ネクロマンサー異世界旅行記

エンペラー

文字の大きさ
17 / 32

第17話

しおりを挟む
 東フィーレメント本部にある、大型の鍛冶場、幾つも並んだ炉が赤々と燃えたぎり火の粉を散らす。
 その音と共に繋ぎを着た男達がいくつものハンマーを振り下ろして甲高い音を響き渡らせている。
 その鍛冶場はとても広く、大きな工場のような場所だった。
 
「熱いのぅ」

 鬼姫が大きな騒音達にかき消されないよう大声で白蛇に話しかける。

「そりゃあ、鍛冶場ですからね涼しい方が怖いですよ」

 白蛇も大声で返した。
 ヴォルペは二人の前を歩いて奥に進んでいく。
 火事場の奥の方へと歩を進めたところで、黒髪短髪の少年が手を振って小走りで近づいてきた。
 少年の服装は、皮でできたオーバーオールのようなツナギを着て、おでこにはゴーグルを引っ掛けている。

「ヴォルペさんじゃないッスか、どうしたんスか? こんな所まで来て」

 その少年は白蛇と同じか少し下の年齢に見えるが、放つオーラと言うのだろうか若々しくエネルギッシュなオーラを放っている。
 そのオーラから感じた白蛇の第一印象は”いい人そう” だった。

「用事や、用事」
「用事っすか! 自分関係っすか?」
「せや」
「なるほど、そッスか! とりあえずこんな所もアレなんで、こっち来て欲しいッス。お二人も」

 ◇

 裸電球のように何の飾り付けのない光源が油臭いのそ部屋を照らしている。
 どうやらこの少年の個室らしいその部屋は、小さな工房と言えた。
 四面の壁は入り口から右手を除いて壁にかけられた工具で埋まっており、壁の色すら見えない。
 部屋の端にある机の上には棚から溢れてはいりきらなくまったもであろう、機械のパーツが散乱している。
 だが、それよりも目立つものが一つ。
 部屋の中心に置かれた手術台のようなものの上には、金属でできた人形の人形が座っている。
 そんな部屋で四人は背もたれのない黒い丸椅子に腰掛けていた。

「わざわざ俺のところまで来て、今日はどうしたんすか?」

 少年は椅子の足を掴みながらヴォルペに尋ねる。

「今日はな、白蛇君の武器を調達しにきたんや」
「白蛇……」
「あ、僕です。白蛇って言います。よろしくお願いします」

 肩をすくめて小さく手を上げながら白蛇は言う。

「どうもッス、この鍛冶場の長やってるッスコウタて言います。よろしくッス。一応鍛治士やってるッス」
「剣士のの鬼姫じゃ」

 組んだ足に頬杖をついて鬼姫が答えた。

「自己紹介も終えたところで本題ッスね」
「せやな、そんなにお前も暇やないやろうから手短に話すわ、武器庫の中のもん貰うわ。ええか?」
「言いも何も、ほとんどヴォルペさんのじゃないっすか、別にいいっすよ。」

 そうかとヴォルペは返事をすると、立ち上がりくるりと背を向けると一切の工具がかかって無い壁の方へと歩き出した。

「あと、鍵要りますか?」
「あんなん使ってたら身体鈍るわ」

 ヴォルペぺたりと両手を壁につけ、両手とも別の魔法陣を展開した。

「ねぇ、鬼姫ヴォルペさんは何をやってるんですか?」
「鍵開けじゃな、特殊な鍵での内蔵された四つの術式は毎秒変わるせいで魔法で無理やり開ける事が難しいんじゃよ、通常は鍵を使うんじゃがな」

 金属が稼働する思い音と共に壁が二つに割れ、黒い空間が現れる。
 
「ほな行こか」

 ヴォルペは振り返らず手を振りながらそう言うと、奥へと進んでいった。

「妾たちも続こうかのぅ」
「ですね」
 
 ◇

 扉の奥にあったその部屋の中は、カンテラのような光源で照らされており、薄暗いが暗いと言うほどではない。
 経年劣化による為か、床や壁の木材は黒く内装からはワイン蔵の様な印象を受けた。
 そのワイン蔵にはワインボトルの代わりに大量の武器が詰め込まれている。

