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第十四話
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交渉が成立すると分身は鬼姫の手配書の束を机に置き、仕事を終えた分身は白蛇の方を向くとマジシャンのようにペコリとお辞儀をして煙に変わった。
「この辺の使用類色々持ってってくれや」
椅子に座ったままのヴォルペは机の上に並べられた書類たちを軽く叩く。
「なんじゃそれは?」
「この国で生きてくために必要な書類たちや、お前はともかく白蛇君の方は色々めんどくさくてな、アンデットの滞在許可書とか諸々含めると、結構多なるんや。申請とかめんどくさいのはこっちでしといたから内容に目だけ通しといてくれ」
「なんか、すごい量ですね」
白蛇は、資料をパラパラとめくり斜め読みしながら返した。
「そら、文化とか法律とか一般常識それ自体が変わってくるからな。その辺まとめると長なるんや」
「そうなんですね」
白蛇は返事をすると、指輪に魔力を少し注いでゲートを開き、そのゲートの中に書類の山を片付けた。
「ヴォルペや、フィアは元気にしておるかのぅ?」
鬼姫は退屈そうに机の上ににある小物を弄りながら尋ねる。
「あいつな、元気やで、ずーっと本読んどるけどな」
「変わっとらんな」
「アホやからな」
ヴォルペは冗談めかしていう。
「そういえば図書館はどこに行ったんじゃ? と言うか、ここ静かすぎやせんか? 妾がここにおった時はもうちょいとばかり騒がしかった印象じゃがのぅ」
言われてみれば確かにそうだ。
鬼姫と共にここにやってきた時に誰ともすれ違わなかった、もしここが鬼姫の言っていた通りの反乱軍の本部ならもう少し人通りが多くてもいいだろう。
「あー、それな本部ごと移転したんや。『東フィーレメント』に独立した時にな」
「ほぉ、独立したとな?」
珍しく鬼姫が驚いた声を上げる。
「まぁ、その辺の歴史はそれなりに長くなるから、図書館までの道で歩きながら白蛇くんにもわかる様に説明するわ」
◇
ヴォルペさんは移動中この国の歴史を語ってくれた。
鬼姫が言っていたようにガランジウムを求めてフィーレメントでは内乱が起こった。
ヴォルペさんたちの所属する反乱軍側が鬼姫の活躍もありフィーレメント帝国側を圧倒。
そのまま戦争は終結するかと思われたその時、魔王軍と呼ばれる魔物のみで構成された軍が味方し、帝国軍が持ち直したのだ。
魔王軍が味方をした理由はガランジウムを確保して戦力を増強することが目的だったそうだ。
そしてこの辺りでフィアと呼ばれる魔法使いが加入して、戦争はさらに激しくなり、魔王軍の力が強かったため、反乱側は押され始めた。
だが、鬼姫の活躍によって戦況を打開し魔王軍を壊滅状態へ追いやって、あと一歩のところまで追い詰めた。
苦し紛れの抵抗として、無理やり鬼姫を異世界へと飛ばしたが、その後ヴォルペさんやフィアさんの活躍により反乱軍はガランジウムの鉱山を手に入れ『東フィーレメント』の独立に成功し、その後ほとんどの鉱山を失った『フィーレメント帝国』と勝利した『東フィーレメント』に分裂した。
その後はヴォルペさんが政治基盤を整えて『東フィーレメント』と『フィーレメント帝国』の小競り合いは続いているものの長い間大きな争いが行われることはなかった。
だが、ここ数十年の間に『フィーレメント帝国』は魔道人形の技術を発展させその力で戦力を伸ばしており、戦闘がまた激化しつつあるそうだ。
「——っとまぁこんな感じや」
力を拠点を階段を上がって外に出て、街を歩きながらヴォルペが話を切り上げた。
