ネクロマンサー異世界旅行記

エンペラー

文字の大きさ
24 / 32

第二十四話

しおりを挟む
 とは言ったものの埒があかない。
 白蛇と鬼姫の身体能力の差は絶大で白蛇の技術と再生能力を持ってしてもことごとく完封されてしまう。
 一つ誤算だったのだが、体力切れを狙おうにも鬼姫の体力は前神社で戦った時よりも格段に上がっている。
(おそらくは身体強化魔法のせいでしょうね)
 そのため体力差を活かして戦おうにも時間がかかりすぎる。
 このペースなら朝になってもおわらないだろう。
 鬼姫の振り下ろしを左手の太刀で受け止める。

「ほらほら、しっかり考えるんじゃぞ」

 火花を散らしながら鬼姫は暴力的な笑みを浮かべている。

「考えてますよ!」

 お返しとばかりに白蛇も刀を振るうが、それらは空気を切るだけで関心の鬼姫には当たっていない。

(ただ愚直に剣を振るうだけじゃ勝てない)

 白蛇はもう一枚の手札を切ることにした。
 小太刀を鞘にしまい、右手を空ける。
 小太刀をしまったことで白蛇の強みである防御面が薄くなった。

「片手で妾に勝つつもりかのぅ?」

 だがそれ以上に大きなメリットを得たのだ。
 戦いにおいて数は一番と言っていいほど重要な項目である。
 古来より戦争の勝敗を決定していたのは数である。
 例えばどれほど技術を鍛えようと、どんな武器を持っていようと数には敵わない。
 そして白蛇の切り札はその数を増やすことが可能である。
 右手を腰に当てて、胴体で右手を隠す。
 隠した右手に魔力を込めて、骸骨を生成する。
 それと同時に左手の太刀で鬼姫を攻め立てる。
 僅かな差ではあるが、鬼姫は攻撃をするより攻撃を受けるのが苦手である。
 白蛇が攻撃し、僅かにできた隙を利用して骸骨の数を増やす。

(だが、この小さい骸骨では鬼姫には一切太刀打ちできないでしょうね)

 当然この小さな骸骨では鬼姫どころかレミにすらほとんど通用しない。
 そのために、この骸骨達を同士討ちさせる。
 同士討ちさせて生き残った方は成長するらしい。
 その性質を利用する。
 最低限の戦力と後は頭数、それだけあればもしかしたら一泡吹かせられるかもしれない。

(久しぶりに思った、勝てる……鬼姫に……勝てるかもしれない、勝ちたい!)

 思い出した白蛇の闘争本能、勝利への渇望。
 落ち着け、焦るな勝利を確信した時が一番負けに近づいていることを白蛇は知っている。
 鬼姫を抑えて数を増やす。
 単純で難しい作業、だが白蛇には可能だ。
 鬼姫が次どう動くかは過去の経験で予想できる。
 身体能力の差は技と経験で埋める。
 四肢が切断されない、攻撃力、機動力を失わない程度の傷なら問題ない。
 同士討ちして完成した骸骨は白蛇とほぼ同じ体格と西洋剣と盾を装備している。
 その骸骨を鬼姫へと差し向ける。
 その数が1体増えるだけで白蛇の負担が減り、鬼姫の処理能力を圧迫することができる。
 減った白蛇の負担を骸骨の生産に回し、さらに数を増やす。

「つけ焼きなの割には様になっとるのぅ」
「強がりですか?」
「どうかのぅ?」

 流石に機動力である。
 そう白蛇は思った。
 鬼姫が相手のしている数は白蛇を含めて5体。
 それだけの数を使ってもまだ鬼姫の宣言通り触れる事すらできていない。
 
(骸骨を一体も倒さないところを見るに随分と余裕がありそうですね、何か後一つ決定的な策を練らなければ、鬼姫が遊んでいるうちに……)

 白蛇は策を練りつつ骸骨をさらに作り出す。
 5体の連携によって繰り出される攻撃と骸骨の壁、鬼姫からは白蛇の作り出した骸骨の数や位置を把握するのが難しくなっているはず。
 位置を掴ませない鬼姫からは不可視の攻撃。
 白蛇は小太刀を抜いて攻勢に出る。

「なんじゃ? 数に頼るのはやめたのかのぅ?」
「さぁ、どうですかね」

 現在鬼姫に攻撃を加えている数は7体。
 そこに白蛇も加わりさらに攻撃は激しくなっている。
 白蛇達の後ろにちょうど鬼姫の死角になるように一体の骸骨が剣を構えている。
 
(あとは、コイツを利点を利用してなんとか攻撃を当てたいですね……どうすれば……)

 白蛇に妙案が浮かんだ。
 
(これなら……やれるのかもしれない)

 白蛇は大きく太刀を振りかぶる。
 おそらく鬼姫からは数に甘えた白蛇が大胆な攻撃をして大きな隙を晒したように見える筈だ。
 少々大袈裟すぎるせいで罠だと思われる可能性が——

(いや、むしろ鬼姫ならその罠に飛び込んできますよね)

