異世界日帰りごはん 料理で王国の胃袋を掴みます!

ちっき

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フィアー侯爵邸で料理するよ!

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「よし・・・やるか。」
 千春は服を着替えエプロンを付けると気合を入れる。

「私はなにしたらいい?」
「他の材料準備してもらって良いかな。」
「そっちは手伝わなくて良い?」
「あー、下茹でのお湯準備してて。」
「りょ~♪」
 千春の前にある牛もつを見ながら頼子は答え、千春は牛もつに粗塩を大量に振りかける、そしてガシガシとモミ洗いを始めた。
 麗奈と美桜は真っ赤な塊肉を手にしながら話す。

「牛の心臓でけぇ~。」
「デカい!グロい!」
「この白い所は取った方が良いのかな。」
「わかんないしとっとこ、不味そうだし。」
 2人は牛ハツの処理をはじめる。

「はい!うちらがやるのはこれ!」
「うっひょ!美味しそう!」
 大愛はそう言うと塊をぺちぺちと叩く。

「これがフィアー牛の霜降り肉かぁ。」
「まだ作り始めてそんなに経ってないらしいから、これからって言ってたね。」
「魔国牛を超えれるのかね。」
「どうだろね、まずはスライスだっけ。」
「すき焼き用と、しゃぶしゃぶ用、あとはステーキ用だね。」
 軽く凍らせた霜降り肉にミスリルの包丁でスライスする大愛、スライス肉を丁寧に並べる青空、それを侍女達は受け取りクーネスがアイテムボックスに収納する作業が始まった。

「ヒマリ、醤油ベース出来たよ。」
「さんきゅー、カノン、こっちの味噌味もOK。」
「塩は?」
「塩は鶏ガラスープと塩だけらしいから、大丈夫だってさ。」
「おっけー、次はニンニクか。」
「結構あるねぇ。」
 籠の山盛りのニンニクを見て日葵が呟く。

「じゃじゃーん!」
 花音は効果音を出しながら筒状の物と取り出す。

「なにそれ。」
「にんにくむききー!」
「なにその青い猫型ロボットみたいな言い方・・・で?それで剥けるの?」
「うん、見てて。」
 花音はニンニクをほぐし、バラバラにすると、筒の中に数粒入れ転がす。

「それで剥けるの?」
「そ、シリコン製のヤツでさー、チハルに渡してたのよ。」
 そう言うと花音はシリコンの筒を手で押さえ数回転がすと、横から皮が剥けたニンニクが転がる。

「おおー!すごっ!」
「ね、便利っしょ。」
「これならすぐ終わりそう、私もやるわ。」
 日葵も同じ様に筒へニンニクを入れるとコロコロ転がす、花音はニンニクの塊をバラバラにしながら作業を続けた。


----------------------------


「こんなもんかな。」
 千春は数回目の水洗いを終わらせ、牛もつをまな板の上に置く。

「出来た?」
「うん、下茹でお願い。」
「おっけー。」
 牛もつの下ごしらえを進める千春と頼子、次々とお湯に入れ、灰汁を取り、牛もつを切っていく。

「これ後片付け大変だねぇ。」
 頼子は千春が下処理したシンクを見ながら呟く。

「脂が凄いね、こんなになるとは思わなかったよ。」
 シンクに纏わりつく牛脂を見て千春は苦笑いだ、しかし侍女達が千春に話しかける。

「大丈夫ですよ、こちらは私がやっておきますので。」
 サリナはニコッと微笑みながら言うと、シンクの掃除を始める。

「ごめんね、お願い。」
 千春はお礼を言いながら手を動かしながらサリナに言うと、サフィーナは魔法でお湯を流し、サリナがあっという間に磨き上げる。

「・・・魔法って便利すぎだよね。」
 一緒に見ていた頼子が呟くと、千春も頷く。

「こっちの常識は地球の非常識だからねぇ。」
「逆もだけどね♪千春はそれで苦労してるし。」
「ヨリはそう言うの無いの?」
「あるよ、でも何も言われないね。」
「そうなの?」
「うん、アリンさんのお母さんがそう言うのは気にしなくて良いって言ってくれるんだよね。」
「ベアトリクスさん優しいもんね~♪」
「千春もじゃん?メグ様めっちゃ優しいじゃん。」
「・・・うん、優しい、楽しんでっていつも言ってくれるね。」
「楽しんで良いんじゃね?」
「ん~~~、でもなぁ~。」
 千春が答えると、頼子はクスッと笑う。