「なんですか? ここ。剣とか槍とか杖とかがたくさん置いてありますけど……」
「武器庫や、術式の書き込まれた武器はなかなか廃棄出来んからな」
「どうしてですか?」
「そら、術式ひとつとっても技術の塊やからな。それも天才魔術師様、そのフィアの魔術となればよけいな。とはいえ現実的に兵器化できる奴なんかこの中の一割もないがな」
「ガラクタばっかりって事ですか?」
「魔法ってそもそも術式が大きくなるにつれて、魔力の消費が大きくなるんや。んでこの武器たちは術式刻みすぎて、並の人間が使うと魔力切れになってまうんや。最も白蛇くんには関係のない話やがな」

 ヴォルペを先頭にして三人は奥に進んでいく。

(武器の量も凄いですが。随分と広いですね、この空間魔力を探ってみる感じちょっと普通と違うのでフィアの『無限回廊』と似たような魔法なんでしょうか)

「ついたで」

 ずらりと並ぶ刀。
 壁にかけられたその刀一振り一振りには、一眼見るだけで心を奪う芸術品の様な美しさと、どこか押しつぶされてしまう様な緊張感を放っている。

(この感じ、小さなミリタリショップに置いてあるエアガンみたいですね)

「妖刀か」

 鬼姫はその刀たちを見るとやはりという様に呟いた。

「妖刀? なんですかそれ?」
「長く使った道具には魂が宿るって知ってるか?」
「付喪神とかそんなヤツですか?」
「せや、刀に魂が篭ったものを妖刀って言うんやけど、妖刀は凄くてな。自分の魔力を吸い取られる代わりに『武器強化魔法』を使わなくてもいいしへし折れても、再生するしあとは刀一振り一振りに特有の能力が宿るんや。」

 ヴォルペが自慢げに語る。

「凄いじゃないですか! めっちゃ強くないですか? 刃こぼれもしないなんて素晴らしいじゃないですか! なんでみんな使わないんですか?」
「そら、自分の魔力が足らんかったら死ぬからな。自分の体と相談して好きなやつ選びや。それとも普通に刀打ってもらおうか?」

 ヴォルペは片頬を吊り上げて笑った。

「いえ、ここから貰います。」

 正直なところ物凄く怖い、だがそれ以上にある刀に惹きつけられた。
 白蛇の正面のラックに掛けてある上から二つ目の刀。
 周りの刀達はその性能の他に美術品としても大きな価値があるのが素人目に見てもわかる、そんな中真っ黒な鞘に全くと言っていいほど装飾品のない刀。
 そんな地味な刀だがどこか懐かしさを感じる。
 背伸びをしつつ恐る々々は手を伸ばし、刀の鞘を掴む。

「ほぉ~」

 ヴォルペが驚いたような声を上げたのが後ろ肩聞こえた。
 視界が急に狭まり、ゆっくりと灯りが消えるようにして意識が薄れていく。 
(魔力が吸われてる!? ……なるほど、これが妖刀ですか)
 自らの体の魔力がぐんぐん減っていく感覚と鬼姫が何か伝えようとする声が聞こえる。
(不味いですね、感覚でしか分かりませんがそろそろ魔力が尽きますね。強さを求めて欲張りすぎました——)
 白蛇の意識が闇に飲まれた。

「まぁ、そうなるよなぁ」

 倒れた白蛇を見ながらヴォルペはつぶやいた。

「言っとる場合か! 運ぶぞ!」
「お前だけで運べばええやろ。そんなに重いもんでもないし、それに——いや、なんでもないわ。とにかく自分で運べや、ツレやろ?」
「冷たいのぅ」

 渋々鬼姫は白蛇を担ぎ出す。
(やはり妖刀は無理があったか、選んだ刀も悪かったしのぅ)
 
———————————————————————————————————————————————————

少しでも面白いと思ったら評価お願いします。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『ミッドナイトマート 〜異世界コンビニ、ただいま営業中〜』

