異世界日帰りごはん 料理で王国の胃袋を掴みます!

ちっき

文字の大きさ
上 下
883 / 904
連載

エイクラーの魔物料理!

しおりを挟む
「・・・うん!固い!」
 千春はドラゴトルムの肉を塩焼きにして口に入れ、感想を言うと、頼子達も食べてみる事にした。

「・・・んー、まぁ固いっちゃ固いけど、言う程じゃなくない?」
 頼子はモグモグと口を動かしながら答える、美桜も頷き答える。

「ほら、地鶏とかの炭火焼あんじゃん、あんな感じ?」
「地鶏と言うか、鶏の親鳥ってあるじゃん、アレくらいじゃない?」
 麗奈も同じくモグモグと味見をしながら言う。

「唐揚げにしてもイケそうだね。」
「臭味も無いし、淡泊な感じだよね。」
「真っ赤だけど、火を通したら白っぽくなるんだね~。」
「他に調理法無いの?」
 皆はそれぞれの感想を言いながら、真っ赤な肉を見つめる、すると智美達が戻って厨房へ顔をだした。

「あら、解体終わったの?」
「まだですけど、肉だけ貰って来ました♪」
「そのお肉?真っ赤ね、何の肉?」
「あのでっかい亀です。」
「へぇ~、それは味見用?」
「はい。」
 智美は千春に聞くと、焼いた肉を口に入れる。

「・・・ん~、筋じゃなく肉質が固めなのね。」
「お母さん、この固い肉食べやすく出来る?」
「そうねー、これはこれで色々作れそうだけれど、柔らかくするならお酒に漬け込むか、ヨーグルトとか酢、塩麴とか舞茸かしら。」
 智美が説明をしていると、美咲と茜、真冬、そして春恵も厨房へやって来た。

「おかぁさんお話おわり?」
「ええ、何作ってるの?」
「解体してもらったお肉の味見。」
 千春は菜箸で肉を摘まみ、春恵の口に入れる。

「・・・歯ごたえ有るわね。」
「うん、亀の肉、ちょっと固いんだよね。」
「そうねぇ。」
 春恵はそう言うと真っ赤な肉を見る。

「あら、千春、この肉こっち向きで切ったの?」
「うん。」
「肉の筋が縦よ?」
「え?こっちじゃないの?」
「ほら、この断面。」
「あー・・・。」
 千春は真っ赤な肉をペチペチと叩くと、薄くスライスする。

「ヨリ、これで焼いてみて。」
「ほいほい、塩コショウ?」
「ういっ。」
 千春は数枚スライスすると頼子に焼いてもらう、薄くスライスした肉はすぐに焼け、皆はそれを口に入れる。

「おー、さっきより柔らかい・・・気がする!」
「確かに柔らかくなってるけど、それでも固いね。」
「牛肉と比べるからじゃん?」
 千春、麗奈、美桜はモグモグと試食しながら感想を言い合う、それを見ていた美咲が美桜に話しかける。

「他の魔物は?」
「あのでっかい魚も解体してもらったよ。」
「赤い牛は?」
「それもあるよ。」
 美桜が言うと千春はアイテムボックスからレッドホーンブルの肉を取り出す。

「これがレッドホーンブル、略してレッブル肉です。」
 千春は楽しそうに言う。

「赤身が凄いわね。」
 美咲が言うと、智美も頷く。

「それで?今日は魔物料理でご飯作るのかしら。」
 千春は智美に頷く。

「その予定です、久しぶりに蟻もゲットしたから、しゃぶしゃぶはやりたいなって思ってます。」
「あら良いわね~♪それじゃレッブルも薄く切っちゃう?」
「はい、あと、デカ魚の刺身も美味しかったですよ。」
「そうなの?あれだけ大きいと大味で美味しくないと思ってたわ。」
「それがですねぇ~。」
 千春はニヤニヤと笑いながらメガロヴォイドのサクを取り出すと、刺身で切りさらに盛り付ける。

