108 / 213
G.F. - 夢追娘編 -
page.583
しおりを挟む
僕は…スマホを静かにそっと机の上に置き…俯いた…。
『あいつ…何であんなに頑固なんだよ…!』
『…。』
『女優も子役も経験無ぇくせに…どっから来んだよ!あの自分の演技への自信とか…あぁァ!?』
『…。』
ヤバいヤバいヤバい…。
公貴くんは、座ったままズボンの左ポケットに左手を突っ込み、右腕は机の上に置いて…怒鳴り散らかしている。
『歳はアレかもしれねぇけどなぁ!…先輩だぞ!俺のほうが!役者ではなぁ!!』
『…。』
『歳の1つ差が何だってんだよ!!あぁ?なんも変わんねぇっつーんだよ!!』
『…。』
どっ、どうしよう…えぇと…あ、そうだ。
何か考え耽ってやり過ごそう…でも…。
そうだ…明日の免許の本試験のことでも考えよう…そうそう…あの…試験の過去問とか…その…。
《ヴーン…ヴーン…》
…!
またLINEの受信だ…送信相手は解ってる。
詩織からだよ?…絶対…。
僕は恐る恐る、少し顔を上げ…机の上のスマホを手に取り、ゆっくりと画面を見た…。
【{どうしたの金魚?返事来ないよ?)】
どうしよう…返さないと…。
詩織へのLINEの返信…。
けど…操作するのも…指をピクリと動かすことも…怖っ!
やっぱ無理無理無理!!
ごめん詩織!…返事返せない…この状況では…。
僕は、スマホを握った左手を小さく震わせながら…やっぱりそのまま机の上に置いた…。
そしてそのまま…またゆっくり下を向く…。
『クソっ!信吾はどこ行ったんだよ!こんなときによ!!』
…ひぃぃぃ…怖。
『信吾が居て見てれば詩織、まだいつも大人しく《演トレ》してたのによ…クソが…』
…た、助けて…この状況を…誰か…。
《ヴーン…ヴーン…》
また…詩織からのLINEだ…。
勇気を出して…またスマホを見る…。
【{行ったほうがいい?私そっち?)】
いやいやいやいや!!
だっ駄目駄目駄目駄目駄目!!
詩織!今来るとダメ!!絶対!!
「クソっ…クソが…」
…あ、あれ?
急に公貴くんが大人しく…なった…?
恐る恐る…僕はチラリと公貴くんを見た…。
公貴くんもポケットからiPhoneを出し、触り始めていた…。
とりあえず…良かった…。
このまま助かるかも…。
それにしても…うん。
もう一度スマホを見る。
詩織…本当に心配してくれてそう…ごめん。
何か書いて返さないと…じゃあ、なんて書こう。
書き方によって、詩織がここに来ることがないよう気をつけないとな…えぇと。
本当になんて書いて返そうかな…うーん。
少し安心し始めて、何気にまた公貴くんのほうをチラリと見ると…!!!
ひぃぃぃぃ!!!
こっち見てるー!!
『なぁ…おい。お前』
えぇーっ!?
しかも金魚に話しかけてきたぁぁー!!
『おい…なぁ』
ど…ど、どうしよう…!!
『おい…聞こえてんのか?って。つぅかお前!返事くらいしろ!!』
『はっ、はいっ!』
こんなに緊張してるのに、急でも女の子声に変えられる僕って…凄くない?
凄くないよ?こんなの普通だよ。普通普通。
…なんて、こんなふざけたことを考えてる余裕、無かったんだった…反省。
『ご…めんなさい…』
僕は慌ててスマホをまたまた机の上に置いて…震える手を下ろして…閉じた両腿の上に置いた両拳をぎゅっと握って…恐々と、公貴くんを見た…。
『お前…確か、俺と会ったこと…あるよな…?』
『あの…えっ…その…あの…』
そう…確かに。
少しだけ公貴くんと話したことがある…実は。
いつだったかな…?
11月の終わり頃?それとも、もう12月だったっけ?
