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コンプレックス ー彩ー
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不登校になってしまった香澄は毎日のように私の家に遊びに来ていた。私はその横でいつも勉強をしていた。
香澄が家に帰った後は一人部屋に籠もって本を読んでいた。私が物を書くことに興味を持ち始めたのもその頃だ。
「彩はいつも勉強しててほんと偉いよね~」
そう香澄が言ってくれるのが嬉しかった。
イジメから救えなかった罪滅ぼしのつもりで、必死に勉強したしたまに教えたりもしていた。
その頃にはもう親友と呼べる仲になっていた。
三年生になり、本格的に受験勉強が始まる。
香澄は通信制の高校、私は県内トップクラスの高校を志望していた。
私は深夜まで勉強する日々が始まった。
県内トップクラスと聞いた両親はとても喜んでくれたし、母は毎晩夜食を作ってくれた。
レベルの高い高校を目指すのには訳があった。
私には三つ上の姉がいる。姉が通う高校に入りたいと、ずっと思っていた。
とても頭が良くて、姉妹なのに私よりも可愛くスポーツマンの彼氏もいる。
もう比較されたくなかったのだ。
お姉ちゃんは何でもできる。お姉ちゃんの方が可愛い。お姉ちゃんの方が…
聞き飽きた。
顔はどうにもならないので、せめて勉強は追いつきたかった。私は姉と違って運動神経も悪い。
今、姉が志望している大学よりランクが高い大学に進学してやる、その為にあだ名通りガリ勉になったのだ。香澄に褒められたのはきっかけに過ぎなかった。
部活も皆夏休みで引退して、受験勉強の時間が更に増える。
元々テニス部に入っていた香澄はとっくに辞めているし、私は帰宅部だったので引退の感動など無かった。
高校に入ったら青春を謳歌してやるぞ、と心の中で誓った。
部活は何に入ろうか、志望校は吹奏楽部が強いから入部してみたいな、でも初心者がついていけるだろうか…そんな妄想をしながら。
月日が経つのは早い。
今日はクリスマスだというのに内申書を出しに行かなければならないなんて。
試験がある訳でもないのに妙に緊張してしまう。
街はカップルだらけだ。私も高校生になったら彼氏を作ってデートしてみたいな…なんて事も考えるようになってきた。
九割勉強、一割妄想。そんな日々を送っている間に試験の日はやってきた。
私の血の滲むような努力を発揮する時が来た。
緊張する。
会場の人は皆頭が良さそうに見える。しかし、私もその一員じゃないか。
この日の為にどれだけ頑張ってきたか…
合格しない訳にはいかない。必ず。
試験を終えてさっぱりした私はすぐ家に帰り、いつものようにゲームをしている香澄とお喋りをした。
あれだけ頑張ったんだから受かるだろう、そうたかを括っていた。
隣では通信制の高校に既に合格した香澄が相変わらずゲームに夢中だ。
久しぶりの二人でゆっくりできる時間。
私は少し考えて口を開いた。
「ねえ、香澄はさ、高校行ったら何するの」
少し考えたのは、通信制の高校がどういう仕組みか全く知らなかったからだ。なんとなく聞く勇気もなかった。
少しの沈黙の後
「…芸能、やってみようかな」
「芸能…?!」
「うん、モデルとか」
実は彩が忙しそうな間、一人で渋谷行ったりしてたんだよね~
そう言うと香澄はジャージのポケットから無造作にカードのような物を取り出した。
「あ、名刺…ってなんでこんな所に入れてるのよ
てか何枚あるの?!?」
「彩に見せたかったの」
ずっと学校行かなくて心配かけたから…怪しいのも混ざってると思うけどね!!
