異世界日帰りごはん 料理で王国の胃袋を掴みます!

ちっき

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連載

女王と海と天ぷら祭り!

「いらっしゃい!チハルちゃ~~~ん♪」
 マリーナの待つ部屋に入ると、マリーナは千春に抱きついた。

「こんにちは♪遊びに来ました♪」
「いくらでも楽しんで行ってちょうだい♪」
 ニッコニコのマリーナに千春も笑みを零す、だがその姿を見て固まる冒険者面々。

「あ、こちらはジブラロールの冒険者です。」
 千春が言うと、ミシェールは貴族の礼で挨拶を交わす。

「ミシェール・トレヴァーと申します、マリーナ・フリエンツ女王陛下、お見知りおきを。」
 ミシェールが挨拶をすると、ユーリン、シャルルは微笑みながら挨拶する。

「マリーナ様お久しぶりです♪」
「お久しぶりです♪」
 2人は軽く挨拶をする、ミシェールはギョッとした目で2人を見るが、マリーナは2人の手を取る。

「やっと来てくれたわね♪」
「遠いんですもん。」
「お仕事もあるんで。」
「飛空艇か飛行島に乗って来れば良いのに、あなた達なら妖精達に頼む事も出来るでしょ?」
「色々あるんですよぉ。」
 ユーリンは苦笑いで答える、冒険者の仕事、そして2人は犯罪ギルドの方でも仕事をしていた、結構忙しかったのだ。

「後ろの方はパーティーの仲間ね、ジブラロールで見た事あるわ。」
「あ、どうも、パトリスです。」
「トリスです。」
「ガーランです、よろしくお願いします。」
 3人は挨拶を交わす、マリーナは微笑み頷くと千春に話しかけた。

「それで、何をするの?お買い物?」
「買い物と海鮮を食べたいなーって思いまして。」
「そう、それじゃ少し待っててくれる?今ティスが獲りに行ってるから。」
「・・・え?獲りに?」
「ええ、チハルちゃんが来たと聞いてテンプラの材料を獲りに行ったわ。」
「あー、そう言う事ですか♪」
「遊びに来たのに料理させるのは悪いでしょって言ったのよ?」
「あははは♪自分で料理するつもりだったし、大丈夫ですよ、でも港には行きたいですね。」
 千春とマリーナが話をしていると、大きな鳴き声が響く、千春は窓の方を見ると、空飛ぶクジラが沢山飛んでいた。

「あらあら、皆あつまって来ちゃったわ。」
「ティスケリーさんの旦那さんとお父さんですよね。」
「ええ、みんなチハルちゃんのテンプラ目当てね。」
「それじゃ沢山作りましょうかねー♪」
 千春はそう言うと腕まくりをする、当たり前の様に話が進むのをミシェールは不思議そうにしていた、そして問いかける。

「チハル王女殿下、料理をされるのですか?」
「うん、ミシェールさん天ぷら食べた事有ります?」
「いや、どんな料理なんでしょうか。」
「・・・いつもの様に話していいのに。」
「いえ、女王殿下の前で御座いますので。」
「マリーナさんは気にしないよ?ねぇマリーナさん。」
「チハルちゃんが良いと言うのなら何も問題無いわ。」
 マリーナもそう答えると、ミシェールは頭をかきならがら頷く。

「わかった、それじゃいつもの様に話すとするよ、で、料理するのか?」
「うん♪天ぷらに天丼、かき揚げに唐揚げ♪おいしいよ~ん♪」
 どれもきいた事がない料理にミシェールは首を傾げる、しかし狼の牙の野郎どもは今にもよだれが落ちそうだった。

「それじゃ早速準備しよー♪今から作ればお昼ご飯にちょうどいいっしょ♪」
 ウッキウキな千春がそう言うと、マリーナが扉を開ける。

「それじゃ行きましょうか。」
 マリーナの言葉に、またもやミシェールが驚く。

「マリーナ女王殿下が案内されるのですか!?」
「?」
 ミシェールに言われマリーナはキョトンとした顔で頷く。

「ええ、そうだけれど?」
 マリーナの言葉に千春は笑いながら答えた。

「マリーナさん、普通は女王様が案内とかしませんよ。」
「聖女で王女のチハルちゃんが料理するのに?」
「・・・私は趣味ですもん。」
「私もチハルちゃんのごはんを食べるのが趣味なのよ♪」
「んじゃ問題無いですね♪」
 納得する千春、だがミシェールは意味が解らず黙って後ろを付いて行くことにした。


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「あなた達!かたっぱしから魚介を獲って来なさい!」
 港の先端に仁王立ちするティスケリーは、海から顔を出している人魚達に声を上げる。人魚達は頷き海に潜ると、次々と魚介類を手に上がって来る。

