白家の冷酷若様に転生してしまった

夜乃すてら

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4幕 家守の鏡

3-3 ※R18表現注意 ※加筆部分


 天祐は唇だけでなく、頬にも小鳥が戯れるような口づけをする。
 くすぐったさに碧玉がつい笑ってしまうと、ふと目が合った。その力強い目の輝きに引かれるように、碧玉から唇を合わせる。

「兄上から口づけてくださるなんて、うれしいです。でも、やっぱりこれだけだと物足りませんね」
「んっ」

 天祐は微笑んで、碧玉の下唇をやんわりと噛む。それに促されて口を開けた途端、噛みつくような口づけに変わった。すぐに熱い舌が入りこんできて、碧玉の口内を蹂躙する。

「ふっ、んん」

 碧玉が口づけに応えるのに気を取られているうちに、天祐は碧玉の寝間着の合わせに手をかけた。帯が解かれて、床に落とされる。天祐は眉を寄せた。

「春とはいえ、まだ夜は冷えるのですから、こんな薄着で邸内を出歩かないでください」
「脱がしながら言うことか? やめても構わぬが」

 碧玉が文句を返すと、それは嫌だと天祐は首を横に振る。

「どうせこれから暑くなりますよね」
「それはそうだろうが……あっ」

 天祐の右手が、するりと碧玉の背中を撫でたので、碧玉はびくりと身を震わせる。その喉元に天祐は甘く噛みついて、噛み痕をなぞるようになめた。天祐に左手は、衣をはだけて露にされた肌に触れ、胸の飾りを指の腹で押す。

「んっ。お、お前も脱がぬか」

 碧玉だけ肌をさらして、天祐は仕事着のままだというのが、どうも癪に障る。

(……仕事着?)

 そこで碧玉は、ふと我に返った。
 領主の執務室とは、役場の一部でもある。閉門した今は役人がいないとはいえ、ここは公の場でもあった。

「そういえば、ここは執務室であったな……。さすがに不謹慎ゆえ、場所を変えるか?」

 碧玉がそろりと天祐の膝から下りると、天祐の腕が後ろから回されて引っ張られ、天祐の膝の上に戻るはめになった。

「こら、驚くだろう。あっ」
「今の時間帯はただの私の部屋ですから、気にせずに」

 肩から衣を落とされて、素肌が空気にさらされる。その肩に、天祐は後ろから吸い付いた。ちりっとした痛みがして、碧玉は痕を残されたことを知る。天祐は碧玉の背中に残っている鞭の傷跡に口づけながら、自分も衣を脱いでいく。乱雑に床に放り投げられる衣を、碧玉は目で追った。

「しかし、つくえを汚すのは……」

 情事の痕跡を使用人に見られようものなら、碧玉は気まずさで死にたくなりそうだ。

「では、こうしましょう」
「うわっ」

 天祐は碧玉の腰を両手でつかんで、ひょいっと持ち上げ、くるりと一回転させた。おかげで碧玉は天祐と向かいあう格好で、膝に座るはめになった。一人掛け用の椅子はどっしりした造りなので、そんな動きがあってもびくともしない。
 荷物みたいに軽々と移動させられると、碧玉は複雑な気持ちにさせられるが、当の天祐はしみじみと見入っている。

「はあ、このような蝋燭の明かりで見る兄上も、お美しいですね」
「そうまじまじと見るな」

 天祐の焦げ付きそうな視線に、碧玉はたじろぐ。天祐の目を、碧玉は左手で覆う。その碧玉の手を掴み、天祐は指先に口づけた。

「月光のような銀髪はもちろん、この白珊瑚のような肌もお美しいですよ。こうして肌に吸い付くと、新雪を踏み荒らしているような背徳感もあります」

 碧玉の鎖骨の下に吸い付いて、赤い鬱血痕を残し、天祐は微笑する。碧玉は顔を赤らめた。天祐が碧玉を褒め始めると、どうしてもいたたまれない気持ちになるのである。手っ取り早く黙らせるために、碧玉は自分から天祐と唇を合わせる。

