彼女をイケメンに取られた俺が異世界帰り

あおアンドあお

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4章・昇級試験

029・試験官の代理を見つける

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「ふぇぇえ!『戦乙女』のパーティがいないですってぇぇえっ!?」

「は、はい。えっと、少し前くらいになりますか?『戦乙女』のパーティ
メンバーが神妙な面持ちで何かを言い合った直後、別々の方向にバラバラに
散って行きました」

「マ、マジですか!?なんとタイミングの悪い......グハッ!!」

特設グラウンドにいる、唯一試験官をやってくれそうな冒険者ランクA級の
『戦乙女』に試験官を嘆願しにきた試験担当のお姉さんだったが、しかし
その場にいた男性から『戦乙女』のパーティは何どこかに何かの用事で
去って行ったと聞き、試験担当係のお姉さんが「嘘でしょ!?」と言わん
表情でガクッと項垂れてしまう。

「ううぅう、参りましたね。もう時間が殆どないというのに、一体どう
したら良い―――」

試験担当のお姉さんが試験官の代理人をどうしようかと、両手で頭を
抱えて悩ませたその時、

「次、こい!」

「おうよ!はぁぁあっ!」

「遅いっ!」

「ぐはっ!」

「よし、次だ!」

グラウンドの奥の方から、聞き覚えのある声が聞こえてきた。

「こ、この声は...確か『黄昏の果て』の早河さんと佐々木さん!」

「黄昏の果て......」

あの特訓ぶりを見るに、試験官の代役を引き受けてくれる可能性は
低いだろうけど、

「ダメで元々だし、頼むだけ頼んでみようかな......」

依頼を受けてくれたらラッキーくらいの気持ちで、試験担当のお姉さんが
『黄昏の果て』パーティメンバーのいる場所に早足で移動して行く。


――その頃――


「くぅ...や、やはりC級以上のランクともなると、既にダンジョンに潜って
いるパーティが多いですね......」

もう一人の試験担当のお姉さんこと望月が、試験官の代理人を見つける
べく、ギルド内をくまなく探し回るが、やはりいるのはD級以下の冒険者
ばかりだった。

「あの子がうまくやっていれば良いんですが....」

もし駄目だった場合、

「......私が直々に試験官をやるしかありませんか」

いくら探し回ってもC級以上の冒険者が見当たらないので、これは自分が
試験担当をやるしか道がないかと、望月がそう意を決した時、

「......あれ?そこに見えるは望月っちじゃないですか?」

背後から聞き覚えのある声が、望月に声を掛けてくる。

「え!?あ、貴女は!」

望月がその声のした背後に顔をクルッと振り向かせると、明るい緑色の
ショートヘアがキラリと輝く『戦乙女』のリーダーの風菜が立っていた。

「こんにちは~望月さん♪ところでどうしたのかな?何か血相を変えた
表情をしているご様子だけど?」

「え、えっと、実は......」

望月が、風菜にその訳を話していく。

「ほうほう。なるほど...そういった事情が......」

「そういう訳なので、もし差し支えなければ、風菜さんに試験官をやって
いただきたいのですが......どうでしょうか?」

「え!ウ、ウチが試験官を...ですか?」

望月の申し出に、風菜は戸惑う。

そして、

「......そうだなぁ。正直に言うと、いま手が離せない用事の真っ最中
なんですが、まぁ望月っちには世話になっているしなぁ......」

風菜が腕を前に組んで試験官の代理を受けるかどうか、頭を悩ませて
考える。

そして数十秒ほど悩んだ結果、

「......よし!分かりました、望月っち!試験官の件、やらせてもらいます!」

風菜はニコリと微笑み、望月の嘆願を快く快諾する。

「ほ、本当ですか、風菜さん!あ、ありがとうございます!では風菜さん、
もう時間があまりございませんので、急ぎ試験会場に戻りましょう!」

風菜の言葉を聞いてホッと安堵した望月が、風菜に心からの感謝と会釈を
すると、早速とばかりに試験会場へと早足で移動して行った。

「望月さんのあの慌てよう。本当に切羽詰まっていたんだね......」

猛ダッシュで試験会場に戻っていく望月を見て、風菜が苦笑いを
こぼすと、望月の後を追い掛けて行く。
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