日曜日が引っ越しで、その次の日…月曜日だったことだけは覚えてる。
『11月27日の月曜日、時間は朝9時頃。そこの事務室の前で…だろ?』
あ…ふーん。なるほどね。
公貴くん、日時と状況まで覚えてました…凄いね。めっちゃ怖いぃ…。
『俺、お前に《噂の新人ってのはお前か?》って、訊いたよな?違うか?』
そこまで正確に言い当てられると…もう素直になるしかなかった…。
『あの…はい。私…でしたね…』
僕は、あまりのヤバい状況に少し混乱したのか…公貴くんに可愛い笑顔で返事してしまい…。
その現実にショックして…僕はまた落ち込むように俯いて、視線を机上に落とした…あぁ。
『そうか。やっぱな…ってか、信吾どこ行ったんだ?あいつマジで!』
…。
残念ながら《僕の女装姿(金魚)と公貴くんは、実は会ったことがある!》ことはバレてしまった!…けど。
守らなければならない秘密はもう1つ。
《今目の前にいる娘こそ、実は君が探している信吾だ!》ってことだけは…絶対バレないように…。
これだけは守り切らないと…!
いや…絶対にこの秘密…守り通す…!!
そう決心し、心に誓って公貴くんを…そーっと見ると…。
公貴くんは…大人しく静かになって、また自分のiPhoneを触っていた。
ふぅ…助かった…か。
《ヴーン…ヴーン…》
《ヴーン…ヴーン…》
今度は2回きた。
ごめんごめん…。
LINEの返事、何かしてあげなきゃ。
えぇと?…今度は詩織、2連続って…何って書いて送ってき…?
……は?
【{お前…信吾だろ!だよなぁ?お得意の女装した)】
【{もうバレてんだよ。大人しく観念して自白しろ!)】
えっ、はぁっ!?
嘘っ!?バレ…た…!?
…えぇぇ!?
ヤバい…本気でヤバい!!!
心臓の音が…両方の鼓膜に届くぐらい…バクバクドキドキしてきた…。
目が…視線が…スマホに釘付けに…。
金縛りのように…動けない…。
かっ体が…重い…。
汗?…画面に一粒…ぽたり。
僕は…全身を小刻みに震わせながら…ゆっくり…ゆっくり…と…。
…公貴くん…のほうを…見…た…。
『あーぁ。信吾、ほんと何処行ったんだろうなーぁ…なぁ…』
…!!
冷めたようなジト目で…僕をじーっと見てる…公貴くん…!
『もうバレてんのに、まーだ黙ってやり過ごそうってしてんのかなーぁ。あいつは…』
うわぁ…も、もう無理…。
観念するしかなかった…。
僕はまた何度目か下を向き…震える小声で…。
「あの…なんで…判っちゃっ」
『お前の左耳を見れば判んだよ!』
『!!』
『わーっはっはっはっはー!』
公貴くんは、自分のiPhoneをポケットへ戻しながら、高らかと大笑いしだした…。
『お前、忘れてないよな?』
…えっ?
忘れてない…よな??
『YOSHIKAが俺の姉貴だってことをな!』
…あっ。
『わーっはっはっはっはー!』
『…。』
僕の《秘密が絶対バレないよう守り通す!》の決心は…ものの5分で打ち破られた…あぁ。
そのあと…公貴くんは話してくれたんだ。
YOSHIKAさんから聞いたんだって。
『信吾くんが女の子になるとき必ず、左耳に金魚のぶら下がったピアスをしてんの』ってことと…『信吾くんの女の子姿の名前は《池川金魚》ちゃんって言うの。絶対に《信吾くん》なんて呼んじゃダメ!』ってことを…。
それと、どちらから話が出たのか…僕のLINEのIDも。
『…ってことで。なぁ金魚』
「…は…はぃ…」
公貴くんはウンウンと頷きながら、ニヤリと笑った。
『お前にひとつ《聞いてほしい話》と、あと《頼みたいこと》があるんだ』
『…聞いてほしい話と、頼みたいこと?』
『あぁ。聞いてくれないか?』
…って、どんなこと…?