「はい、醤油はこれで。」
 ワサビ醤油を横に置くと、ママさんズは刺身に手を付ける。

「あら!美味しい♪」
「へぇ~こんな味なのね。」
 智美と美咲が言うと、茜と真冬も頷く。

「おいしいわ。」
「ええ、でもそれ以上に驚いたわ、チハルちゃん料理上手なのね。」
 真冬は手際よく刺身を作った千春を見る、千春はニパッと微笑み春恵を見る。

「ほめられた♪」
 嬉しそうに千春は春恵に言うと、春恵も微笑む。

「よかったわね♪それじゃ料理するなら私も手伝っちゃおうかしら♪」
 ウキウキな春恵に千春も頷く。

「それじゃ予定通り亀は唐揚げにしまーす。」
「千春、唐揚げは良いけど固いまま料理すんの?」
 千春に頼子が問いかける。

「んー、塩麴ないからなぁ、ヨーグルトも無いんだよなー。」
「あら、それじゃ玉ねぎはどう?」
 春恵は千春に言うと、アイテムボックスから玉ねぎを取り出す。

「玉ねぎでも柔らかくなるんだっけ?」
「なるわよ、すりおろした玉ねぎに浸け込めば柔らかくなるわ。」
「そっか、玉ねぎすりおろすんだ・・・。」
 千春は玉ねぎを受け取るとポツリと呟く。

「玉ねぎのすりおろし・・・。」
 調理場に置いてある調理器具から、すりおろし器を手にする、そしてチラッと侍女を見ると、モリアンと目が合う。

「モリーちゃーん。」
「はーい!」
「もうしわけないんだけれどもぉ!」
「・・・すりおろしですかぁ。」
「うん。」
「がんばりますぅぅぅ!!!」
「よろしく!」
 千春は玉ねぎをモリアンに押し付けると、次の作業に取り掛かる。

「レッブルのスライスはミオママがやってくれるから、他の料理作るかな。」
 レッドホーンブルの肉を見ていると、頼子が話しかけてきた。

「ローストビーフ?」
「んー、ローストビーフは結構作ってるし、新しい料理作りたいなーって思ってさ。」
「牛肉の赤身って他に何があるの?」
「ビーフシチューとかあとはワイン煮込みとか?」
「ワイン煮込み良いじゃん、作った事ないよね?」
「無いね。」
「作ったらいいじゃん。」
「塊じゃなければ時短も出来るか、よし!ワイン煮作ろう。」
 千春が言うと、頼子も手伝い準備を始める。

「私も手伝っていいかしら?」
 茜が言うと、ママさんズは頷く、真冬も一緒に手伝いを始める、美桜は美咲の手伝いを、麗奈も茜たちの手伝いを始め、料理が次々と作られて行く。

「チハルちゃん、クラーケンある?」
「ありまーす。」
 智美に言われ千春が言うと、サフィーナがブロック状態のタコを取り出す。

「これ何?」
「タコの足の一部です。」
「大きいわね!」
 思わず突っ込む智美。

「思った形じゃ無かったけど、これだけ大きいならブツ切りで唐揚げも良いわね、チハルちゃん、亀の唐揚げと一緒にやっちゃうわね。」
「はーい!お願いしまーす!」
 唐揚げと言われ千春はモリアンを見る。

「・・・モリー。」
「はあああああいぃぃぃぃぃ!」
 ボロボロと涙を流しながらボウルいっぱいに玉ねぎをすりおろしたモリアンが返事を返す。

「おつかれ。」
「がんばりばぢだぁぁぁ。」
「うん、今日のMVPだよ。」
 千春はすりおろし玉ねぎを受け取ると、一口サイズにされたドラゴトルムの肉を浸けこむ。

「これどれくらい漬け込んだらいいのかな。」
 千春が言うと、春恵が答える。

「牛肉なら冷蔵庫で2~3時間って所だけど、これだとどれくらいかしらね。」
「うーん・・・あ、そうだ。」
 ピコーンと笑みを浮かべる千春は名前を呼ぶ。

「アイトネさま~♪」
『はーい!時短魔法ね!』
「あ、そう言う名前にしたんだ。」
『わかりやすいでしょ♪』
 アイトネは軽く答え、玉ねぎに浸けこまれた真っ赤な肉に指を鳴らす。

