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ガルド城の秘密

第49話-フランソワの両親-

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 注がれたお茶を味わっているとドアが開いた。
 そこから姿を見せた妙齢の男性。細身の体にぴっちりとした軍服のような服。なのに顔つきは垂れ目のせいか服装に合わず優しそうイメージを持ってしまう。

「おかえり、フランソワ。突然でびっくりしたけど、娘の顔が見れて嬉しいよ」
「お父様からの手紙を読みましたので帰って参りました」
「なんだか大人になったような気がするね。前はもっとお転婆だったような気がするのに」
「あなた、子どもは成長するのだから当たり前ですよ。私たちもきっとそうだったのよ」
「そうか! そうだな! 無事に成長してるようで良かった。ところで、ホリナは元気にしているか? 1人に任せて欲しいと最初言っていたが、大丈夫そうか?」
「はい。今日は休んでもらっています。普段働き詰めですので、私が留守にしている間は休息を取るように言っておきました」
「そうか。それならまたお礼を言っておいてくれ」

 この両親からフランソワが生まれて育ったと考えて見ても全く想像出来なかった。
 それほどまでに優しい。こんな2人からいじめっ子で、将来領民を虐げるような振る舞いをするフランソワが生まれるはずないと思うぐらいだ。

「ところで、お二人に話しておきたいことがあります」

 頭の中の考えを吹っ切って、私から場の空気を変えた。
 2人は頷いてこちらを見つめる。私の次に発する言葉を今かと待っているように見える。

「近衛騎士をもう決めました、それに2人。今日はいませんが。いずれご紹介させて頂きます」

 私の言葉が終わっても2人からなんの反応もない。反応できないのか、固まってしまっているようにも見えた。

「聞き間違えだろうか。今なんと?」
「近衛騎士を2人決めましたと」
「ふ、2人? 候補ではなくて?」
「はい。2人、正式な近衛兵です。誓いの祝詞も済んでいます」

 そりゃ。びっくりするよね。伝統ぶち壊しだもんね。
 でもフランソワ父は驚きはするも段々と表情は崩れていった。
 そして笑った。
 口も隠さずに大胆に。横にいたフランソワ母も釣られて笑った。口元は隠しても大いに笑った。

「そうか。流石はソボール領主の娘だ。型破りで結構! 驚きはしたが、これも成長か」
「そうね。原則1人の所を2人も。私にも学生の時にそれだけのことをやり遂げる勇気があればもっと楽しかったかも知れないわね」

 2人の予想外の反応に私の方が面食らってしまう。

「てっきり怒られるかと」
「怒ることはないだろう。むしろ面白い。近衛騎士を2人も抱えると言うことはそれだけ器が大きいと言うことだ。いいことではないか。私は将来フランソワが領主を継いでくれると思うと安心して仕事に取り掛かれるよ」

 そう言うフランソワ父の顔は本当に嬉しそうに見えた。私もいつか親になればこの気持ちが分かるんだろうか。

「ありがとう。私お父さんの期待に応えられるように頑張るわ」
「あぁ、楽しみにしておくよ。今日は泊まって行くんだろう? 夕飯は豪勢にしてもらわないとな」
「ええ。明日の朝また屋敷に戻ろうかと」
「そうか。夕飯の時には、私からも話したいことがあるのでな。今話せたらいいんだが、仕事の方で視察があるものでな。そろそろ戻らないと待たせてしまうことになりそうだ」

 そんな忙しい合間を縫って来てくれたなんて思いもしなかった。

「分かりました。そしたらまた夕飯の時に。お仕事頑張って来てください」

 その言葉を聞いてフランソワ父はそのまま名残惜しそうに部屋を出て行った。
 そして私はこの後数時間程フランソワ母から昔話から始まって最近起きた領地での出来事を聞いた。
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