異世界日帰りごはん 料理で王国の胃袋を掴みます!

ちっき

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ミスリルを断つ刃!

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「なんか人多くね?」
 千春は庭を見て呟く、庭には騎士団、竜騎士団、魔導師団が集まっている、そして何故かエンハルトとミシェールが指示を飛ばしていた。

「エーデルさん曰く、聖女が揃って出掛けるからこれでも少ないって言ってたよ。」
 美桜は騎士団と竜騎士団に話をしているエーデルを見ながらニヤニヤしていた。

「ホーキンさんも言ってたよ。」
 ジュースを飲みながら答える麗奈、皆はのんびりと庭に目をやる。

「ヨリさん、皆さんの準備は大丈夫ですか?」
 アリンハンドが庭から声を掛ける、頼子は頷き皆を見ると、皆も頷く。

「って言っても私達は何するわけでもないわけで~♪」
「戦力外通告うけてますしおすし。」
「頑張るのはこの子達だし~。」
 美桜は膝の上で丸まる子狐姿のコンを撫でる。

「がんばります!」
 コンは嬉しそうに答える。

「がんばれ~、さっきチハルがご褒美準備してたからね~♪」
「お酒ですか?」
「そだよー♪」
 美桜の言葉にルプもニコニコだ。

「ふっ、俺達が本気を出せば罠なんぞ全て破壊してやる。」
「ルプぅ、破壊したらダメだって。」
 千春はルプに念押しするが、ルプは嬉しそうに答える。

「壊さなければ通れないだろう。」
「まぁそうかもだけど・・・ほどほどにしないとアリンが泣くよ?」
「俺達を呼ぶって事はそれくらい想定内だろ。」
「・・・まぁ、遺跡が無くならない程度にしてよね。」
 千春はそう言うと立ち上がる、外には既に準備が終わり、ドラゴンの持つゴンドラに騎士団や魔導師団が乗り込み始めていた、するとエンハルトが千春に声を掛けて来た。

「チハル、準備が終わった者達は先に行かせている、現地には1時間後に集合で良いか?」
「フェアリーリングで皆行けばいいのに。」
「人数も多いからな、それに探索が終わって帰りが困るだろう。」
「帰りもフェアリーリング使えば?」
「有事の際にこの移動を覚えておけば便利だろう、訓練も兼ねてるからな。」
「そうなのね、まぁ良いけど、それじゃ1時間後に現地了解~♪」
 頷く千春、そして並んで立つミシェールを見る。

「ミシェールさんも行くの?」
「ああ、この前まで冒険者だったんだ、遺跡に入った事もある、経験者は必要だろ?」
「罠を見つけたり出来るの?」
「それは彼女の仕事だな。」
 ミシェールが指をさす、そこには狼獣人のルクレツィアが居た。

「あー!ルクさん♪」
「やっほ♪チハルちゃん♪」
「お手伝いお疲れ様です♪」
「ルプ様と一緒にお仕事だもの、気にしなくて良いわ、それに騎士団のお仕事だもの♪」
 嬉しそうに答えるルクレツィア、だが千春は2人の持つ剣を見る。

「2人ともミスリルソード?」
「ええ、そうよ。」
「ああ。」
「・・・オリハルコンソード持たせたいな。」
 千春は呟く、オリハルコンは手持ちにある、ミシェールのブロードソード、ルクレツィアのレイピアよりも幅広だが細身の剣を見つめる。

「それでミスリルゴーレム切れます?」
「私の剣では無理ね。」
「俺の剣でもミスリルゴーレムは無理だろうな。」
「デスヨネー。」
 千春はそう答えると、部屋に戻り扉を開ける。

「おかぁさーん。」
「なに?」
「えいっ!って剣作れる?」
「作れるわよ?」
「ミシェールさんのは幅広い剣、ルクレツィアさんのは細身の剣・・・この形で作れないかな?」
「良いわよ♪」
 春恵は目を瞑る、そして手を広げながら目を開け、呟く。