「じゃから妾を呼んだのかのぅ? 自分が負けそうになったら「助けてくれ~」とな? 随分と虫のいい話じゃのぅ?」
「ほな帰るか? 闘争を差し置いて帰れる奴じゃないやろ。こっちは助けてもらう、お前は戦えるこれがwin-winってやつやな」
「小癪な奴め……お前には敵わんのぅ」
三人は歩いていると白蛇はとあるものを見つけた。
一言で表すと異質。周りに建物と比べても数十倍ほどの大きさをもつ赤い煉瓦造りの建物で高さは5階程、正面には大きな庭を構えておりその周囲を背の高い壁で覆っている。
「これですか? その図書館っていうのは?」
「せや、これが帝国第一図書館や」
「そんな大層な名前をつけおって、どうせあやつの書庫になっとるんじゃろ?」
「否定はせんな」
ぐるりと辺りを囲う塀の入り口へと三人は立つ。
入り口には高さ3メートルほどの黒い鉄格子で作られている門が何もせずともひとりでに開きだす。
(これも魔力で動いてるんですね。)
白蛇はそんなことを考えながら鬼姫とヴォルペの後について行く。
広い庭の芝生は手入れが綺麗に行き届いており、庭木や石像などが真ん中に大きな鏡を置いた様に綺麗な左右対称に飾られている。
中心から米の字形に石畳が伸びており、この道を使って庭を一周できるようだ。
「綺麗ですね」
「税金で作ってるからな、予算は無限みたいなもんやからな」
「なんだか闇の深い話ですね」
「じゃが、こんな図書館でも完全に無駄なわけじゃないぞ。どうせ昔と変わっとらんじゃろうから魔術の研究機関にもなっとるはずじゃ」
「魔術の研究ですか」
「うむ、その辺りが気になるなら直接聞いてみるとよい。妾は魔術はあまり詳しくなくてのぅ」
「そうなんですね」
三人は石畳を踏み締めて庭を歩く。
中でも目を引くのが石像である。
数の多さもあるが、何よりも目立っているのはその精巧さ。
悪魔のような形の生物を生きたまま閉じ込めた様だった。
だが、それだけならばまだよく見る精巧に作られた石像である。
白蛇をより唸らせたのは布などの柔らかいものの表現だった。
石という硬い物質を削り出して作ったものなのに、布の柔らかさがひしひしと伝わってくる。
(あまり芸術に詳しくない僕ですら、凄いってことはわかりますね)
石像を眺めながら庭を横断し、扉の前で止まった。
大きな扉は重く閉ざされており、図書館なのに他の人を寄せ付けない雰囲気を漂わせている。
だが鬼姫はそんなことを気にしない。
勢いよく扉を開けた。
扉の先には床から天井の高さまでの高さを誇る本棚が、先の見えないほど並んでいる。
この図書館は五階の吹き抜けになっており、そこにも大量の本棚と本が置かれており、蔵書は軽く百万冊を超えているだろう。
だが、こんな立派な図書館は静まり返っており、人の気配が一切しない。
「おい! どうせおるんじゃろ?」
鬼姫の声が静かな図書館に空虚に響いた。
また図書館に静けさが戻った頃、2階の木でできた柵の隙間からわずかに人影が動くのが見えた。
どんな顔をしているかは暗くて見えないが、置かれた机と椅子に腰掛け大きな本を読んでいる。
ちらりとこちらを向くと、大きなため息をついて片手で本を閉じた。
本の閉じる乾いた音と共に椅子を引き、机に立てかけてあった棒状のものを拾った。
「白蛇くん、そこから五歩ぐらい下がった方がいいで?」
「はい?」
ヴォルペの言葉に困惑しながらも白蛇は言われた通りに後ろに下がる。
直後、鬼姫の右手に黒い炎が灯った。
「え?」
2階では魔力が膨れ上がり、棒の先に集約されている。
その棒が向いているのは——
(鬼姫を狙ってる!?)
