G.F. -ゴールドフイッシュ-

筆鼬

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G.F. - 吉転魚編 -

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同じ事務所所属の仲間同士なのに…。
片山桃香さんは、荒井さんや藤川さんから強い非難を受けている…。



《可愛さでは勝てないと解ったからって、所属事務所の名前を出して優位を取る…》

こんな卑劣な遣り方は、僕も詩織も…他の《ピプレ》のメンバーのんなだって大嫌い。

そんな大嫌いな方法で、彼女らは勝ち誇ろうとしている…。


『…で?誰がこの勝負を、私たちと引き分けドローにしない?…って?』

『私たちとドロー…はぁ?ムカつく冗談って、本っ当…笑えないし面白くないんだよね…』


荒井さんと藤川さんが、詩織を…そして金魚と…《ピプレ》のリーダーの海音を…キツい視線で、圧を掛けるかのように睨みつける…。


『あなた達みたいな二流以下のアイドルグループはね…私たち、トップアイドルグループに忖度して…勝てませーん負けましたーって、私たちにびて気持ちよく勝たせとくもんなのよ…だと思わない?なのに…』

『うちらと正々堂々と勝負して?勝とうとか…マジで?頭沸いてんの?この芸能界で長くアイドルやってたいんなら…うちら《Kira♠︎m》のグループに逆らわず、平伏ひれふしてあがめてればいいんだよ』


お互いを見合い…勝ち誇ったように、にやりと笑ってみせる藤川さんと荒井さん…。



僕から、こんなこと言いたくないけど…口に出しては絶対に言えないけど…。


この2人!!
本当に見ててムカつく!!


何その言い草!!その態度!!
腹立つ!!!





『んじゃ、戻ろう舞莉。この勝負は勝利ってことで』

『うん。行こっ』


心地良さそうな笑顔で、この控え室を出て行こうとした荒井美里さん…。

そんなタイミングに、またここに飛び込んできたあの子…!?


『しっ、失礼します!再び登場で大変申し訳ありませんが!引き続き調べてたら、大変な情報が見つかったのでー!』

『ひかりちゃん…待ちなさい』


藤川さんがにこにこ笑顔で、あの子を制止しようとしている。


『岡本詩織さんはド素人ではありません!地元では有名モデルをやってたみたいです!それと…!』

『ねぇ、待ってって。聞こえてる?ひかりちゃ…』

『そこの金魚さんという、めちゃくちゃ可愛い子ですが!実は女の子じゃない?かもしれません!それとそれと…!!』


もの凄い早口で話す、調査報告の暴走が止まらない、ひかりちゃんとい…。

…!!
ばっ、バレる…!!

金魚が女装だってことが…!!!


『ちょっ…何?金ぎょ…ちゃんと見なさい!あんな可愛い子が女の子じゃない訳ないでしょ!宇宙人だとかお化けとかって言うの!?ちょっと落ち着きなさいってば!ひかり!!』

『あの五十峯雫っていう可愛い子の叔父様は!美波県藤浦市の現市ちょ…!!?』


ひかりちゃんというその子は、左の頬を雫ちゃんにバチン!と思いっきりたれ…ようやくその暴走的報告は止まった。

良かった…バレなかった…。


『なっ…ぇ?』

『そろそろ落ち着きなさい!もうそれ以上言わないで!!』

『ぇ…ぁ…』


雫ちゃんは、振り切った右掌をそっと下ろすと…荒井さんを軽く睨んだ。


『行きたければ、行けば?』


荒井さんも、黙って雫ちゃんを睨み返す。


『もうこんなの…勝負なんかじゃない…』


雫ちゃんのその一言を聞いて、藤川さんもにこっと笑った。


『ふぅん…そうね。解ればよろしい♪』


藤川さんは、ひかりちゃん…片山さん…石田さん…そして、西尾美優貴さんを順に見た。


『あなた達《T.S.S.D》のメンバーの行動や態度については、事務所に報告しておきます。それと…私たちも、あなた達グループ全員との関わり方を、見直させてもらうから…!』