「そこまでにせよ」
「ふふ。はい」

 天祐は笑って口づけを受け入れる。
 碧玉は自分が美しいことを分かっているが、直にえんえんと褒められるのは苦手だ。恥ずかしさで、耳が赤くなっているだろう。

「ん、んん」

 深い口づけを交わしていると、天祐の右手がするりと碧玉の腰へ回った。下着のに触れると、隙間から手を差し込んで、尻から下へと指を滑らせる。

「んっ」

 天祐の手が性急に後孔に触れたので、碧玉は身を震わせ、思わず目の前にいる天祐の肩にしがみつく。それに気を良くしたのか、天祐は左手で碧玉の後頭部を押さえ、深々と口づける。水音が響くのを聞きながら、碧玉は上手く息ができなくなって目の前がくらくらした。天祐の胸元を叩くと、天祐が碧玉を解放する。

「はあ、はあ。殺す気か」
「相変わらず息継ぎが苦手ですね、兄上」

 天祐は愛おしげにつぶやきながら、几の引き出しから小瓶を取り出す。

「なっ。天祐、執務室にも香油を置いているのか?」
「ええ。ここから兄上の部屋に直行することも多いので、予備は準備しておかないと。兄上に痛い思いをさせたくはありませんからね」
「…………」

 喜ぶべきなのか呆れるべきなのかわからず、碧玉は口を閉ざす。

「ほら、兄上。ちょっと腰を上げてください」

 天祐に促されて椅子に膝立ちになると、天祐は碧玉の下着の袴を躊躇なく下ろした。動揺しているうちに、再び膝の上に座らされ、足に引っかかっている袴を取り去られてしまう。気づけば碧玉だけ裸にされていた。
 そして、香油をまとわせた指で、天祐は碧玉の後ろへと触れる。

「んっ、んん、あっ」

 こればっかりは何度されても慣れない。碧玉の中に、天祐の右手の指が入りこみ、念入りにほぐし始める。思わず碧玉が天祐の肩を掴む手に力が入るのに気づいてか、天祐の左手は、碧玉をなだめるように肌を優しく愛撫した。
 次第に碧玉から力が抜け、天祐の指の数も増えていく。

「そろそろいいでしょうか。兄上、つらかったら言ってください」
「あ? ああ……んんんっ」

 碧玉は天祐に腰を支えられて椅子に膝立ちにさせられ、ゆっくりと天祐の陽物の上へ下ろされる。外出していたのもあって、ねやは久しぶりだ。圧迫感のせいで碧玉は最初こそ眉を寄せたが、幾度か天祐に抱かれている体は、天祐を受け入れた。張り出した部分が入り、その硬い先端が碧玉の内側を刺激する。
 天祐は碧玉の様子を見ながら、浅いところで碧玉の体を上下に揺する。

「あっ、待て」
「痛くありませんか?」
「それはないが……」

 碧玉は天祐の肩にしがみつく。このままでは自重もあって、最初から深い所に天祐の陽物が入りこんでしまうと焦った。そんな碧玉の様子を知ってか知らずか、天祐は碧玉の体を揺さぶって、良いところに当たるようにする。

「ん、ん、あっ」
「――っ。兄上、もう我慢できません」

 天祐は碧玉の腰を掴むと、ぐいっと下へ下ろした。

「あああっ」

 天祐の陽物が奥へと容赦なく叩きつけられ、碧玉は甘い悲鳴を上げる。

「あ……深いっ」
「ふふ。入れただけで達したのですか」

 天祐が愛おしげにつぶやいて、碧玉自身に触れる。碧玉はビクリと震え、なんとか下を見た。天祐の衣に、碧玉が零した白濁が散っているのを見て、顔を赤くする。

「衣を汚してしまったではないか」
「洗えばいいでしょう。几は汚していませんよ」

 そんなの詭弁きべんだろうと、碧玉は天祐をにらむ。

「兄上、そんな涙目でにらんでも、かわいらしいだけですよ? 俺の服なんて、いくらでも汚してください」
「お前も脱げ」
「駄目ですよ、椅子が汚れてしまいます。気になるんでしょう?」

 憎たらしいことを言うものだと碧玉が眉を寄せると、天祐は碧玉の目元をなめた。

「しょっぱいですね。なんだか甘そうに見えたのに」

 天祐は心から残念そうに言い、驚いて目を丸くしている碧玉の唇に、再び口づけをする。至近距離で碧玉を覗きこむ天祐の青い瞳は、炎のように熱く見え、碧玉は自分だけ裸になっていることへの文句を飲みこんだ。
 天祐は口づけをしながら、碧玉の腰を上下に揺さぶる。碧玉の体が下へ沈む時に合わせて、腰を突き上げるものだからたまらない。

