来世はきっと。

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出会い

出会い⑤

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藍藤が授業に戻ってから急にあたりが静まりかえる。
(アイツどんだけうるさかったんだよ…)
でも、そんなうるさい奴でもいなくなると寂しいものは寂しい。
俺が極度の寂しがり屋なのかそれとも初めて心を許せた気がする相手だからなのか。
もやもやする気持ちを抱えながらぼーっとしているとついさっきまで耳に響いていた声が聞こえてきた。
『藍藤、問9。』
『はい。財閥解体です。』
『正解。不正解の奴手挙げろ。』
(この声…藍藤?)
窓から教室を覗くとそこにはちょうど席に着く藍藤の姿があった。
けれどもその姿は俺と話していた時とは一変して、とても真面目な顔をしている。
(双子の兄弟?いや、あの顔と声は絶対藍藤な気が…)
俺の脳内に色々な考えが駆け巡った。
あの変わりよう皆の前では猫被ってんのか?
いや、もしかしたら俺の前で猫被ってんのかもしれない…。
だとしたら相当無理させてたんじゃないか…?
本当は俺のこと気持ち悪いとか思ってて………
ネガティブモードに入り、メンタルが削れていく。
もはや泣きそうになっていた。
(あー、無理。ヤバいな。立ち直れるかな…)
「雪君!?大丈夫!?」
「…藍藤?」
「うん。僕だよ。何があったの?」
「なんでっ…まだ昼じゃないじゃんっ」
「雪君の泣いてる姿が見えたから。心配して来ちゃった。」
「見んなっ」
「うん。見ないから、何で泣いてるか話してくれる?」
「じゅぎょっ中にっ、、藍藤がっなんっか…真面目なっ顔…っして、…それっで…あいっふじが…おれのまえでっ、むりしてっるかとっ…おもってっ……」
「え?それでこんなに泣いてたの?」
「うっさい…こっちはっ………うっ…んぁっ」
「息大丈夫?ほら、おいで。」
俺はされるがままに藍藤に膝枕された。
死ぬほど恥ずかしかったが泣いているせいで抗う気力も無くなっている。
「よしよし。大丈夫だよ。」
頭を撫でられ、少し息が落ち着く。
「僕、雪君の前では素だからね?皆の前では優等生として演じてるだけで、無理してる訳じゃないから。」
「…うん。」
「言ってなくてごめんね。不安にさせちゃったね。」
「もういいの。それより頭…。」
「もっと撫でて欲しいの?」
「わざわざ言うなっ」
「あはっ。ツンデレだなぁ。」
「うっせぇばーか。………あれ待って、水着?」
「え?あぁ、うん。次の授業水泳なんだ。」
膝枕をしてもらってる上に薄い水着だったことに気付き、羞恥心が一気に込み上げて来る。
俺は藍藤の膝から飛び退いた。
「あれ?もしかして照れてる?耳まで真っ赤じゃん笑」
「うるさいっ!!」
そんなこんなしていると2限目の始まりを告げるチャイムが鳴る。
「あっ、もう行かないと。……うーん、どうしよう」
「行かねぇの?」
「いや、雪君もついて来る?皆から見えないところで見学になっちゃうだろうけど」
「え?」
「よし!そうと決まれば行こう!」
「はっ!?ちょ、待って!」
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