『あいつ…何であんなに頑固なんだよ…!』
『…。』
『女優も子役も経験無ぇくせに…どっから来んだよ!あの自分の演技への自信とか…あぁァ!?』
『…。』
ヤバいヤバいヤバい…。
公貴くんは、座ったままズボンの左ポケットに左手を突っ込み、右腕は机の上に置いて…怒鳴り散らかしている。
『歳はアレかもしれねぇけどなぁ!…先輩だぞ!俺のほうが!役者ではなぁ!!』
『…。』
『歳の1つ差が何だってんだよ!!あぁ?なんも変わんねぇっつーんだよ!!』
『…。』
どっ、どうしよう…えぇと…あ、そうだ。
何か考え耽ってやり過ごそう…でも…。
そうだ…明日の免許の本試験のことでも考えよう…そうそう…あの…試験の過去問とか…その…。
《ヴーン…ヴーン…》
…!
またLINEの受信だ…送信相手は解ってる。
詩織からだよ?…絶対…。
僕は恐る恐る、少し顔を上げ…机の上のスマホを手に取り、ゆっくりと画面を見た…。
【{どうしたの金魚?返事来ないよ?)】
どうしよう…返さないと…。
詩織へのLINEの返信…。
けど…操作するのも…指をピクリと動かすことも…怖っ!
やっぱ無理無理無理!!
ごめん詩織!…返事返せない…この状況では…。
僕は、スマホを握った左手を小さく震わせながら…やっぱりそのまま机の上に置いた…。
そしてそのまま…またゆっくり下を向く…。
『クソっ!信吾はどこ行ったんだよ!こんなときによ!!』
…ひぃぃぃ…怖。
『信吾が居て見てれば詩織、まだいつも大人しく《演トレ》してたのによ…クソが…』
…た、助けて…この状況を…誰か…。
《ヴーン…ヴーン…》
また…詩織からのLINEだ…。
勇気を出して…またスマホを見る…。
【{行ったほうがいい?私そっち?)】
いやいやいやいや!!
だっ駄目駄目駄目駄目駄目!!
詩織!今来るとダメ!!絶対!!
「クソっ…クソが…」
…あ、あれ?
急に公貴くんが大人しく…なった…?
恐る恐る…僕はチラリと公貴くんを見た…。
公貴くんもポケットからiPhoneを出し、触り始めていた…。
とりあえず…良かった…。
このまま助かるかも…。
それにしても…うん。
もう一度スマホを見る。
詩織…本当に心配してくれてそう…ごめん。
何か書いて返さないと…じゃあ、なんて書こう。
書き方によって、詩織がここに来ることがないよう気をつけないとな…えぇと。
本当になんて書いて返そうかな…うーん。
少し安心し始めて、何気にまた公貴くんのほうをチラリと見ると…!!!
ひぃぃぃぃ!!!
こっち見てるー!!
『なぁ…おい。お前』
えぇーっ!?
しかも金魚に話しかけてきたぁぁー!!
『おい…なぁ』
ど…ど、どうしよう…!!
『おい…聞こえてんのか?って。つぅかお前!返事くらいしろ!!』
『はっ、はいっ!』
こんなに緊張してるのに、急でも女の子声に変えられる僕って…凄くない?
凄くないよ?こんなの普通だよ。普通普通。
…なんて、こんなふざけたことを考えてる余裕、無かったんだった…反省。
『ご…めんなさい…』
僕は慌ててスマホをまたまた机の上に置いて…震える手を下ろして…閉じた両腿の上に置いた両拳をぎゅっと握って…恐々と、公貴くんを見た…。
『お前…確か、俺と会ったこと…あるよな…?』
『あの…えっ…その…あの…』
そう…確かに。
少しだけ公貴くんと話したことがある…実は。
いつだったかな…?
11月の終わり頃?それとも、もう12月だったっけ?