膨大な魔力は熱に変換されその大きさはどんどん増していく。
その魔力の量はレミのフルバーストを遥かに凌駕する。
明らかに普通じゃない量、これだけの威力ならば下手をするとこの建物ごと跡形もなく消し飛んでしまうだろう。
その魔力に塊を一言で表すなら、小さな太陽。
白く輝く直径1メートルほどの光球。
その太陽を銃弾の如く射出する。
「やはり、久しぶりにみると、なかなかのもんじゃのぅ」
鬼姫は音速で飛び出し、黒い炎で光球を引っ掻き切り裂く。
切断された太陽は『黒炎』に飲み込まれ、跡形もなく焼き尽くし消滅する。
「流石ね」
人影は柵を乗り越えて落下した。
地面に激突するその寸前、背中から紅蓮の炎で作られた大きく鳥の様な翼が出現し、落下速度を殺す。
その姿は悪魔というにはあまりにも綺麗だが、天使というにはあまりに冷たい。
炎の様に赤い尖った目ときゅっと閉じた口元、全体的に整ったその顔からは知性や品性というものが感じられる。
髪は艶のあるくすんだ赤色で肩の辺りで切り揃えられている。
頭には赤いとんがり帽子に、赤を基調そして白の装飾の入ったローブ、右手には拍子が動物の皮で作られた大きな本を、左手には真っ赤な水晶玉の様な宝石を先端に取り付けた長い杖を持っている。
まさに想像通りも魔法使いだった。
「400年経っても変わらないのね」
「ああ、久しぶりじゃのぅ。フィア」
杖の石突を地面に叩きつけると、それを中心として大きな魔法陣が瞬時にして描かれた。
魔法陣の線に魔力が流れたところから赤く光っていき、その全てが輝く。
線すべてに意味をこ持たせたその術式が発動し、フィアの背後には炎で形成された数百の剣が5列に渡りずらりと並んだ。
「圧巻ですね」
自然と白蛇の口からはそう自然に溢れた。
「フィアにしかできん芸当やな」
フィアが杖を高くかざすと炎の剣は糸で操られた様に回転し、切っ先を鬼姫へ向けた。
それを見た鬼姫は、ゲートからいつもの刀を取りだし、スラリと抜く。
フィアはその刃に恐ることもなく、高く掲げられた杖を振り下ろした。
それにつられるように炎の剣達は鬼姫にに向かって一直線に飛翔する。
フィアと鬼姫との距離は10メートルと少し、決着はすぐに着くと白蛇は予想した。
鬼姫が体制を落として一歩を蹴り出し、停止する。
「あれ? なんで止まったんですか?」
「そろそろ見とったらわかるわ」
一歩進んだその時、視界が伸びた。
先程まで目の前に居たはずのフィアが遥か彼方へと離れていく。
フィアだけではない、近くにあったはずの本棚や光までもが遠ざかっている。
(新たな魔法かのぅ)
鬼姫がそう判断した直後、超高速で飛来する炎の剣を捕らえる。
(間に合うか?)
自分の最高速度と同等、もしくはそれ以上の速さ、今から回避行動をとって居ては間に合わない。
ここの窮地から脱出する手段は一つ。
(叩き斬るのみ!)
角を生やして身体強化魔法を最大レベルまで引き上げ、自らの体が出せる最高速度で刀を振るい、大きな音と共に火剣を弾き飛ばす。
「こりゃ、早いうちにあやつ倒しとかねばちょいとまずいのぅ」
鬼姫は自分の出せる力を足先の一点から解放し、高速で飛び出した。
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「この辺の使用類色々持ってってくれや」
椅子に座ったままのヴォルペは机の上に並べられた書類たちを軽く叩く。
「なんじゃそれは?」
「この国で生きてくために必要な書類たちや、お前はともかく白蛇君の方は色々めんどくさくてな、アンデットの滞在許可書とか諸々含めると、結構多なるんや。申請とかめんどくさいのはこっちでしといたから内容に目だけ通しといてくれ」
「なんか、すごい量ですね」
白蛇は、資料をパラパラとめくり斜め読みしながら返した。
「そら、文化とか法律とか一般常識それ自体が変わってくるからな。その辺まとめると長なるんや」
「そうなんですね」
白蛇は返事をすると、指輪に魔力を少し注いでゲートを開き、そのゲートの中に書類の山を片付けた。
「ヴォルペや、フィアは元気にしておるかのぅ?」
鬼姫は退屈そうに机の上ににある小物を弄りながら尋ねる。
「あいつな、元気やで、ずーっと本読んどるけどな」
「変わっとらんな」
「アホやからな」
ヴォルペは冗談めかしていう。
「そういえば図書館はどこに行ったんじゃ? と言うか、ここ静かすぎやせんか? 妾がここにおった時はもうちょいとばかり騒がしかった印象じゃがのぅ」
言われてみれば確かにそうだ。
鬼姫と共にここにやってきた時に誰ともすれ違わなかった、もしここが鬼姫の言っていた通りの反乱軍の本部ならもう少し人通りが多くてもいいだろう。
「あー、それな本部ごと移転したんや。『東フィーレメント』に独立した時にな」
「ほぉ、独立したとな?」
珍しく鬼姫が驚いた声を上げる。
「まぁ、その辺の歴史はそれなりに長くなるから、図書館までの道で歩きながら白蛇くんにもわかる様に説明するわ」
◇
ヴォルペさんは移動中この国の歴史を語ってくれた。