「えい。」
 ポンっと現れるブロードソード、それをテーブルに置くと、もう一度手を広げ、同じ様に細身の剣を作り出した。

「はい、コレで良い?」
 ルムフート鉱石で出来た煌びやかな剣を二本千春に渡す。

「ありがと♪」
 千春は剣を手に取る。

「・・・重っ!!!」
「それはそうよ、鉄よりも軽いけれど、ミスリルより重たいのよ?」
「こんなの振り回してんの!?どんくらい重いのコレ。」
「ミシェールさんの方は3㎏くらいね、ルクレツィアさんの方は1㎏くらいよ。」
「・・・おぉ、これで鉄より軽いんだ。」
「鉄の比重は水の7.85倍、ミスリルは6.59倍、オリハルコンは8.32倍、ルムフート鉱石は7.23倍の重さよ。」
「オリハルコンって鉄より重いんだ・・・包丁持ってて気づかなかった。」
「包丁は薄いもの、そんなに感じないのは当たり前でしょ。」
 呆れたように答える春恵に千春は剣を持ち上げる。

「ありがと!おかぁさん♪」
 千春は剣を持って部屋を移動する、そして庭に行くと2人へ剣を渡す。

「はい、こっちがミシェールさん、こっちはルクさんね~♪」
「・・・なんだこれは。」
「え?」
「えっと、おかぁさんに今作ってもらった剣♪この世界で一番硬い鉱石だよ♪」
「そうなのか・・・」
「綺麗・・・」
 2人は透明掛かった綺麗な剣を手に取り見つめる。

「これでミスリルゴーレム出ても大丈夫だね♪」
 千春が言うと、ミシェールは不安そうに呟く。

「・・・女神様の剣なら切れるかもしれないな。」
「どうかしら、私の技量で切れれば良いのだけれど。」
 2人は不安げに呟く、それを見て千春は首を傾げながらエンハルトを見る。

「切れないの?」
「2人なら切れると思うが・・・」
 エンハルトが答えると、エーデルが答える。

「チハル様、固ければ切れると言うものでもないのですよ。」
「そうなの?エーデルさんとホーキンさんは切ってたから、固いと切れると思ってたんだけど。」
「確かに切れますが、それはザイフォン師の剣だからこそと言う事もあります。」
 エーデルの言葉に千春が首を傾げる、するとエンハルトが話を続ける。

「固ければ折れやすい、チハルのオリハルコン包丁でも石を切れば刃がかけるだろう?」
「・・・石切った事ないからわかんないけど、そうなのかな。」
 千春は心配そうに呟く、すると頼子が横から声をかける。

「切ってみたら良いじゃん。」
 そう言うと頼子は影収納からミスリルの塊を取り出す。

「はい、試し切り♪」
 頼子はテーブルの上にミスリルの塊を置く、ラグビーボール程の楕円形の塊だ、それを見たミシェールはエンハルトを見る、エンハルトは頷く、それを見てミシェールは剣を構える、そしてフッと息を吐き一閃する。

キンッ!

 甲高い音が一瞬響くと、ミスリルは半分に切れ落ちた。

「切れたー♪やったね♪」
 千春が喜ぶ、ミシェールは切った剣を触りながら状態を確認する。

「刃こぼれすらしてない・・・凄いな。」
「はい!次~♪」
 頼子は切れたミスリル鉱石を収納すると、次のミスリルを取り出しテーブルに置く、ルクレツィアは細身の剣を手にミスリルの前に立つと構える。

「ルク、それが切れたらデートしてやるぞ。」
 ルプは面白そうに言うと、ルクレツィアはパァ~っと笑顔になり頷く、そして剣を構え、一閃する。

キィン!

 甲高い音が鳴り響く、そしてミスリルが二つに分かれた。

「切れました!ルプ様♪」
 ルクレツィアは嬉しそうに飛び跳ねる、そして剣を見ながら呟く。

「・・・これも刃こぼれしてないわ。」
 ルクレツィアは剣を見て言うと千春に問いかけた。

「チハルちゃん、これ何か魔法掛けてる?」
「さぁ?掛けてる感じしなかったけど。」
 千春が呟くと、後ろから春恵が答える。

「強度強化付けてるわよ♪」
「ただでさえ固いのに?」
「だって固い剣は折れやすいってタイちゃんが言ってたもの。」
「どれくらい固いの?」
「ん~、人の力では折る事は出来ないくらい?」
「意味わかんない。」
 千春と春恵の言葉を聞き、ミシェールとルクレツィアは膝をつく。

「女神様、この剣に誓い、聖女チハル様を御守りいたします。」
「女神ハル様、ありがとうございます、大事に致します。」
「よろしくね♪よかったわね千春♪」
「・・・あー、うん、よかったよかった、これで私も安心だー。」
 なんとなく思いついただけの千春は棒読みで答えた。





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