「ベアトリクス様の受け売りだけどさ。」
「うん。」
「貴族の作法や常識は、焦って覚えようとしなくて良いの、大事なのは心の中で相手を尊重する気持ちだって。」
 頼子はベアトリクスの言葉を思い出しながら千春に言う、千春はコクリと頷くと、頼子は続ける。

「あとは自分らしく振る舞う事が、一番美しいって言ってたかな。」
「自分らしく・・・かぁ。」
「私もさ、ちょっと不安だったのよ、周りの目もあるじゃん?」
「それなんだよねぇ。」
「そしたらさ、ベアトリクス様がすっごい優しく笑いかけて言ってくれたんだ。」
「なんて?」
「周りの目なんていつか慣れるわ、それより、あなた自身がどう感じるかが大事、自信を持って、自然に振る舞えば、誰も文句を言わないわ・・・って。」
 ベアトリクスの言葉を千春に伝えながら、頼子は微笑む、あの優しい笑みを思い出し、自分を認めてくれたベアトリクスを思い出しながら。

「優しいねぇベアトリクスさん。」
「うん、滅茶苦茶優しい、過保護なくらいね♪」
「あははは♪」
「千春もそのうち礼儀とか常識も自然に身につくから、無理しなくて良いんだよ。」
「・・・うん。」
「まだ吹っ切れない?」
「皆が優しいからこそ、ちゃんと応えたいって気がしてさ。」
 千春のその一言に、頼子は少しだけ目を細めて、まるで姉のような柔らかな声で言葉を返した。

「うん、分かるよ、応えたいって気持ちは大事、でもね、応えるって、無理して背伸びすることじゃないんだよ。」
「・・・じゃあ、何だろ?」
「そのままの千春でいて、笑っててくれること、それが、きっと一番の“応え”なんだと思う。」
 千春は黙って、頼子の言葉を受け取るように手を止めた。

「ベアトリクス様も言ってた、誰かを守りたいと思うなら、自分が幸せであることが前提なんだって、無理して苦しくなるなら、それは本末転倒でしょ?」
「・・・うん、でも、私がこうして頑張れてるのって、皆がそばにいてくれるからなんだよね。」
「それなら、こっちも千春に笑っててほしいって思ってる、だから、笑って、肩の力抜いてさ。」
 その時、近くで作業をしていたサフィーナがふと視線を向け、静かにうなずいた、親のように見守るそのまなざしに、千春はふと胸が温かくなるのを感じた。

「・・・そっか。私、ちゃんと見守ってもらってるんだね。」
「うん、だから大丈夫、焦らなくていいよ。」
「ヨリ。」
「ん?」
「めっちゃ大人じゃん。」
「そう?」
「うん、凄いなぁ!私も大人になりたあああい!!!」
 急に叫ぶ千春に皆が千春を見る。

「どうしたんチハル。」
「お?ご乱心か?」
「どしたー?はなしきこか?」
「チハルは十分大人だと思うけどね。」
 作業を止め、皆が千春に話しかけて来ると、千春はクスッと笑う。

「はい!ホルモン下ごしらえおわり!そっちはどう!?」
「スープはOKだよーん。」
「他の具材も準備おっけー。」
「もつ鍋以外の準備も出来たよーん。」
 青空達はサムズアップしながら千春に答えると、千春が答える。

「それじゃ、料理を作ってしまいますかー!」
 千春の明るい声に、みんなの手が一斉に動き出す。
 下ごしらえを終えた具材、ぐつぐつと音を立てるスープ、漂う香ばしい匂いに空気が満ちていく。
 鍋の中に集まる素材と想い。
 笑顔と笑い声が重なる中、今夜のごちそうがゆっくりと出来上がっていくのだった。




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