神庭の番人 ~陰キャなオレには、スローライフなんてむいてない~

夜乃すてら

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陰キャなオレには、スローライフなんてむいてない

二章 現地人はエルフ 2-1

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 木の枝で穴を掘る。掘る。掘る……

 翌日もまた、暁は魔法のアイテムゲットに向けて、次の宝樹の浄化をしようと〈株玉〉に向けて穴を掘っている。

「……体力が、無い!」

 しかし、食事は水と果物のせいで力が入らない。たいした寝具もなく休めず、体はすでにガタガタだ。初日にがんばった反動での筋肉痛もあって、動きがにぶい。
 がくっと地面にくずおれる暁を、フォレスが笑う。

「本当に体力が無さすぎる。若者のくせに、だらしがない」
「何も言い返せない!」

 自分でもどうかと思う体たらくだ。
 だが、こんなクソ面倒くさいことに巻き込んだフォレス本人は、見物を決め込んでいるので、なんで自分はこんなに真面目にやっているんだろうかとふと疑問が湧いた。

「嫌だ」
「は?」
「今日はもうやめる。寝る。疲れた」
「駄々っ子か!」

 地面に寝転がってふて寝に走る暁の背を、フォレスがゲシッと蹴る。

「あーあー、何も聞こえなーい」
「まったく! しかたのない奴だが、一本目を取り戻した功績に免じて、一日の休みを恵んでやろう」
「なんで上から目線なんだよ!」
「おや、聞こえないのではなかったのか」

 いけしゃあしゃあと憎まれ口を叩くフクロウを、暁はにらむ。
 だが、フォレスの提案はありがたい。
 正直、穴を掘るのが楽になるアイテムを手に入れられるまで、のんびり過ごすほうが効率的ではないだろうか。
 無駄なことに労力を使うのが、暁は昔から大嫌いなのだ。

「なあ、昼間の森って安全なんだよな?」
「獣や蛇、虫はいるぞ」
「魔物は?」
「いない」
「よし、じゃあ、今日は食料調達をしながら、周りを散歩してみよう」

 まずは泉でタンブラーに水を汲み、キャンパスバッグにしのばせていたエコバッグに果物を摘んで入れておく。武器代わりに枝を持つと、暁はフォレスに声をかける。

「それじゃあ、出かけてくるから」
「ああ」
「……? フォレスは留守番していていいぞ」
「お前、森で迷って、戻れなくなるとは思わんのか」
「……」

 それは考えていなかった。
 ばつの悪さに黙り込む暁の後ろ頭を、フォレスが羽で叩く。

「神庭ならば私には手に取るように分かる。さあ、行くぞ」
「はいはい」

 ムカつく鳥だが、暁の小さな冒険に付き合ってくれる気はあるらしい。フォレスの気が変わらないうちにと、暁は歩き出す。

「そのまま、まっすぐ進め。神庭のすぐ外に、確か集落があったはずだ」
「……集落」

 現地人がいるのだと聞いて、暁はうれしいと思うよりも緊張する。暁は人見知りが激しいのだ。

「確か耳長が住んでいた」
「ミミナガ?」

 もしかして、うさぎ耳が生えた獣人みたいな人間だろうか。
 異世界の人間がどんなものか、暁には謎だ。

「神庭の騒動に巻き込まれていなければよいが」
「魔物って、その人達も襲うのか?」
「そうだ。魔物は生き物のエネルギーを得て強くなるからな。耳長は森の狩人であるから、そうそうやられはしまいが」

 宝樹が枯れ、死んだ森の中は歩きやすい。山を歩くよりも軽快な足取りで、暁は先へと進んでいく。
 三十分ほど歩くと、枯れた木々の向こうに緑が生い茂る森が見えた。

「あれが外だ」
「あっちは元気なんだな」
「今は、な。神庭の豊かなエネルギーが影響していたから、時差で弱っていくはずだ」
「神庭の復活って、もしかしてかなり重要な問題?」
「当たり前だろうが」

 フォレスは語気を強めるが、暁にとってはピンとこない。

「私が話をつける。お前はもう少し栄養をとるべきだろう」
「フォレス、まさか俺の体調を気にかけて?」
「たいした力もない子どもだが、私には召喚する力はないから、こき使うにしたって飴とムチは大事だからな」
「その一言で、ますます嫌いになったわ」

 余計なことばかり言うフクロウだ。

 暁は腹立ちまぎれに、大股で歩く。そして神庭の外に出て三歩目で、グニャッとしたものを踏んだ。

「うぎゃあ!」
「ぐふぅっ」

 暁は驚いて飛び上がったが、暁に踏まれた少年は、腹を抱えて丸くなった。

「わあ! なんでこんな所に人が寝てるんだ? そもそも、いるのに気づかなかった! ごめん! 大丈夫か?」

 暁は慌てて地面に膝をつき、もだえている少年の肩をつかむ。
 その美貌に、息をのむ。
 白雪のような髪は猫っ毛で、ほとんど閉じて見える糸目ながら、鼻筋は通っていて、唇は桜色だ。色白な肌は陶器のようになめらかで、そして驚くことに耳がとがっている。セージグリーンのフード付きの上着と、モスグレイの長ズボンに、革のニーハイブーツを履いていた。腰にはダガーと矢筒を下げ、傍に弓が転がっている。

「おお、耳長だ」

 肩からフォレスが呟いた。

「ミミナガってこの人が? うさぎ耳の獣人じゃなかったのかよ! エルフじゃん!」

 まさかファンタジーものでの超有名種族に会えると思わず、暁は胸を高鳴らせた。しかし次の瞬間、一気に血の気が引いた。
 エルフの少年は半端に起き上がり、暁の肩をガシッとつかむ。

「ごめん、吐く」

 おろろろろ。

「ぎゃ――――――――――っ!!!!」

 暁の絶叫が、森にわんわんと響き渡った。
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