ネクロマンサー異世界旅行記

エンペラー

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第二十五話

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 叩きつけられた剣が砕けて宙を舞う。

「クックック……カカッカッカッカ……楽しい! 楽しいぞお主よ!    なんとなんと楽しいのじゃ!」

 鬼姫は目を輝かせながら嬌声を上げる。
 その楽しそうな雰囲気とは裏腹にその戦闘力は格段に跳ね上がっていた。
 角を生やし、全身に強化魔法が駆け巡らされている。

「そうじゃのぅ、こんなに楽しませてくれた礼じゃ」

 刀を一振りする。
 ただの素振り、その刀が周囲の空気を押し退けて刀が走る。
 何にも触れずただ数メートル動いただけ。
 ただそれだけの行動で生じた暴風は白蛇達を壁に叩きつけ、白蛇以外の人型を全て魔力のチリへと変えた。

「風圧だけで……この威力ですか」
「妾の本気、その鱗片を見せてやろう」

 刀をゆるりと構えた。

「この刀は妖刀じゃ、お主のそれが毒の刃を持つようにこの妾の刀その能力は今まで吸った血を消費して身体能力を大幅に引き上げる」

 赤い雪の結晶のようなものが鬼姫の刀の刃周辺を漂い始める。

「妾の角に身体強化魔法、そして妖刀の力を使ったその速度は生物最速を誇る」

 集中しなくても白蛇にはわかった。
 今までとは次元の違い魔力濃度。
 コールタールの海に沈んだのかと錯覚するほど、濃く暗い圧倒的な魔力がこの部屋を埋め尽くす。
 
「いくぞ」
「どうぞ」

 白蛇もゆっくりと刀を構えた。
 構えたところできっと対処のしようもないんだろう。
 そんな事はわかっている、でも挑みたくなった。
 超えなければならないその人の実力を見てみたくなったのだ。
 刀を持つ手に自然と力がこもる。
 それは僅かな違和感から始まった。
 冬の寒さで感覚が薄れたような、そんな感覚だった。
 その違和感は少しの冷たさに変わった。
 優れた刃物と優れたその持ち主が合わさると、一瞬んではあるが、人間は斬られたことに気づけない。
 まさにそれだった。

「斬ったぞ」

 白蛇の後ろから鬼姫の声が聞こえた。
 力が入らない、鬼姫の方に向こうにもうまく体が動かないのである。
 振り返ろうとすると、視点が地に落ちる。

(見るどころか、斬られたことにも数瞬間の間気づけなかった。それもただ1回斬られた程度ではない正確な数は分からないが少なくとも数回、ヘタをすると10回以上の斬撃を浴びせられたのだろう)

「どうじゃ? 妾の本気は」
「ッッ……」
 
 声は出なかった。
 肺にも声帯にもその口はつながっていないのだから、当然である。

「あー、すまん。治るまで待ってやろう」

 白蛇の血が触手のように動き、散らばった肉片を引き寄せる。
 肉と肉をつなげ、失われた肉は血が変化することで補っていく。
 十数秒かけて傷を全て修復させた。

「……狡くないですか? その妖刀」
「コレは確かに強いがコスパは最悪じゃぞ、この一撃を放つだけで相当な血を使った。お主のその『孤毒』の方がこすぱが良い。まぁ……ようは使い方じゃぞ」
「なるほど」
「どうじゃ? これ以上続けるか?
「勘弁してくださいよ」

 ◇
 
 数ヶ月が経った。
 人間不思議なもので、バラバラになっても治る体を手に入れ鬼姫について行って戦場に転がり込んで魔法の修行をする。
 こんな訳のわからないこの暮らしにも慣れてきた。
 戦場に慣れてきた辺りで仕事は夜勤が増えてきた。
 なぜ夜勤が増えた理由は大きく2つある。
 一つ目は魔導人形の性質にある。
 魔導人形はカメラを中心にして索敵を行うのだが、夜の方が見つかりにくいと言う戦略的な理由。
 夜だろうと白蛇の魔力を探る行為になんの支障もきたさないし、レミは猫の獣人なので夜目が効く。
 そのため夜は白蛇達だけをを隠す隠れ蓑として機能するのだ。
 もう一つの理由はレミの修正にある。
 先ほど説明したとおりレミは猫の獣人である。
 猫は夜行性でありその習性はレミにも適応される。
 もちろん人間の要素も強いので無理やろ朝活動する事は可能だが、なるべくベストな状態で活動できた方が良いと考え夜間の行動が多くなったのだ。
 朝日は今日も昇る。
 人と機械が死んだその街を朝日は肯定も否定もせず平等に照らす。

「さて、今日の仕事はもう終わりですね」

 日が昇ったのを見て白蛇は行った。

「そうだにゃぁー、いつ見てもあさひは綺麗だにゃぁ」
「そうですね、自然の偉大さには驚かされるばかりです」
「なんだか老人みたいにゃこと言うにゃ」
「鬼姫さんが移りましたかね」

 そう言って白蛇は笑ったよカプカプ笑ったよ。

「にゃぁ白蛇? 今日このあと暇かにゃ?」
「そうですね、暇といえば暇ですよ」
「じゃあさレミとさ……デートしにゃい?」
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