神庭の番人 ~陰キャなオレには、スローライフなんてむいてない~

夜乃すてら

文字の大きさ
7 / 23
陰キャなオレには、スローライフなんてむいてない

 2-2

しおりを挟む


「すみませんでした」

 嘔吐したことで落ち着いたエルフの少年は、今まさに土下座していた。

「……いや、元はといえば、俺が君を踏んだせいだから」

 暁の服をげろまみれにした彼は、悲惨な格好の暁を前にして、罪悪感で青ざめている。

「まさか神庭から出てくる人がいるなんて思わなかったんです。僕はここで見張り番をしていまして」
「見張り番って、思い切り寝てたじゃないか」

 ひどい人見知りを吹っ飛ばす出会いだったため、暁はぞんざいに返す。げろまみれにされて遠慮するほど、暁はお人好しではない。

「まあ、昼間は平和なんで、サボっていたのは事実です」
「素直なのは良いことだ。くそ、ここから泉まで戻ると、かなりかかるぞ」

 一刻も早く、服を洗いたい。

「僕の家に来てください。お風呂を用意して、服も洗濯しますから」
「風呂があるの?」

 暁は風呂の単語に食いついて、前のめりに近づく。エルフの少年は、ズザッと後ろに下がった。そういえば肩が軽いと思えば、フォレスも距離をとっている。

「くさいから寄るなよ、アカツキ」
「ちくしょーっ」

 暁自身もくさくてかなわないので、フォレスが嫌がるのは当然だ。しかし吐いた本人までのけぞるのは腹が立つ。
 少年は気まずげに頬を引きつらせ、誤魔化すかのように、再び土下座した。

「万物の宿る地ガイアをすべられる、十二柱が一柱、森の神フォレス様におめもじつかまつる光栄に、このエジリエストリエンリッターノ、感謝感激にたえません」

「楽にするがよい、耳長よ」

 フォレスはほわっとした胸を張り、えらそうに返した。暁は首を振る。

「こんなフクロウに、そんなにへりくだらなくてもいいのに」
「何をおっしゃいますか。神と対面するなど、恐れ多いことですよ。あなたは人間のように見えますが、どちらのやんごとないお方でしょうか」

 エジリエストうんたらかんたらな少年は、興味を込めて暁を伺う。

「俺は宵谷暁だよ。アカツキって呼んでくれ。えーと、エジリエストなんちゃら君」
「エジと呼んでください」

 助かった。長ったらしくて覚えられそうにない。
 フォレスが暁のことを説明する。

「エジよ、この者は私が異世界から召喚した、私の下僕げぼく……」
「おい!」
「冗談だ。神庭の番人だよ。この神庭を再生できるのは、非常に不本意だが、この者しかいない」

 暁が止めたので言い直したが、フォレスのことだから下僕と思っているに違いない。

「フォレス様にお仕えする大神官様なのですね!」
「別に仕えてねえよ。元の世界に戻るために、協力しているだけだ」
「お会いできて光栄です!」
「なあ、聞いてる?」

 感激で顔をキラキラさせているエジの耳は、暁の言葉が右から左へと素通りしているようだ。

「ご無礼して失礼しました。さあ、僕の村へ参りましょう!」
「まあ、風呂に入れるのはありがたいかな」

 外出しない日はともかく、外で過ごしたのに風呂に入らないなんてありえない程度には、暁は綺麗好きだ。
 エルフが暮らす村を期待して、微妙に距離をとって歩くエジと、エジの肩に乗り移ったフォレスの後についていくことにした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

あっ、追放されちゃった…。

satomi
恋愛
ガイダール侯爵家の長女であるパールは精霊の話を聞くことができる。がそのことは誰にも話してはいない。亡き母との約束。 母が亡くなって喪も明けないうちに義母を父は連れてきた。義妹付きで。義妹はパールのものをなんでも欲しがった。事前に精霊の話を聞いていたパールは対処なりをできていたけれど、これは…。 ついにウラルはパールの婚約者である王太子を横取りした。 そのことについては王太子は特に魅力のある人ではないし、なんにも感じなかったのですが、王宮内でも噂になり、家の恥だと、家まで追い出されてしまったのです。 精霊さんのアドバイスによりブルハング帝国へと行ったパールですが…。

スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~

みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった! 無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。 追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。

10歳で記憶喪失になったけど、チート従魔たちと異世界ライフを楽しみます(リメイク版)

犬社護
ファンタジー
10歳の咲耶(さや)は家族とのキャンプ旅行で就寝中、豪雨の影響で発生した土石流に巻き込まれてしまう。 意識が浮上して目覚めると、そこは森の中。 彼女は10歳の見知らぬ少女となっており、その子の記憶も喪失していたことで、自分が異世界に転生していることにも気づかず、何故深い森の中にいるのかもわからないまま途方に暮れてしまう。 そんな状況の中、森で知り合った冒険者ベイツと霊鳥ルウリと出会ったことで、彼女は徐々に自分の置かれている状況を把握していく。持ち前の明るくてのほほんとしたマイペースな性格もあって、咲耶は前世の知識を駆使して、徐々に異世界にも慣れていくのだが、そんな彼女に転機が訪れる。それ以降、これまで不明だった咲耶自身の力も解放され、様々な人々や精霊、魔物たちと出会い愛されていく。 これは、ちょっぴり天然な《咲耶》とチート従魔たちとのまったり異世界物語。 ○○○ 旧版を基に再編集しています。 第二章(16話付近)以降、完全オリジナルとなります。 旧版に関しては、8月1日に削除予定なのでご注意ください。 この作品は、ノベルアップ+にも投稿しています。

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...