日曜日が引っ越しで、その次の日…月曜日だったことだけは覚えてる。
『11月27日の月曜日、時間は朝9時頃。そこの事務室の前で…だろ?』
あ…ふーん。なるほどね。
公貴くん、日時と状況まで覚えてました…凄いね。めっちゃ怖いぃ…。
『俺、お前に《噂の新人ってのはお前か?》って、訊いたよな?違うか?』
そこまで正確に言い当てられると…もう素直になるしかなかった…。
『あの…はい。私…でしたね…』
僕は、あまりのヤバい状況に少し混乱したのか…公貴くんに可愛い笑顔で返事してしまい…。
その現実にショックして…僕はまた落ち込むように俯いて、視線を机上に落とした…あぁ。
『そうか。やっぱな…ってか、信吾どこ行ったんだ?あいつマジで!』
…。
残念ながら《僕の女装姿(金魚)と公貴くんは、実は会ったことがある!》ことはバレてしまった!…けど。
守らなければならない秘密はもう1つ。
《今目の前にいる娘こそ、実は君が探している信吾だ!》ってことだけは…絶対バレないように…。
これだけは守り切らないと…!
いや…絶対にこの秘密…守り通す…!!
そう決心し、心に誓って公貴くんを…そーっと見ると…。
公貴くんは…大人しく静かになって、また自分のiPhoneを触っていた。
ふぅ…助かった…か。
《ヴーン…ヴーン…》
《ヴーン…ヴーン…》
今度は2回きた。
ごめんごめん…。
LINEの返事、何かしてあげなきゃ。
えぇと?…今度は詩織、2連続って…何って書いて送ってき…?
……は?
【{お前…信吾だろ!だよなぁ?お得意の女装した)】
【{もうバレてんだよ。大人しく観念して自白しろ!)】
えっ、はぁっ!?
嘘っ!?バレ…た…!?
…えぇぇ!?
ヤバい…本気でヤバい!!!
心臓の音が…両方の鼓膜に届くぐらい…バクバクドキドキしてきた…。
目が…視線が…スマホに釘付けに…。
金縛りのように…動けない…。
かっ体が…重い…。
汗?…画面に一粒…ぽたり。
僕は…全身を小刻みに震わせながら…ゆっくり…ゆっくり…と…。
…公貴くん…のほうを…見…た…。
『あーぁ。信吾、ほんと何処行ったんだろうなーぁ…なぁ…』
…!!
冷めたようなジト目で…僕をじーっと見てる…公貴くん…!
『もうバレてんのに、まーだ黙ってやり過ごそうってしてんのかなーぁ。あいつは…』
うわぁ…も、もう無理…。
観念するしかなかった…。
僕はまた何度目か下を向き…震える小声で…。
「あの…なんで…判っちゃっ」
『お前の左耳を見れば判んだよ!』
『!!』
『わーっはっはっはっはー!』
公貴くんは、自分のiPhoneをポケットへ戻しながら、高らかと大笑いしだした…。
『お前、忘れてないよな?』
…えっ?
忘れてない…よな??
『YOSHIKAが俺の姉貴だってことをな!』
…あっ。
『わーっはっはっはっはー!』
『…。』
僕の《秘密が絶対バレないよう守り通す!》の決心は…ものの5分で打ち破られた…あぁ。
そのあと…公貴くんは話してくれたんだ。
YOSHIKAさんから聞いたんだって。
『信吾くんが女の子になるとき必ず、左耳に金魚のぶら下がったピアスをしてんの』ってことと…『信吾くんの女の子姿の名前は《池川金魚》ちゃんって言うの。絶対に《信吾くん》なんて呼んじゃダメ!』ってことを…。
それと、どちらから話が出たのか…僕のLINEのIDも。
『…ってことで。なぁ金魚』
「…は…はぃ…」
公貴くんはウンウンと頷きながら、ニヤリと笑った。
『お前にひとつ《聞いてほしい話》と、あと《頼みたいこと》があるんだ』
『…聞いてほしい話と、頼みたいこと?』
『あぁ。聞いてくれないか?』
…って、どんなこと…?
1
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる