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五章 おっさんとテンプレ

第九十話・ルコールさん激おこ

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「ぐぬぬぬぬ......許さん、許さんぞ、おっさぁぁん!もう絶っっっ対に
許さんからなぁぁぁああっ!!」

レンヤの挑発にランスの血管がプチッと切れそうなくらいに怒り狂い
激昂すると、持っていた剣を両手でギュッと強く握って、頭の上高くまで
大きく振りかぶった!

「お、おい!?ラ、ランスのあの構えは......」

「ああ、あれは間違いない!あいつの切り札の『奥義・真空断斬剣』!?」

「な、なにぃ!?読んで字の如く、空気さえも真っ二つに斬れるとされる、
ランス得意の最強奥義かっ!?」

「うひぇぇぇ!あれほど願をかけたのに、俺達を巻き込むんじゃねぇってよ!」

「に、逃げろぉぉ!とにかく俺は死にたくない!この場から逃げるぞぉおっ!」

「ちょ、ちょっと待てよぉぉ!お、俺を置いていくんじゃねぇぇぇえっ!」

ランスの攻撃に巻き込まれてたまるかと、周囲にいた冒険者達がドタバタと
慌てふためきながら、宿屋の外へと次々と逃げ出していく!

「ラ、ランスさん!や、やめて下さい!こんなのをここで放たれたら宿屋が
壊れてしまいます!」

「プレシアさん。これはね、あなたを救う為の攻撃なんです!だから尊い
犠牲だと思って諦めて下さい!」

プレシアが技を発動させないでと懸命な表情で懇願するが、しかしランスは
首を左右に小さく振り、その懇願を却下した。

おいおい、尊い犠牲って...

宿屋を壊しちゃ駄目じゃん!本末転倒じゃん!

それって結局、プレシアを救えてないじゃんっ!!

やっぱりポンコツなんだ、このイケメン君。

......ハァ、しょうがない。

もういい加減、俺の苛立ちも限界がきているし、

このイケメン君には、ちょいと痛い目に合ってもらうとしますか。

俺は軽く嘆息を吐くと、ギフト技...『気合い』を発動させようと身構える。


が、その時っ!


「ごらぁぁあ、レンヤァァァアッ!いつまで宿屋の子とイチャイチャしと
るんじゃぁぁぁぁああ―――っ!!」


いくら待てども、ちっとも食堂にやって来ないレンヤに痺れをきらせた
ルコールが、食堂から出てきて咆哮を荒らげる!

「な、なんだ、この小娘は!?おい、小娘!貴様、そこのおっさんと
知り合いなのかっ!」

奥義の発動を邪魔された事で怒りを露にしているランスが、ルコールを
ジロリと睨みそう述べる。

「あぁん?知り合いだったら、どうだっていうのよ?」

ランスの傲慢な態度と腹が減っている事でかなりご立腹なルコールが、
両腕を胸の前に組み、仁王立ちでふんぞって返事を返す。

「こ、この小娘...何てクソ生意気なんだ!プレシアさんと大違いだぜ!
だが小娘、貴様の先程の言葉...俺の問いに対する肯定と取っていいんだよな?
なら、貴様も同罪だぁっ!今からこのおっさん共々、亡きモノにしてくれ――」

ランスがルコールに向けて人差し指をビシッと突きつけ、そう叫声を上げると、
両手に持った剣を大きく振り上げ、ルコールを攻撃をしようする!


――が、


「ギャーギャー、うっさいなっ!」

「へ!?――――ぎゃぼらげえぇぇええっ!!?」

ルコールがランスの近くまで一気に接近し、それに喫驚して動きを止める
ランスのイケメンフェイスを、反動をつけた拳で力いっぱい殴りつけた!

ルコールによって力いっぱい叩き殴られたランスは、その衝撃で吹っ飛んで
しまい、宿屋の壁へと叩きつけられてしまう!

「あが......あがが......」

壁に叩きつけられ、その場に崩れ落ちて虫の息になっているランスの下に、
ルコールが近寄って行くと、

「で...?誰が誰を亡きモノにするって......ん?」

...と、ニヤリと口角を上げた笑顔で問いかける。

「あが......うがが...が......うぐぅ..........がはっ!」

しかしランスはルコールの問いかけに答える事はなく、

自分がぶつかった事で崩れてきた壁の瓦礫の下で、その意識を
真っ白へと変えていくのだった。

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