「応援する
香澄は綺麗なんだから、きっと有名になるよ」
「……ありがとう」
目の前の整った顔を見ながら、少し安心する。香澄はやりたい事ができたんだ。親友なら全力で応援するしかない。…ちょっと悔しいけれど。
「じゃ、帰って本物か調べてみるわ」
そう言って私の部屋を出る香澄の顔は少し上を向いているように見えた。
月日が経つのは本当に早い。
あっという間に合格発表の日がやってきた。翌日には姉も発表だ。
「二人とも合格したら明日はパーティーね」
お母さんがウキウキしながら夕飯を運んでいる。何作ろうかしら、とか言いながら。
「緊張して食欲ないくらいだよ。彩は明日には合否分かってるし」
言葉通り姉は相当緊張しているらしい。意外だ。私の方が余裕じゃない。
その優越感が気持ち良かった。
そして翌日、私は不合格を知らされた。
香澄が家に帰った後は一人部屋に籠もって本を読んでいた。私が物を書くことに興味を持ち始めたのもその頃だ。
「彩はいつも勉強しててほんと偉いよね~」
そう香澄が言ってくれるのが嬉しかった。
イジメから救えなかった罪滅ぼしのつもりで、必死に勉強したしたまに教えたりもしていた。
その頃にはもう親友と呼べる仲になっていた。
三年生になり、本格的に受験勉強が始まる。
香澄は通信制の高校、私は県内トップクラスの高校を志望していた。
私は深夜まで勉強する日々が始まった。
県内トップクラスと聞いた両親はとても喜んでくれたし、母は毎晩夜食を作ってくれた。
レベルの高い高校を目指すのには訳があった。
私には三つ上の姉がいる。姉が通う高校に入りたいと、ずっと思っていた。
とても頭が良くて、姉妹なのに私よりも可愛くスポーツマンの彼氏もいる。
もう比較されたくなかったのだ。
お姉ちゃんは何でもできる。お姉ちゃんの方が可愛い。お姉ちゃんの方が…
聞き飽きた。
顔はどうにもならないので、せめて勉強は追いつきたかった。私は姉と違って運動神経も悪い。
今、姉が志望している大学よりランクが高い大学に進学してやる、その為にあだ名通りガリ勉になったのだ。香澄に褒められたのはきっかけに過ぎなかった。
部活も皆夏休みで引退して、受験勉強の時間が更に増える。
元々テニス部に入っていた香澄はとっくに辞めているし、私は帰宅部だったので引退の感動など無かった。
高校に入ったら青春を謳歌してやるぞ、と心の中で誓った。
部活は何に入ろうか、志望校は吹奏楽部が強いから入部してみたいな、でも初心者がついていけるだろうか…そんな妄想をしながら。
月日が経つのは早い。
今日はクリスマスだというのに内申書を出しに行かなければならないなんて。
試験がある訳でもないのに妙に緊張してしまう。
街はカップルだらけだ。私も高校生になったら彼氏を作ってデートしてみたいな…なんて事も考えるようになってきた。
九割勉強、一割妄想。そんな日々を送っている間に試験の日はやってきた。
私の血の滲むような努力を発揮する時が来た。
緊張する。
会場の人は皆頭が良さそうに見える。しかし、私もその一員じゃないか。
この日の為にどれだけ頑張ってきたか…
合格しない訳にはいかない。必ず。
試験を終えてさっぱりした私はすぐ家に帰り、いつものようにゲームをしている香澄とお喋りをした。
あれだけ頑張ったんだから受かるだろう、そうたかを括っていた。
隣では通信制の高校に既に合格した香澄が相変わらずゲームに夢中だ。
久しぶりの二人でゆっくりできる時間。
私は少し考えて口を開いた。
「ねえ、香澄はさ、高校行ったら何するの」
少し考えたのは、通信制の高校がどういう仕組みか全く知らなかったからだ。なんとなく聞く勇気もなかった。
少しの沈黙の後
「…芸能、やってみようかな」
「芸能…?!」
「うん、モデルとか」
実は彩が忙しそうな間、一人で渋谷行ったりしてたんだよね~
そう言うと香澄はジャージのポケットから無造作にカードのような物を取り出した。
「あ、名刺…ってなんでこんな所に入れてるのよ
てか何枚あるの?!?」
「彩に見せたかったの」
ずっと学校行かなくて心配かけたから…怪しいのも混ざってると思うけどね!!
「応援する
香澄は綺麗なんだから、きっと有名になるよ」
「……ありがとう」
目の前の整った顔を見ながら、少し安心する。香澄はやりたい事ができたんだ。親友なら全力で応援するしかない。…ちょっと悔しいけれど。
「じゃ、帰って本物か調べてみるわ」
そう言って私の部屋を出る香澄の顔は少し上を向いているように見えた。
月日が経つのは本当に早い。
あっという間に合格発表の日がやってきた。翌日には姉も発表だ。
「二人とも合格したら明日はパーティーね」
お母さんがウキウキしながら夕飯を運んでいる。何作ろうかしら、とか言いながら。
「緊張して食欲ないくらいだよ。彩は明日には合否分かってるし」
言葉通り姉は相当緊張しているらしい。意外だ。私の方が余裕じゃない。
その優越感が気持ち良かった。
そして翌日、私は不合格を知らされた。
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