KAORUwithAI
ファンタジー
深夜0時——街角の小さなコンビニ「ミッドナイトマート」は、異世界と繋がる扉を開く。 日中は普通の客でにぎわう店も、深夜を回ると鎧を着た騎士、魔族の姫、ドラゴンの化身、空飛ぶ商人など、“この世界の住人ではない者たち”が静かにレジへと並び始める。 アルバイト店員・斉藤レンは、バイト先が異世界と繋がっていることに戸惑いながらも、今日もレジに立つ。 「袋いりますか?」「ポイントカードお持ちですか?」——そう、それは異世界相手でも変わらない日常業務。 貯まるのは「ミッドナイトポイントカード(通称ナイポ)」。 集まるのは、どこか訳ありで、ちょっと不器用な異世界の住人たち。 そして、商品一つひとつに込められる、ささやかで温かな物語。 これは、世界の境界を越えて心を繋ぐ、コンビニ接客ファンタジー。 今夜は、どんなお客様が来店されるのでしょう? ※異世界食堂や異世界居酒屋「のぶ」とは 似て非なる物として見て下さい

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

盾の間違った使い方

KeyBow
ファンタジー
その日は快晴で、DIY日和だった。 まさかあんな形で日常が終わるだなんて、誰に想像できただろうか。 マンションの屋上から落ちてきた女子高生と、運が悪く――いや、悪すぎることに激突して、俺は死んだはずだった。 しかし、当たった次の瞬間。 気がつけば、今にも動き出しそうなドラゴンの骨の前にいた。 周囲は白骨死体だらけ。 慌てて武器になりそうなものを探すが、剣はすべて折れ曲がり、鎧は胸に大穴が空いたりひしゃげたりしている。 仏様から脱がすのは、物理的にも気持ち的にも無理だった。 ここは―― 多分、ボス部屋。 しかもこの部屋には入り口しかなく、本来ドラゴンを倒すために進んできた道を、逆進行するしかなかった。 与えられた能力は、現代日本の商品を異世界に取り寄せる 【異世界ショッピング】。 一見チートだが、完成された日用品も、人が口にできる食べ物も飲料水もない。買えるのは素材と道具、作業関連品、農作業関連の品や種、苗等だ。 魔物を倒して魔石をポイントに換えなければ、 水一滴すら買えない。 ダンジョン最奥スタートの、ハード・・・どころか鬼モードだった。 そんな中、盾だけが違った。 傷はあっても、バンドの残った盾はいくつも使えた。 両手に円盾、背中に大盾、そして両肩に装着したL字型とスパイク付きのそれは、俺をリアルザクに仕立てた。 盾で殴り 盾で守り 腹が減れば・・・盾で焼く。 フライパン代わりにし、竈の一部にし、用途は盛大に間違っているが、生きるためには、それが正解だった。 ボス部屋手前のセーフエリアを拠点に、俺はひとりダンジョンを生き延びていく。 ――そんなある日。 聞こえるはずのない女性の悲鳴が、ボス部屋から響いた。 盾のまちがった使い方から始まる異世界サバイバル、ここに開幕。 ​【AIの使用について】 本作は執筆補助ツールとして生成AIを使用しています。 主な用途は「誤字脱字のチェック」「表現の推敲」「壁打ち(アイデア出しの補助)」です。 ストーリー構成および本文の執筆は作者自身が行っております。

聖女を追放した国は、私が祈らなくなった理由を最後まで知りませんでした

藤原遊
ファンタジー
この国では、人の悪意や欲望、嘘が積み重なると 土地を蝕む邪気となって現れる。 それを祈りによって浄化してきたのが、聖女である私だった。 派手な奇跡は起こらない。 けれど、私が祈るたびに国は荒廃を免れてきた。 ――その役目を、誰一人として理解しないまま。 奇跡が少なくなった。 役に立たない聖女はいらない。 そう言われ、私は静かに国を追放された。 もう、祈る理由はない。 邪気を生み出す原因に目を向けず、 後始末だけを押し付ける国を守る理由も。 聖女がいなくなった国で、 少しずつ異変が起こり始める。 けれど彼らは、最後まで気づかなかった。 私がなぜ祈らなくなったのかを。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

処理中です...