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G.F. - 大逆転編 -
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石田さんと西森さんの姿が完全に見えなくなったあとに…僕は急にハッ!とした。
今度、連絡って…。
忘れた…それを聞くの!
僕、西森さんとの連絡先…何も知らないや。
連絡の取りようがない…。
まぁいっか…では諦め切れない。
深い後悔とショック…。
『ねぇ、信吾くん』
『…あ、はい』
僕を呼んだYOSHIKAさんを見た。
『もう、彼女には会わないほうがいいんじゃない?』
えっ!?何故なんですか…?
『あの子は仮にも《Kira♠︎m》で働いてるんでしょ』
…はい。
『信吾くんと彼女が幼馴染みだとか、仲良しなのかもしれないけど…だからこそ、気をつけてほしいの』
YOSHIKAさんは、僕に『彼女と信吾くんが親しい関係なんだってことにつけ込んで、信吾くんに近づかせようと《Kira♠m》が送り込んた"回し者"かもしれないから』って…。
回し者…つまりスパイ?
またスパイ疑惑とか…。
でも西森さんは、そんなんじゃないと思う。
だって…さっき僕と話せて、喜んで満面の笑みを僕に見せてくれたあれだって、演技だったなんて思えない。
けれど僕はYOSHIKAさんに『…だからもう、絶対に会っちゃダメ!』『これは信吾くんの為なんだからね!』って、また強く言われた…。
そうだよ。
YOSHIKAさんは、僕のためを思ってそう言ってくれたんだ。
だからYOSHIKAさんは絶対に悪くない!
それは分かってる。
分かってはいるんだけど…。
僕の本心は…"もう一度西森さんと会って、もっと色々なことを、落ち着いてゆっくりと話したい"。
今までの事とか、これからの事とか…。
なので…ごめんなさい。
やっぱり西森さんは僕にとって、今も大切な友達なんです…。
『じゃあ、みんな行こう。スタジオに戻ろう』
そう言ったYOSHIKAさんを先頭に、僕らはまた通路を戻り歩き出した。
そういえば…詩織は!?
まだ気落ちしてたりしない!?
僕は急に心配になって、慌てて振り返って詩織を見た。
『…でさ、仲間と夜の街を走る時は、私は"真っ赤な特攻服"を着て"半ヘル"被って…それと愛車は紫ピンクのスクーター。でも赤信号はちゃんと守ってるよ』
『そうなんだ。でも理解するの難しいな…』
…四方山さんと詩織は、なんだか不良っぽい話をしてた。
ってか、愛車は普通のバイクじゃなくて、改造スクーターなんだ…意外。
『信吾さん!』
はいっ!
僕は急に呼ばれて、慌てて振り返っ…あー。呼んだのは雫ちゃんだった。
『今は《信吾さん》じゃなくて《金魚ちゃん》なんですよ。忘れないでくださいね!』
『そうだね…ごめん』
この姿で、信吾を出しすぎてた…確かに。気をつけないと。
『…てゆうか夕紀さん。急がなくていいんです?スタジオに…』
『大丈夫です』
マネージャーの夕紀さんは、全く慌てる様子もなく、微笑んでそうハッキリと答えてくれた。
『スタジオのスタッフさん達には、今何が起きているのかを軽く説明してあります。何事もなく無事に帰ってきてくれたら、それでいいって』
そうなんだ。
ありがとう夕紀さん。
とはいえ、やっぱり急いだほうが良くない…?
『…てかさ、さっきから居るこの可愛い子…って誰?』
………えっ。
一瞬、空気がキーンと凍りついたかのように、ここにいる全員が黙り込んだ…。
金魚を指差す四方山さん…?
えっ?知らずに一緒に歩いてたの!?
…い、今さら…??
『あっははははは』
『きゃははははー♪』
…大笑いするYOSHIKAさんと詩織。
YOSHIKAさんが『この子は女装した信吾くん』って、代わりに四方山さんに説明してくれると…四方山さんは『凄ーっ!もう全っ然可愛い女の子じゃん!』『誰が見たって元が男子だなんて、誰も分からないって!』『てか、メイクはどうやったの?まっ、まさか!?自分でッ!?』『えぇぇっ!!?』『マジの天才すぎ!』って…ずっと言葉が止まらず、独りハイテンションになっちゃってた…。
そんな四方山さんの様子を見てて、また大笑いしてた詩織。
それと、夕紀さんや詩織ちゃんも小笑いしてた。
『あとでツーショ撮ろう!いいよね!』
まぁ…はい。いいですけど。
…慌てず歩いて、ようやく目の前に収録スタジオの大きな入り口が見えてきた。
『…詩織』
『うん』
僕と詩織は少しずつゆっくりと歩く速度を落として、同じように歩く皆んなの後ろへと移動しながら…互いを見合った。
『さっきの…気にし』
『今日も凄く可愛いよ。金魚』
ぅ…うん。
ありがとう。
そうじゃない…。
『気を落とすことなん』
『さっきの、怒ってたときの金魚も…』
僕が話すと、詩織が言葉を被せてくる…。
わざと…?