 釣れた。
 鬼姫はニヤリと笑って刃先をこちらに向けた。
 鋭い速度で放たれる突きがこちらに迫ってくる。
 それを見て白蛇は両手に持っていた刀を捨てた。

「かかりましたね」

 鬼姫の表情に僅かに困惑が混じる。
 だがそに突きは止まる事なく白蛇を貫いた。
 白蛇は鬼姫の右手にしがみついた。
 捨て身の一手、その一手は鬼姫の行動を一瞬だけ止めた。
 
「なるほどのぅ」

 全てを察したようだった。
 この隙をつける骸骨はいない、距離が離れ過ぎていたり鬼姫に剣を弾かれ体制を崩していたりといったようにだ、ただ一体を除いては。
 その一体は白蛇達の影に隠れて鬼姫に一撃を喰らわすためだけに待ち続けていたその一体だった。
 その一体は剣をおおきく振りかぶって、鬼姫に叩きつけた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

『ミッドナイトマート 〜異世界コンビニ、ただいま営業中〜』

KAORUwithAI
ファンタジー
深夜0時——街角の小さなコンビニ「ミッドナイトマート」は、異世界と繋がる扉を開く。 日中は普通の客でにぎわう店も、深夜を回ると鎧を着た騎士、魔族の姫、ドラゴンの化身、空飛ぶ商人など、“この世界の住人ではない者たち”が静かにレジへと並び始める。 アルバイト店員・斉藤レンは、バイト先が異世界と繋がっていることに戸惑いながらも、今日もレジに立つ。 「袋いりますか?」「ポイントカードお持ちですか?」——そう、それは異世界相手でも変わらない日常業務。 貯まるのは「ミッドナイトポイントカード(通称ナイポ)」。 集まるのは、どこか訳ありで、ちょっと不器用な異世界の住人たち。 そして、商品一つひとつに込められる、ささやかで温かな物語。 これは、世界の境界を越えて心を繋ぐ、コンビニ接客ファンタジー。 今夜は、どんなお客様が来店されるのでしょう? ※異世界食堂や異世界居酒屋「のぶ」とは 似て非なる物として見て下さい

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

盾の間違った使い方

KeyBow
ファンタジー
その日は快晴で、DIY日和だった。 まさかあんな形で日常が終わるだなんて、誰に想像できただろうか。 マンションの屋上から落ちてきた女子高生と、運が悪く――いや、悪すぎることに激突して、俺は死んだはずだった。 しかし、当たった次の瞬間。 気がつけば、今にも動き出しそうなドラゴンの骨の前にいた。 周囲は白骨死体だらけ。 慌てて武器になりそうなものを探すが、剣はすべて折れ曲がり、鎧は胸に大穴が空いたりひしゃげたりしている。 仏様から脱がすのは、物理的にも気持ち的にも無理だった。 ここは―― 多分、ボス部屋。 しかもこの部屋には入り口しかなく、本来ドラゴンを倒すために進んできた道を、逆進行するしかなかった。 与えられた能力は、現代日本の商品を異世界に取り寄せる 【異世界ショッピング】。 一見チートだが、完成された日用品も、人が口にできる食べ物も飲料水もない。買えるのは素材と道具、作業関連品、農作業関連の品や種、苗等だ。 魔物を倒して魔石をポイントに換えなければ、 水一滴すら買えない。 ダンジョン最奥スタートの、ハード・・・どころか鬼モードだった。 そんな中、盾だけが違った。 傷はあっても、バンドの残った盾はいくつも使えた。 両手に円盾、背中に大盾、そして両肩に装着したL字型とスパイク付きのそれは、俺をリアルザクに仕立てた。 盾で殴り 盾で守り 腹が減れば・・・盾で焼く。 フライパン代わりにし、竈の一部にし、用途は盛大に間違っているが、生きるためには、それが正解だった。 ボス部屋手前のセーフエリアを拠点に、俺はひとりダンジョンを生き延びていく。 ――そんなある日。 聞こえるはずのない女性の悲鳴が、ボス部屋から響いた。 盾のまちがった使い方から始まる異世界サバイバル、ここに開幕。 ​【AIの使用について】 本作は執筆補助ツールとして生成AIを使用しています。 主な用途は「誤字脱字のチェック」「表現の推敲」「壁打ち(アイデア出しの補助)」です。 ストーリー構成および本文の執筆は作者自身が行っております。

聖女を追放した国は、私が祈らなくなった理由を最後まで知りませんでした

藤原遊
ファンタジー
この国では、人の悪意や欲望、嘘が積み重なると 土地を蝕む邪気となって現れる。 それを祈りによって浄化してきたのが、聖女である私だった。 派手な奇跡は起こらない。 けれど、私が祈るたびに国は荒廃を免れてきた。 ――その役目を、誰一人として理解しないまま。 奇跡が少なくなった。 役に立たない聖女はいらない。 そう言われ、私は静かに国を追放された。 もう、祈る理由はない。 邪気を生み出す原因に目を向けず、 後始末だけを押し付ける国を守る理由も。 聖女がいなくなった国で、 少しずつ異変が起こり始める。 けれど彼らは、最後まで気づかなかった。 私がなぜ祈らなくなったのかを。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

処理中です...