そして控え室を出てゆく藤川さんと荒井さん。

廊下に立つ野次馬アイドル達は静かに黙ったまま…ただ二人のバタバタと出急ぐ足音が、廊下に響いていただけ…。

その二人の後を戸惑いながら慌てて追う、伊方つぐみさん…。




彼女らの後ろ姿が完全に見えなくなると、ようやく廊下の野次馬アイドルや関係者たちが騒ぎだした。


「なにあの2人…」
「あの傲慢な態度…《Kira♠︎m》のアイドルって、皆んなあんななの!?」

「可愛さ勝負だったんでしょ?それで勝てないからって…」
「ねー。サイテーだよね!あんな遣り方!」


『…。』





すっかり黙ってしまった僕らに、片山桃香さんがそっと声を掛けてくれた。


『本当に…ごめんなさい!舞莉ちゃんと美里ちゃんが、あのような…』


ふと振り向いた詩織。

詩織は片山さんと視線を交えた。


『あなたは、ちゃんと道徳的なのね。同じ《Kira♠︎m》所属なのに。彼女らと違って』


片山さんは、困惑するような…また少し驚くような複雑な表情を、詩織に見せた。


『片山桃香さん。あなたが謝ることじゃないし。だって、あなたは全然悪くないんだから』

『けど…本当は、ここに居る皆んなが判ってた。金魚ちゃんはとても可愛いし、本当はどっちが勝ってたか…』

『きゃははははー』

『??』


片山さんが語っているなか、急に笑い出した詩織。


『あの2人が《勝った!》って言おうが《負けた!》って言おうが、私にとってはどっちでもいいの』

『えっ…なんで?』


詩織は『それは、この勝負を観てた第三者が決めることー』『あの二人も今頃、自分たちの控え室に戻って悔しがってることでしょうね♪』そう言って、またいつものようにケラケラと笑ってた。


『じゃあ…私たちのステージ出演も終わったんだし、私たちも帰らない?』


そう言った詩織に、僕は『待って!』と頼んだ。

本物の金魚を目の前に、感涙してくれた石田美希さん…。
『ごめんなさい…』そう言って、泣き出した西尾美優貴さん…。
雫ちゃんに左頬を打たれ、我に返ったひかりちゃん…。

彼女らのステージの出番が来る前に、綺麗にメイクを直してあげたい…僕がそう思ったから。


『うん…そうね。金魚らしい♪』






…結局、僕らはイベントの最終まで残っていた。
石田さん達3人から『ありがとうございます!』『さっきまでのメイクより可愛い…!』『凄い!可愛い!嬉しいー!』そう感想までもらって…僕も満足。

僕と詩織と雫ちゃんは池田さんの車で。
夕紀さんは一人で。

他の《ピプレ》のメンバーは、グループマネージャーの槙野さんの車で…。
其々それぞれが其々に帰路についた…。



今日はみんな、本当にお疲れさま。
ステージパフォーマンスは気合いが入って最高だったけど…《可愛い子勝負》の結果については…。

けど、詩織も他のみんなも満足そうだった。

詩織なんかイベントが済んだからって、もう頭の中は…。





『ねぇ、金魚』

『うん…?』


池田さんの車の中、後部座席に並んで座る3人…僕と詩織と雫ちゃん。


『もうすぐ藤浦市に帰れるね♪』

『うん。一時的にだけど』

『明日、一緒にお土産買いに行こうね』

『うん』


今日は2月11日の日曜日。
今度の金曜日…16日から3日間、僕と詩織は藤浦市に帰ることになっている。



一つ目は《春華さんに、ご懐妊おめでとうございます!を言いに行く》ため。

二つ目は《秋良さん達の新店舗の開店日に、遊びに行く》ため。

三つ目は《今入院している、菊江さんのお見舞いに行く》ため。


そして他にも…思いもしなかったイベント発生?のため…。


















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