僕はもう、これ以上詩織に邪魔させまいと…目を瞑って詩織を優しく抱き締めた。
『聞いてよ』
『嫌。聞きたくない。でも言いたいことは解ってるの…』
『…。』
『ありがとう。金魚』
『ううん。お礼なんていいよ』
それを一番言いたいのは…僕なんだから。
『もうちょっとだね。収録が終わるの』
『うん。何時間も何時間もリハーサル頑張ってきて、少し疲れたね』
『……ね。けど私は全然平気よ』
僕は抱き締めた詩織を少し放して、またじっと…詩織と見合った。
『この特番が放送されたら、僕ら…忙しくなるよ』
『お仕事が増えたら、私のお給料ももう少し増えるかなー』
増えてほしいね。
新人アイドルの給与なんて、コンビニバイトなんかよりも不安定で安いくらい…とかって言われるくらいだから。
僕だって安いけど。
『私…絶対に女優になる。頑張るから』
『違うよ。詩織』
『えっ?』
僕はニコリと笑って答えた。
『詩織は絶対に、日本を代表するような女優にな…』
『きゃはははははー』
…び、びっくりしたぁ…!
こんな至近距離で、急に詩織が可愛く元気に笑うもんだから…。
「大好き…金魚」
『何やってんのー。2人ともー!』
スタジオの入り口前で待ってたYOSHIKAさんが、僕らを呼んでる。
『呼んでるよ。行こっ金魚』
『うん。もう少しだから…頑張ろう』
僕らは揃って駆け出した。
…何はともあれ、良かった。
詩織は"いつもの元気な詩織"に戻ったみたい。
一時的…かもしれないけど…。
今度、連絡って…。
忘れた…それを聞くの!
僕、西森さんとの連絡先…何も知らないや。
連絡の取りようがない…。
まぁいっか…では諦め切れない。
深い後悔とショック…。
『ねぇ、信吾くん』
『…あ、はい』
僕を呼んだYOSHIKAさんを見た。
『もう、彼女には会わないほうがいいんじゃない?』
えっ!?何故なんですか…?
『あの子は仮にも《Kira♠︎m》で働いてるんでしょ』
…はい。
『信吾くんと彼女が幼馴染みだとか、仲良しなのかもしれないけど…だからこそ、気をつけてほしいの』
YOSHIKAさんは、僕に『彼女と信吾くんが親しい関係なんだってことにつけ込んで、信吾くんに近づかせようと《Kira♠m》が送り込んた"回し者"かもしれないから』って…。
回し者…つまりスパイ?
またスパイ疑惑とか…。
でも西森さんは、そんなんじゃないと思う。
だって…さっき僕と話せて、喜んで満面の笑みを僕に見せてくれたあれだって、演技だったなんて思えない。
けれど僕はYOSHIKAさんに『…だからもう、絶対に会っちゃダメ!』『これは信吾くんの為なんだからね!』って、また強く言われた…。
そうだよ。
YOSHIKAさんは、僕のためを思ってそう言ってくれたんだ。
だからYOSHIKAさんは絶対に悪くない!
それは分かってる。
分かってはいるんだけど…。
僕の本心は…"もう一度西森さんと会って、もっと色々なことを、落ち着いてゆっくりと話したい"。
今までの事とか、これからの事とか…。
なので…ごめんなさい。
やっぱり西森さんは僕にとって、今も大切な友達なんです…。
『じゃあ、みんな行こう。スタジオに戻ろう』
そう言ったYOSHIKAさんを先頭に、僕らはまた通路を戻り歩き出した。
そういえば…詩織は!?
まだ気落ちしてたりしない!?
