて…幸せになって」
『…えっ!?』
耳元でささやくように話していた詩織と歩美さん…だったけど、歩美さんが急に甲高い声をあげて、慌てて抱擁を解いて詩織を見た。
歩美さんに、にやりと笑って見せる詩織。
「み…見ちゃったの!?私の…」
「うぅん。見たんじゃないよ。見えちゃったの。ちらっと。私は…凄く素敵っていうか、2人凄ぉくお似合いだと思うんだけどなぁ」
『!!』
今度は、歩美さんが急に頬を赤らめて…?
『あぁ?な、なんだ?どうした…歩美ちゃん??』
秋良さんが詩織を見る。
歩美さんはお座敷の部屋の隅っこに座って、顔を隠すように僕らに背中を向けている。
『お前、歩美ちゃんになんか言ったのか?詩織』
『うぅん。なーんにもでーす。ただ《私も応援するよ♪》って』
『…はぁ?』
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