「おわり?」
『ええ♪もう調理しても良いわよ♪若鳥くらいの柔らかさにしておいたわ♪』
「便利すぎる、一家に一柱、アイトネ調理器。」
 千春の言葉に文句を言う訳でもなく、アイトネは楽し気に皆の料理を見て回る。

「千春、圧力鍋あるけど使う?」
 ワインの準備をしていた頼子が千春に言う。

「うん、塊だと時間掛かるから少し小さくするわ。」
『あら、それも漬け込むの?』
 千春が手にしたレッブルの塊を見てアイトネが問いかける。

「うん、このままだとワインに1~2時間漬け込まないとだから。」
『あら♪それじゃまた時短魔法ね♪』
「その手が有ったあ!!!」
 千春は肉の塊を鍋に入れ、赤ワインをドボドボと流し込みアイトネの前に出す。

「お願いします!」
『えいっ!』
 パチンと指を鳴らすアイトネ、千春は赤身を指で押さえる。

「・・・おおぅ、柔らかくなった気がする。」
 そう言うと千春は圧力鍋に肉を移し、刻んだ野菜や調味料を入れて行く。

「おっけい!」
「ほんと便利だねアイトネ様。」
「自分が食べたいだけだと思うけどね。」
 千春はそう言うとアイトネを見る、アイトネは勿論とでも言うように微笑む。

「千春、魚出してちょうだい。」
「はーいおかぁさん♪」
 楽し気に料理をするママさんズと千春達、そしていい香りが応接室に流れ、ルプ達も今晩の晩酌は楽しみだとワクワクしながら微笑んでいた。






しおりを挟む
感想 2,387

あなたにおすすめの小説

薬師だからってポイ捨てされました~異世界の薬師なめんなよ。神様の弟子は無双する~

黄色いひよこ
ファンタジー
薬師のロベルト・シルベスタは偉大な師匠(神様)の教えを終えて自領に戻ろうとした所、異世界勇者召喚に巻き込まれて、周りにいた数人の男女と共に、何処とも知れない世界に落とされた。  ─── からの~数年後 ──── 俺が此処に来て幾日が過ぎただろう。  ここは俺が生まれ育った場所とは全く違う、環境が全然違った世界だった。 「ロブ、申し訳無いがお前、明日から来なくていいから。急な事で済まねえが、俺もちっせえパーティーの長だ。より良きパーティーの運営の為、泣く泣くお前を切らなきゃならなくなった。ただ、俺も薄情な奴じゃねぇつもりだ。今日までの給料に、迷惑料としてちと上乗せして払っておくから、穏便に頼む。断れば上乗せは無しでクビにする」  そう言われて俺に何が言えよう、これで何回目か? まぁ、薬師の扱いなどこんなものかもな。  この世界の薬師は、ただポーションを造るだけの職業。  多岐に亘った薬を作るが、僧侶とは違い瞬時に体を癒す事は出来ない。  普通は……。 異世界勇者巻き込まれ召喚から数年、ロベルトはこの異世界で逞しく生きていた。 勇者?そんな物ロベルトには関係無い。 魔王が居ようが居まいが、世界は変わらず巡っている。 とんでもなく普通じゃないお師匠様に薬師の業を仕込まれた弟子ロベルトの、危難、災難、巻き込まれ痛快世直し異世界道中。 はてさて一体どうなるの? と、言う話。ここに開幕! ● ロベルトの独り言の多い作品です。ご了承お願いします。 ● 世界観はひよこの想像力全開の世界です。