鬼姫が言っていたようにガランジウムを求めてフィーレメントでは内乱が起こった。
ヴォルペさんたちの所属する反乱軍側が鬼姫の活躍もありフィーレメント帝国側を圧倒。
そのまま戦争は終結するかと思われたその時、魔王軍と呼ばれる魔物のみで構成された軍が味方し、帝国軍が持ち直したのだ。
魔王軍が味方をした理由はガランジウムを確保して戦力を増強することが目的だったそうだ。
そしてこの辺りでフィアと呼ばれる魔法使いが加入して、戦争はさらに激しくなり、魔王軍の力が強かったため、反乱側は押され始めた。
だが、鬼姫の活躍によって戦況を打開し魔王軍を壊滅状態へ追いやって、あと一歩のところまで追い詰めた。
苦し紛れの抵抗として、無理やり鬼姫を異世界へと飛ばしたが、その後ヴォルペさんやフィアさんの活躍により反乱軍はガランジウムの鉱山を手に入れ『東フィーレメント』の独立に成功し、その後ほとんどの鉱山を失った『フィーレメント帝国』と勝利した『東フィーレメント』に分裂した。
その後はヴォルペさんが政治基盤を整えて『東フィーレメント』と『フィーレメント帝国』の小競り合いは続いているものの長い間大きな争いが行われることはなかった。
だが、ここ数十年の間に『フィーレメント帝国』は魔道人形の技術を発展させその力で戦力を伸ばしており、戦闘がまた激化しつつあるそうだ。
「——っとまぁこんな感じや」
力を拠点を階段を上がって外に出て、街を歩きながらヴォルペが話を切り上げた。
「じゃから妾を呼んだのかのぅ? 自分が負けそうになったら「助けてくれ~」とな? 随分と虫のいい話じゃのぅ?」
「ほな帰るか? 闘争を差し置いて帰れる奴じゃないやろ。こっちは助けてもらう、お前は戦えるこれがwin-winってやつやな」
「小癪な奴め……お前には敵わんのぅ」
三人は歩いていると白蛇はとあるものを見つけた。
一言で表すと異質。周りに建物と比べても数十倍ほどの大きさをもつ赤い煉瓦造りの建物で高さは5階程、正面には大きな庭を構えておりその周囲を背の高い壁で覆っている。
「これですか? その図書館っていうのは?」
「せや、これが帝国第一図書館や」
「そんな大層な名前をつけおって、どうせあやつの書庫になっとるんじゃろ?」
「否定はせんな」
ぐるりと辺りを囲う塀の入り口へと三人は立つ。
入り口には高さ3メートルほどの黒い鉄格子で作られている門が何もせずともひとりでに開きだす。
(これも魔力で動いてるんですね。)
白蛇はそんなことを考えながら鬼姫とヴォルペの後について行く。
広い庭の芝生は手入れが綺麗に行き届いており、庭木や石像などが真ん中に大きな鏡を置いた様に綺麗な左右対称に飾られている。
中心から米の字形に石畳が伸びており、この道を使って庭を一周できるようだ。
「綺麗ですね」
「税金で作ってるからな、予算は無限みたいなもんやからな」
「なんだか闇の深い話ですね」
「じゃが、こんな図書館でも完全に無駄なわけじゃないぞ。どうせ昔と変わっとらんじゃろうから魔術の研究機関にもなっとるはずじゃ」
「魔術の研究ですか」
「うむ、その辺りが気になるなら直接聞いてみるとよい。妾は魔術はあまり詳しくなくてのぅ」
「そうなんですね」
三人は石畳を踏み締めて庭を歩く。
中でも目を引くのが石像である。
数の多さもあるが、何よりも目立っているのはその精巧さ。
悪魔のような形の生物を生きたまま閉じ込めた様だった。
だが、それだけならばまだよく見る精巧に作られた石像である。
白蛇をより唸らせたのは布などの柔らかいものの表現だった。
石という硬い物質を削り出して作ったものなのに、布の柔らかさがひしひしと伝わってくる。
(あまり芸術に詳しくない僕ですら、凄いってことはわかりますね)
石像を眺めながら庭を横断し、扉の前で止まった。
大きな扉は重く閉ざされており、図書館なのに他の人を寄せ付けない雰囲気を漂わせている。
だが鬼姫はそんなことを気にしない。
勢いよく扉を開けた。
扉の先には床から天井の高さまでの高さを誇る本棚が、先の見えないほど並んでいる。
この図書館は五階の吹き抜けになっており、そこにも大量の本棚と本が置かれており、蔵書は軽く百万冊を超えているだろう。
だが、こんな立派な図書館は静まり返っており、人の気配が一切しない。
「おい! どうせおるんじゃろ?」
鬼姫の声が静かな図書館に空虚に響いた。
また図書館に静けさが戻った頃、2階の木でできた柵の隙間からわずかに人影が動くのが見えた。
どんな顔をしているかは暗くて見えないが、置かれた机と椅子に腰掛け大きな本を読んでいる。
ちらりとこちらを向くと、大きなため息をついて片手で本を閉じた。
本の閉じる乾いた音と共に椅子を引き、机に立てかけてあった棒状のものを拾った。
「白蛇くん、そこから五歩ぐらい下がった方がいいで?」
「はい?」
ヴォルペの言葉に困惑しながらも白蛇は言われた通りに後ろに下がる。
直後、鬼姫の右手に黒い炎が灯った。
「え?」
2階では魔力が膨れ上がり、棒の先に集約されている。
その棒が向いているのは——
(鬼姫を狙ってる!?)