僕は急に心配になって、慌てて振り返って詩織を見た。
『…でさ、仲間と夜の街を走る時は、私は"真っ赤な特攻服"を着て"半ヘル"被って…それと愛車は紫ピンクのスクーター。でも赤信号はちゃんと守ってるよ』
『そうなんだ。でも理解するの難しいな…』
…四方山さんと詩織は、なんだか不良っぽい話をしてた。
ってか、愛車は普通のバイクじゃなくて、改造スクーターなんだ…意外。
『信吾さん!』
はいっ!
僕は急に呼ばれて、慌てて振り返っ…あー。呼んだのは雫ちゃんだった。
『今は《信吾さん》じゃなくて《金魚ちゃん》なんですよ。忘れないでくださいね!』
『そうだね…ごめん』
この姿で、信吾を出しすぎてた…確かに。気をつけないと。
『…てゆうか夕紀さん。急がなくていいんです?スタジオに…』
『大丈夫です』
マネージャーの夕紀さんは、全く慌てる様子もなく、微笑んでそうハッキリと答えてくれた。
『スタジオのスタッフさん達には、今何が起きているのかを軽く説明してあります。何事もなく無事に帰ってきてくれたら、それでいいって』
そうなんだ。
ありがとう夕紀さん。
とはいえ、やっぱり急いだほうが良くない…?
『…てかさ、さっきから居るこの可愛い子…って誰?』
………えっ。
一瞬、空気がキーンと凍りついたかのように、ここにいる全員が黙り込んだ…。
金魚を指差す四方山さん…?
えっ?知らずに一緒に歩いてたの!?
…い、今さら…??
『あっははははは』
『きゃははははー♪』
…大笑いするYOSHIKAさんと詩織。
YOSHIKAさんが『この子は女装した信吾くん』って、代わりに四方山さんに説明してくれると…四方山さんは『凄ーっ!もう全っ然可愛い女の子じゃん!』『誰が見たって元が男子だなんて、誰も分からないって!』『てか、メイクはどうやったの?まっ、まさか!?自分でッ!?』『えぇぇっ!!?』『マジの天才すぎ!』って…ずっと言葉が止まらず、独りハイテンションになっちゃってた…。
そんな四方山さんの様子を見てて、また大笑いしてた詩織。
それと、夕紀さんや詩織ちゃんも小笑いしてた。
『あとでツーショ撮ろう!いいよね!』
まぁ…はい。いいですけど。
…慌てず歩いて、ようやく目の前に収録スタジオの大きな入り口が見えてきた。
『…詩織』
『うん』
僕と詩織は少しずつゆっくりと歩く速度を落として、同じように歩く皆んなの後ろへと移動しながら…互いを見合った。
『さっきの…気にし』
『今日も凄く可愛いよ。金魚』
ぅ…うん。
ありがとう。
そうじゃない…。
『気を落とすことなん』
『さっきの、怒ってたときの金魚も…』
僕が話すと、詩織が言葉を被せてくる…。
わざと…?
僕はもう、これ以上詩織に邪魔させまいと…目を瞑って詩織を優しく抱き締めた。
『聞いてよ』
『嫌。聞きたくない。でも言いたいことは解ってるの…』
『…。』
『ありがとう。金魚』
『ううん。お礼なんていいよ』
それを一番言いたいのは…僕なんだから。
『もうちょっとだね。収録が終わるの』
『うん。何時間も何時間もリハーサル頑張ってきて、少し疲れたね』
『……ね。けど私は全然平気よ』
僕は抱き締めた詩織を少し放して、またじっと…詩織と見合った。
『この特番が放送されたら、僕ら…忙しくなるよ』
『お仕事が増えたら、私のお給料ももう少し増えるかなー』
増えてほしいね。
新人アイドルの給与なんて、コンビニバイトなんかよりも不安定で安いくらい…とかって言われるくらいだから。
僕だって安いけど。
『私…絶対に女優になる。頑張るから』
『違うよ。詩織』
『えっ?』
僕はニコリと笑って答えた。
『詩織は絶対に、日本を代表するような女優にな…』
『きゃはははははー』
…び、びっくりしたぁ…!
こんな至近距離で、急に詩織が可愛く元気に笑うもんだから…。
「大好き…金魚」
『何やってんのー。2人ともー!』
スタジオの入り口前で待ってたYOSHIKAさんが、僕らを呼んでる。
『呼んでるよ。行こっ金魚』
『うん。もう少しだから…頑張ろう』
僕らは揃って駆け出した。
…何はともあれ、良かった。
詩織は"いつもの元気な詩織"に戻ったみたい。
一時的…かもしれないけど…。
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