毒味役の私がうっかり皇帝陛下の『呪い』を解いてしまった結果、異常な執着(物理)で迫られています

白桃
恋愛
「触れるな」――それが冷酷と噂される皇帝レオルの絶対の掟。 呪いにより誰にも触れられない孤独な彼に仕える毒味役のアリアは、ある日うっかりその呪いを解いてしまう。 初めて人の温もりを知った皇帝は、アリアに異常な執着を見せ始める。 「私のそばから離れるな」――物理的な距離感ゼロの溺愛(?)に戸惑うアリア。しかし、孤独な皇帝の心に触れるうち、二人の関係は思わぬ方向へ…? 呪いが繋いだ、凸凹主従(?)ラブファンタジー!

【5月16日取り下げ】会うたびに、貴方が嫌いになる

黒猫子猫(猫子猫)
恋愛
【本作を原案とした長編を、電子書籍化して頂くことになりましたので、令和7年5月16日頃に取り下げとなります。お読み頂き、ありがとうございました】 長身の王女レオーネは、侯爵家令息のアリエスに会うたびに惹かれた。だが、守り役に徹している彼が応えてくれたことはない。彼女が聖獣の力を持つために発情期を迎えた時も、身体を差し出して鎮めてくれこそしたが、その後も変わらず塩対応だ。悩むレオーネは、彼が自分とは正反対の可愛らしい令嬢と親しくしているのを目撃してしまう。優しく笑いかけ、「小さい方が良い」と褒めているのも聞いた。失恋という現実を受け入れるしかなかったレオーネは、二人の妨げになるまいと決意した。 アリエスは嫌そうに自分を遠ざけ始めたレオーネに、動揺を隠せなくなった。彼女が演技などではなく、本気でそう思っていると分かったからだ。

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。

ファンタジー
〈あらすじ〉 信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。 目が覚めると、そこは異世界!? あぁ、よくあるやつか。 食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに…… 面倒ごとは御免なんだが。 魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。 誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。 やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

「次点の聖女」

手嶋ゆき
恋愛
 何でもかんでも中途半端。万年二番手。どんなに努力しても一位には決してなれない存在。  私は「次点の聖女」と呼ばれていた。  約一万文字強で完結します。  小説家になろう様にも掲載しています。

【完結】召喚された2人〜大聖女様はどっち?

咲雪
恋愛
日本の大学生、神代清良(かみしろきよら)は異世界に召喚された。同時に後輩と思われる黒髪黒目の美少女の高校生津島花恋(つしまかれん)も召喚された。花恋が大聖女として扱われた。放置された清良を見放せなかった聖騎士クリスフォード・ランディックは、清良を保護することにした。 ※番外編(後日談)含め、全23話完結、予約投稿済みです。 ※ヒロインとヒーローは純然たる善人ではないです。 ※騎士の上位が聖騎士という設定です。 ※下品かも知れません。 ※甘々(当社比) ※ご都合展開あり。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます

下菊みこと
恋愛
至って普通の女子高生でありながら事故に巻き込まれ(というか自分から首を突っ込み)転生した天宮めぐ。転生した先はよく知った大好きな恋愛小説の世界。でも主人公ではなくほぼ登場しない脇役姫に転生してしまった。姉姫は優しくて朗らかで誰からも愛されて、両親である国王、王妃に愛され貴公子達からもモテモテ。一方自分は妾の子で陰鬱で誰からも愛されておらず王位継承権もあってないに等しいお姫様になる予定。こんな待遇満足できるか!羨ましさこそあれど恨みはない姉姫さまを守りつつ、目指せ隣国の王太子ルート!小説家になろう様でも「主人公気質なわけでもなく恋愛フラグもなければ死亡フラグに満ち溢れているわけでもない至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます」というタイトルで掲載しています。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。