膨大な魔力は熱に変換されその大きさはどんどん増していく。
その魔力の量はレミのフルバーストを遥かに凌駕する。
明らかに普通じゃない量、これだけの威力ならば下手をするとこの建物ごと跡形もなく消し飛んでしまうだろう。
その魔力に塊を一言で表すなら、小さな太陽。
白く輝く直径1メートルほどの光球。
その太陽を銃弾の如く射出する。
「やはり、久しぶりにみると、なかなかのもんじゃのぅ」
鬼姫は音速で飛び出し、黒い炎で光球を引っ掻き切り裂く。
切断された太陽は『黒炎』に飲み込まれ、跡形もなく焼き尽くし消滅する。
「流石ね」
人影は柵を乗り越えて落下した。
地面に激突するその寸前、背中から紅蓮の炎で作られた大きく鳥の様な翼が出現し、落下速度を殺す。
その姿は悪魔というにはあまりにも綺麗だが、天使というにはあまりに冷たい。
炎の様に赤い尖った目ときゅっと閉じた口元、全体的に整ったその顔からは知性や品性というものが感じられる。
髪は艶のあるくすんだ赤色で肩の辺りで切り揃えられている。
頭には赤いとんがり帽子に、赤を基調そして白の装飾の入ったローブ、右手には拍子が動物の皮で作られた大きな本を、左手には真っ赤な水晶玉の様な宝石を先端に取り付けた長い杖を持っている。
まさに想像通りも魔法使いだった。
「400年経っても変わらないのね」
「ああ、久しぶりじゃのぅ。フィア」
杖の石突を地面に叩きつけると、それを中心として大きな魔法陣が瞬時にして描かれた。
魔法陣の線に魔力が流れたところから赤く光っていき、その全てが輝く。
線すべてに意味をこ持たせたその術式が発動し、フィアの背後には炎で形成された数百の剣が5列に渡りずらりと並んだ。
「圧巻ですね」
自然と白蛇の口からはそう自然に溢れた。
「フィアにしかできん芸当やな」
フィアが杖を高くかざすと炎の剣は糸で操られた様に回転し、切っ先を鬼姫へ向けた。
それを見た鬼姫は、ゲートからいつもの刀を取りだし、スラリと抜く。
フィアはその刃に恐ることもなく、高く掲げられた杖を振り下ろした。
それにつられるように炎の剣達は鬼姫にに向かって一直線に飛翔する。
フィアと鬼姫との距離は10メートルと少し、決着はすぐに着くと白蛇は予想した。
鬼姫が体制を落として一歩を蹴り出し、停止する。
「あれ? なんで止まったんですか?」
「そろそろ見とったらわかるわ」
一歩進んだその時、視界が伸びた。
先程まで目の前に居たはずのフィアが遥か彼方へと離れていく。
フィアだけではない、近くにあったはずの本棚や光までもが遠ざかっている。
(新たな魔法かのぅ)
鬼姫がそう判断した直後、超高速で飛来する炎の剣を捕らえる。
(間に合うか?)
自分の最高速度と同等、もしくはそれ以上の速さ、今から回避行動をとって居ては間に合わない。
ここの窮地から脱出する手段は一つ。
(叩き斬るのみ!)
角を生やして身体強化魔法を最大レベルまで引き上げ、自らの体が出せる最高速度で刀を振るい、大きな音と共に火剣を弾き飛ばす。
「こりゃ、早いうちにあやつ倒しとかねばちょいとまずいのぅ」
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