神庭の番人 ~陰キャなオレには、スローライフなんてむいてない~

夜乃すてら

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陰キャなオレには、スローライフなんてむいてない

四章 よそ者が現れた 4-1

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 人見知りとはいえ、さすがの暁も、村人達には慣れた。
 それでも、いざ話すとなると、暁はどぎまぎとして、小さくなってしまうのは相変わらずだ。

「アカツキって、村の皆にはぎこちないのに、つっくんのことは平気なんだね?」

 エジが不思議そうに問う。暁は腕を組んで考える。確かに、ツィーデルにはなぜか親近感が湧くせいで、人見知りが出ないのだ。

「まあ、エジの友達っていうのもあるし……、あいつ、どう見ても陰キャじゃん?」
「インキャ?」
「陰鬱系キャラ。暗そう」

「ま、まあ、つっくんは家にいる時は引きこもりだけど……。そうか! そういうところが、アカツキにはなじみやすいんだね。良かった。つっくんはあの通りそっけないから、ズバズバと言いすぎて、嫌われがちなんだよね……」

 エジは苦笑を浮かべる。

(おいおい、大丈夫か。未来の村長!)

 村長の息子ならば、当然、ツィーデルが後継ぎのはずだ。毒舌のせいで、村人に嫌われる村長ってどうなんだろうか。

「でも、力こそが正義だから、尊敬はされてる」
「お前達って、なんでそんなに脳筋なの?」

 未来の村長が、研究タイプの知識系で良かった。そうでなかったら、全部を力技で解決しそうで怖い。
 暁はがっかりするのをやめて、森を見回す。今日は神庭の外にある森を散策しており、少し歩くと、キノコを見つけた。茶色いかさを持った、ヒラタケにそっくりなキノコだ。

「これは食べられるキノコ?」
「正解」
「お、そっちの赤いのは美味そうだな」

 つやつやした赤いキノコに手を伸ばすと、キノコに触れる前に、エジが暁の右手首をつかんで止めた。

「ストップ。それはヒタケ。触ると火傷するんだよ。毒キノコ」
「ええっ、触っただけでアウトな毒キノコなんてあるの?」
「見ていれば分かるけど、虫をおびき寄せて、表面の毒で消化してるんだよ」

 エジの言う通りだった。観察していると、ハエがすっと飛んできて、ヒタケの表面にとまるやジュッと音を立てて煙が出る。

「こ、こわあ」
「キノコは動かないから、こっちから触らなければ問題ないけど、動くタイプの食獣植物もいてね、そっちが危険なんだ」
「しょく……じゅう?」

 食虫ではなく?

「魔物ではないけど、魔物並みにやばい植物だよ。がんばって逃げきるか、燃やすしかない」
「そんな危険植物がこの近辺に?」
「どこから来るのか、たまにいるんだよね。見回りをしている時に、見かけたら燃やしてるよ」

 衛士の仕事は、安全管理だ。危険を遠ざけるために、幅広い仕事をしているらしい。

「アカツキ、分からないものには触らないように。僕が傍にいる時は、先に質問してね」
「了解です、先生!」
「あはは、おおげさだなあ」

 子ども達に稽古をつけるというだけあって、エジは優しさと厳しさをあわせ持った指導をする。立派な教師だ。

「さて、と。見回りしながら、森を回ったら帰ろうか。つっくんの差し入れがあるから、しばらくは採取をしなくても食べられるからね」

 今日も体力をつけるために、エジと散歩をしている。前よりは長距離を歩けるようになってきたので、自分の向上っぷりがうれしい。

「でも、キノコは採っておいてもいいだろ? 干したら、栄養価が高くなるってテレビで言ってたよ」
「干すと旨味が増えるけど、栄養まで? 良いことを聞いたよ。ありがとう」

 エジはにこにこと微笑んで、礼を言った。そんな慈愛たっぷりにほほ笑まれると、お母さんと呼びたくなるからやめてほしい。

「へへ、どういたしまし……ひょわっ」

 突然、足元の地面が消え、目の前が暗くなった。ドスンと固い地面で尻を打ちつけて、あまりの痛みに悶絶する。

「ぬおおおお、いてええええ」
「アカツキ!?」

 エジが声を上げて、上から名前を呼ぶ。暁が見上げると、ぽっかりと丸い穴があいていて、青空が切り取られている。

「おおっ、かかったぞ!」
「エルフめ、今日こそは正体を……あれ?」

 意気揚々とした話し声がいくつか聞こえ、最後には強張った。

「僕達の森に、勝手に罠を仕掛けるなんて、どういうつもり? しかも大神官様に危害を加えるなんて、いい度胸じゃないか。慈悲深いフォレス神様がお許しになっても、僕は許さない」
「な、なんかエジさんがぶち切れていらっしゃる!?」

 いったい上で何が起きているのだろうか。
 這い上ろうにも、壁は思ったよりももろいので躊躇する。崩れたら、生き埋めだ。

「フォレス神様? 大神官様? 何を言ってるんだ、この糸目のエルフ」
「こんなほそっこい奴が、一人で何ができるって……ブギャフッ」

 誰かのぶざまな声が聞こえ、しんと静まり返る。

「僕はゴールデンハイム村の衛士、エジリエストリエンリッターノだ。村を脅かす者を放置するわけにはいかない。全員、ぶちのめす!」

「うわっ、ギャアッ」
「な、なんだこいつ、速い……ひいっ」
「ま、待て待て、落ち着け! ぐはーっ」

 ――本気で、いったい何が起きてるんですか!?

「ホラー展開だけはやめてえええ」

 上から聞こえてくる肉弾戦と悲鳴に恐れをなして、暁は頭を抱えて震えた。
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