ネクロマンサー異世界旅行記

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第十八話

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 おそらく、夢だ。
 確信はないがなんとなくそんな気がする。
 危機が何かを言っているようだがよく聞き取れない。
 鬼姫の可愛らしい顔や上品な和服ははっきりと捉えられるが周囲は磨りガラスのようにわずかにぼやけている。
 起きないと。
 纏まらない思考の中一つの結論に至る。
 早く、起きねば。

 ◇

 涙で視界が滲んでいる。
 白蛇はゆっくりと体を起こした。
 枕元にはカンテラが吊るされ部屋を薄暗く照らしていた。
 どうやら自分はベットの上で寝ていたらしい。
 首を捻って辺りと見渡すと視界に窓が入った。
 カーテンの隙間からわずかに見える外の風景から今の時刻が夜だということがわかる。

「鬼姫、いますか?」

 あたりに呼びかけてみるが反応はない。
 探さないと。
 なんとなく、そう思った。
 吊り下げられたカンテラを外して部屋の扉を開けた。

「廊下……てっきり外に出るものかと思ってましたが……ホテルとか病院それかマンションですかね」

 そのままカンテラを持ち廊下の端にある階段を下った。
 
「とりあえず外に出てみて、入れ違いになると困りますし朝日が登ったら帰りましょうか」

 そんなことを呟きながら外に出た。
 外の風景もあまり変わっておらず風景から予想するにやはりフィーレメント内だろう。

「そうか、こんな時は鬼姫の魔力を探れば良いんでしたね」

 白蛇はスッと息を吸い込んで辺りの魔力を探る。
 やはり都会だからなのか周囲には魔力を発する物体が大量に存在する。
(でも僕なら見つけられますよ)
 感知範囲をどんどん広げていく。
(見つけた! 鬼姫の魔力)
 捉えた鬼姫の魔力は高速で移動している。
 その魔力を追いかけるようにしてもう一つ白蛇の知らない魔力が動いている。
(随分と速いですね、あの速度おそらく戦闘ででしょうか。このままだと……こっちに向かって来る!?)
 そこから10秒もたたずして大きな音が鳴った。
 白蛇の頭上で打ち鳴らされる金属音。
 暗い夜を散る火花が辺りを照らした。
 屋根の上で打ち合うこと数回、打ち合うたびに戦況は鬼姫有利に傾いていく。
 相手がわずかに崩れたその隙を鬼姫は見逃さなかった。
 大きく袈裟斬りに斬り落とされ、辺りに血が舞った。

「やっぱり強いですね」

 白蛇はポツリとつぶやいた。

「どうした? お主よそんなところに突っ立って。妾がいなくて寂しくなったのかのぅ?」

 屋根の上から白蛇の目の前に飛び降りると、鬼姫はそう言った。

「どうした? は僕の台詞ですよ、何してるんですか」
「何って、ヴォルペに聞いたじゃろ? 断言はできんが、妾を殺そうとする外国の奴らじゃろうな。なんせ妾を殺せば末代まで遊んで暮らせるらしいからのぅ」
「それ、大丈夫なんですか?」
「国家クラスの戦力がこん限りはまず大丈夫じゃろ」
「国家クラスですか」
「まぁ、たとえ国家クラスだろうと捻り潰してやるがのぅ」
「出来ればそんなことを起こらないでほしいですけどね」
「カッカッカ、お主の命ぐらい妾がきっちりと守ってやるからのぅ」

 ◇

 外に出た時とは違い鬼姫と一緒に部屋へと帰った。
 帰る途中に鬼姫から聞いたのだが、この部屋はフィーレメントの兵科の一種類である銃士隊と呼ばれる軍隊の兵舎らしい。
 鬼姫に感謝しようと白蛇は思った。

「そういえば久しぶりに寝れましたよ」

小さな正方形の机サイズは頑張れば2人が食事を取れるかどうかという大きさの机に白蛇と鬼姫が向かい合って座っている。

「寝たというか魔力切れじゃがな」
「魔力切れ?」
「そうじゃ、お主よ倒れる最後の記憶を思い出せるかの?」
「えーと、ヴォルペさんに連れられて……そうだ、刀を触ったんですよね」
「そうお主は妖刀に触れた、それもとびっきりの妖刀にのぅ。その名を『孤毒』、小太刀と太刀の二本で一振りの刀で、切った相手を死に至らしめる猛毒を送る」
「毒の塗られた刀ですか」
「まぁ、ざっくりそんなところじゃな。百聞は一見にしかずと言う、呼びたしてみろ」

 呼び出す、僕が倒れる少し前ヴォルペさんが言っていた。
 妖刀と呼ばれる刀は魔力を分けた持ち主が、呼び出すと何処でも呼び出せるという。

「どうやるんですか?」
「知らん感覚じゃ」

 鬼姫は大きくあくびをし、席から立った。

「すまんが妾は寝るぞ。妾を殺そうとした馬鹿どものせいで寝ておらんのじゃ、じゃあの」

 すぐ隣にあるベットに潜り込んで鬼姫はそう言った。

「そう……ですか、お休みなさい」
「うむ、おやすみ」

 それだけいうとすぐに寝息を立て始めた。
(長年戦さ場で生きていただけありますね、いつでもどこでも睡眠が取れちゃうんですから)
 白蛇は鋭いため息を吐くと、自分の手を見つめる。
 刀を呼び出すと言っていた、実際何度か鬼姫が呼び出すのを見たことがあった。
 鬼姫がその刀を呼び出す時は手を伸ばすと、赤い光がどこからともなく集まり刀の形状をかたどると光が徐々に消え刀へと変わっていた。
(鬼姫の言っていたことが本当なら、ありがたいことにこの体は魔力がなくならない限り眠らなくてもいいようです。朝まで数時間ほど、時間があるはずです。その時間を使って呼び出す練習でもしてみましょうか)
 やるだけやろう、白蛇はそう思った。
 昔からそうだった、鬼姫が教えてくれるのは基本ばかりあとは自分で考え、工夫しろ。
 それが鬼姫の修行方針だった。
(戦闘でも柔軟に頭を使えばと鬼姫は言いたいのでしょうか? ……鬼姫に限ってそれはないですね。感覚派の鬼姫のことです、きっと何も考えてはないのでしょう)
 だが、白蛇は鬼姫のそんなところも嫌いでは無かった。
 なんだかんだで鬼姫は面倒見が良い。
 刀の呼び出しがもし高度なものなら朝までつきっきりで教えてくれたのだろう。
(そんな鬼姫が寝たということは習得は恐らくそこまで難しくないはず)
 そう白蛇は予想した。

「応えなければいけませんね、その期待に」

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「そういえばどこなんです? ココは?」
「此処かの? 此処はヴォルペが銃士隊の兵舎と言っておったぞ」
「なるほど、兵舎を貸してもらってるんですね」
「まぁ妾のコネの成果じゃな」
「ありがたい話ですね」





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