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ガルド城の秘密

第92話-焔の剣士-

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 突然の事だった。
 私達は3人で先に進むために歩き出した。
 だけどそこで違和感があった。それは足音の数。私達3人以外にも足音がした様な気がした。だけど私は特に気にしなかった。
 すると1番に立ち止まったのは1番後ろにいたバレルさんだった。
 バレルさんの挙動に気づいて後ろを向いた私とユリ、そして私達が振り向く頃にはバレルさんがその大きな身体で私達を庇う様に両手を広げて、私達2人を身体の内側へと入れてくれていた。
 辛うじてバレルさんの背中越しに見えたのは1人のローブを着た男。さっきまでの2人とはまた別人だ。
 手には厚手の手袋、ローブの下は黒の服を着た赤毛の男だ、腰には長剣が指してある。
 その男がこちらに指を指している様に見えた。
 そして力が抜けたかのようにバレルさんの身体が私達に覆い被さった。

「バレルさん!」

 私は密着しているのに大声で呼んだ。そうしないと届かないと思ったからだ。

「フランソワ様、お借りします!」

 私の手にあった短刀を引き抜いてユリはローブの男とバレルさんの間に割って入る。

「投げるのって得意じゃないんだよね。当たったから良かったけどさ」

 間延びした声が聞こえて来る。誰に言うでもなく淡々とつぶやく。

「ところで入り口に同志が1人、ここにもう1人寝てるんだけど、これやったのは君たち?」

 ユリも私も答えない。

「沈黙は肯定と受け取るよ。一応聞いてみるけどそいつはローブを剥ぎ取って着てるだけだよね?」

 質問を聞き流して私はバレルさんを岩陰に移した。息はある、死んではいない。
 背中を見ると左脇腹あたりに短刀が刺さっている。赤く染まったローブが傷の深さを物語っている。

「質問に答えてくれないかな。間違いだったら嫌だし」

 赤毛の男は私達のことなどお構いなしに喋りかけて来る。

「だったらどうしますか?」

 答えを返したのはユリだった。
 震える声を押し殺す様に捻り出した声は微かに枯れている様にも聞こえた。

「会った事もないけど同じ志を持つ者だからね。仇を取らないと」

 不思議なことを言った。『会った事もない……?』今そう聞こえた。仲間じゃないのにここに来たと言う事実が引っかかった。

「仲間では無いと言うのなら何故ここへ? 私達をつけて来たのなら遅すぎますよね。そこに寝転んでいる人達をつけて来たなら、それも遅すぎる。ここを自力で探し当てたんですか?」

 私の疑問をユリが代弁してくれた。ユリが時間を稼いでくれている間に私はバレルさんの手当てに専念できる。
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