「ひあっ、あっ、ああっ」

 碧玉は天祐の肩にしがみつき、口づけを解いて、首を横に振る。刺激が強すぎてどうにか逃がしたいのに、膝に力を入れると、中にある陽物を締め付けてしまう。

「兄上、そんなにいいですか?」

 天祐はふいに動きを止め、碧玉の耳元でささやく。そして碧玉の臀部でんぶを掴んで、ゆっくりと揉んだ。

「あ、うう」

 碧玉は体を震わせる。臀部を揉まれると、後孔に入っている天祐の陽物に外側からも刺激される形になってしまい、切ない声が漏れる。

「なんだか今日は敏感ですね。もしや執務室という背徳感に刺激でもされました?」

 天祐が意地悪く問うので、碧玉はカッと顔を赤らめる。

「ちが……あああ!」

 碧玉が否定しようとした時に、天祐は碧玉の腰を持ち上げ、一気に下まで落とした。天祐の陽物に容赦なくえぐられ、碧玉は背を反らして声を上げる。

「くっ」

 天祐は耐えるような声を漏らしたものの、碧玉を揺さぶって、がんがんと突き上げる。

「うあっ、あああ!」
「兄上、兄上、愛しています」

 碧玉は天祐にされるがまま、声を上げるしかない。天祐は碧玉を翻弄しながら、熱に浮かされたみたいに愛の言葉をささやいている。それを聞いていると碧玉も力が抜けてしまい、膝を支えていられずに天祐にしがみつく。すると、密着した体の間で自身をこすられて、それも甘い刺激になる。訳のわからぬまま、高みへと駆け上った。

「あああああ!」
「――っ」

 くたりと弛緩した碧玉の体を、天祐はしっかりと抱きしめ、中へと精を放った



 翌日、まだ薄暗い早朝に、碧玉は天祐に抱きしめられた格好で目を覚ました。

(ここは……私の部屋か)

 あの後、碧玉はすっかり腰が抜けて立てなくなってしまい、天祐に抱き上げられて運んでくれたのだ。寝間着を簡単に着せられただけだったので、衛士とすれ違わずに済んで助かった。

(仕事場でことに及ぶなど……我ながらなんて不謹慎なことを)

 もんもんとしているうちに、朝日が出る時間帯になり、天祐も起きた。

「ふああ。兄上、おはようございます。まだ寝ていていいですよ」

 天祐は碧玉の額に口づけしてから、あくびをしながら起き上がる。

「おはよう。その……昨夜は邪魔をして悪かったな」

 碧玉は気まずくなって謝った。桃家について調べるつもりではあったが、帰宅した日くらい、天祐と一緒に時間を過ごそうと思っていたのも本当だ。

「兄上、謝らないでください。会いに来てくれて、私はうれしかったです。おかげですっきりしていて、とても元気ですよ」
「そうか……?」

 確かに天祐は寝起きなのに元気溌剌としているが、碧玉は主に腰のあたりがだるくて疲れている。

「受け入れる側のほうが体に負担がかかるものですから、休んでいてください。桃家の資料は後で運ばせますので、今日は離れから出ないでくださいよ。その色気を他人の目にさらしたくありませんので」

 そう言うと、天祐は碧玉の首に顔を寄せた。ちりっとした痛みが走り、碧玉は首に赤い痕をつけられたのを知る。

「見える所につけるな」
「見られたくなかったら、部屋にいてください」
「まったく、お前ときたら……」

 碧玉を離れから出さないために、わざと痕をつけたようだ。こざかしい悪戯に、碧玉は呆れる。

「どうせろくに動けぬから、いらぬ心配をするな」
「念のためですよ。私は朝の稽古があるので、後で朝餉を共にしましょうね」

 天祐はそう言うと、碧玉に礼をしてから離れを出て行った。

(天祐に毒されてきておるのだろうか)

 普段の自分ならしない行動を思い返して、碧玉は灰炎が朝のあいさつに来るまで、しばらく一人で恥ずかしさにもだえていた。
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