「ティスケリー様、海鮮でしたら街にも用意出来ますが・・・」
 港を仕切る海運ギルドの男が話しかける。

「新鮮な物が良いでしょう?」
「それは・・・そうですが。」
「チハルの料理よ、食材は新鮮で良い物を準備するのが筋ってものでしょう?」
「は、はぁ。」
 男は困ったように返事を返す。

「ちゃんとお金は払うわよ。」
 フンッと鼻で息を吹く、人魚達はその間にも魚介類を籠に入れて行く、セイレーン達はその籠を入れ替え、沢山の海鮮を運び出す。

「テンプラ・・・あぁチハルのテンプラ・・・」
 海鮮を見ながら呟くティスケリー、普段は海神とも言われ、海の民に慕わられている、もちろんフリエンツの民からもだ、だが今は・・・

「ティスケリー様。」
 セイレーンの騎士がティスケリーに話しかける。

「なに?」
「・・・口元が。」
 セイレーンに言われ思わず口を拭くティスケリー。

「ちょっと想像したら垂れちゃったわ。」
 涎を拭くティスケリー、その姿は海神でもなんでもない、ただの食いしん坊お姉さんだった。

「ほら!そこの子!その貝は沢山獲って来なさい!貝柱が美味しいのよ!」
「はいっ!!!」
 人魚は返事を返し直ぐに海に潜る、ティスケリーはウンウンと頷きながら指示を続けた。


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「リクニスさんおひさしぶりー!」
「チハル様!お久しぶりです!」
 料理長のリクニスは嬉しそうに千春へ挨拶を返す。

「厨房借りても大丈夫です?」
「もちろんで御座いますとも!お手伝いさせて頂ければ!」
「お願いします、食いしん坊が沢山居ますからね、私達だけじゃ多分手が足りないので。」
 千春はそう言うとエプロンを身に着ける、横では頼子やサフィーナ達も準備を始める。

「チハルちゃん、私も手伝うよ。」
「わたしも♪」
 ユーリンとシャルルが声を掛ける、千春は頷き、アイテムボックスからエプロンを取り出すと2人に渡す。

「はい、それじゃ天ぷらの衣を作りましょうかねー♪」
「小麦粉と卵と冷水だっけ?」
 頼子が言うと、千春は頷く。

「多分相当作る事になるから、大量に準備しておこう。」
「天ぷらばっかり食べて気持ち悪くならないのかな。」
「ティスケリーさんはならないんだよなぁ。」
 千春は笑いながら答えると、ジブラロール産の最高級小麦粉を取り出した。

「準備良いじゃん。」
「そりゃこっちに来たらティスケリーさんにロックオンされるの分かってたし♪」
「まぁそうだわなぁ。」
 2人はケラケラ笑いながら天ぷらの準備を始めた。


-------------------------


「パトリスだったか?」
 ミシェールはテーブルに座りパトリス達と話す。

「はい、なんか今回便乗しちゃって申し訳ないっす。」
「いや、君達を誘ったのはチハル王女殿下の采配だ、問題無い。」
「ミシェール様はこの依頼で白金級になるんですよね。」
「ああ、別に俺は上がらなくても問題無いんだが、狼の牙はこの依頼で金級か。」
「そうです、貴族の依頼を幾つかこなす必要があったのでコレでクリアになりますね。」
「貴族の依頼は信頼と実績を伴う、大事なミッションだ、金級以上に上がる為には必要なスキルでもあるからな。」
 ミシェールがそう言うと、3人も頷く、するとミシェールは顔を近づけ問いかける。

「ところで“テンプラ”って何だ?」
「テンプラは魚や貝、野菜や肉を揚げた料理です。」
「油煮か。」
「油煮とは違いますよ、食べたら分かります。」
「ジブラロールでも食べられるのか?」
「はい、チハルさんの旅館に泊れば夕食で出ますね。」
「・・・旅館?」
「はい、高級宿屋だと思って貰えれば。」
「あの王女は宿屋までやってるのか。」
「ただの宿屋じゃないっす、常に予約が入ってますから貴族でも簡単には泊まれませんよ。」
 パトリスは顔を近づけ話す。

「・・・一度行ってみたいな。」
 ポツリと呟くミシェールにガーランが言う。

「チハルさんに言えば一部屋くらい融通してくれるんじゃないっすか?」
「そうなのか?」
「はい、ユーリンとシャルルはたまに泊ってるらしいんで。」
「ズルいよなあいつら。」
「金も持ってるからな・・・」
 野郎3人はそう言うとションボリと見つめ合う。

「・・・よし、これも何かの縁だ、俺が宿を取れたらお前達も招待しよう。」
「良いんですか?!」
「本当ですか?!」
「それは嬉しいです!」
 男4人はテーブルを囲みコソコソと話す、だが後日千春から“昇級プレゼント”として宿泊券を貰えるとは思ってもいなかった。


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