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第四章 過去を抱いて、未来を掴む

黒水晶の棺2

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「誇り高き常勝軍が、呪いに成り果ててしまっただなんて、お父様も哀しむわ。フレヴン将軍、戦は終わったの。もう眠っていいのよ」
〈エファリュー……〉

 影が微かに震えている。

〈……浅ましきクリスティアの子よ〉
「将軍?」
〈憎き神女の手先め。我らの姫さえ、取り込みおったか〉

 頭上の水晶の一つが、矢のように落ちてきて、アルクェスを穿とうとした。
 咄嗟に飛び退っていなければ、外套の裾を縫い付けられるくらいでは済まなかった。

「将軍、やめて! これはわたしの意志でしていることよ!」
〈自ら……? ならば、愚か……愚かなり、姫〉

 落ちてきた水晶が割れ、中から馬のいななきを伴った影が生まれる。

〈エヴァの誇りを捨てたか〉

 洞穴内に生えた黒い棺が次々に砕け、弾ける。二人が目を開けられずいる間に、呪詛に塗れた魂の核はフレヴンの元へと集まり、融合していった。

〈憎イ……〉
〈恨メシイ〉
〈ク、ルシイ〉

 見る見る膨らむ影は、今や洞穴の天井に届くほどに大きく、恐ろしい姿を作り上げた。
 上体は黒鉄の鎧を身につけた豪傑、下半身は黒馬の半身そのものだ。肩に纏った黒い毛皮は、三つ首の狼で、眼光鋭く息巻いている。

 呪力で歪んだ異形が、二人を見下ろし、怒りの矛を突き付けた。

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