白家の冷酷若様に転生してしまった

夜乃すてら

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4幕 家守の鏡

22-2 ※R18表現注意 加筆部分



 その夜、碧玉は牀頭の上で、天祐に背中をさらしていた。

「天祐、そなたもまめだな。このような古傷、もう治らぬと思うが」
「いいえ! 安殿から傷跡を癒す軟膏をいただいたんですから、さっそく使わなくては。可能性があるなら、なんでもしてみるべきですよ」

 天祐は張り切って言い返す。
 紫曜の客堂から戻ってくると、安からの使いがやって来て、贈り物を置いていったのだ。箱の中には、薬草園でふるまってくれた薬草茶や酥の調理法の書付と、傷跡を癒すのに適した軟膏とその処方が入っていた。

「桃家の次期後継者による書付を見たら、我が家の医者が卒倒しそうだな。……んっ」

 とろりとした軟膏はひんやりと冷たく、碧玉はビクリと身を震わせた。

「大喜びしそうですよね。もしや痛みますか?」
「冷たいから驚いただけだ」

 碧玉はそう答えたものの、天祐が軟膏を丁寧に塗りつける指先を意識してしまい、だんだん妙な気分になってきた。

「塗り続けると、硬くなっている傷跡を少しずつやわらかくして、目立たなくさせていくそうですよ。足は……明日の朝にしましょう。きっと取れてしまいますから」

 天祐はふっと笑って、碧玉のうなじに口づけを落とす。

「兄上は色が白いから、首や肩が赤くなっているのがよく分かります。そんなに気持ちよかったですか?」

 悪戯っぽい口調で、怪しい問いかけをする天祐。碧玉はキッと眉を吊り上げて振り返る。

「あの手つき、わざとだな!」
「最初は丁寧に塗っていただけですよ。兄上が反応するから、つい」
「しかたがないだろう。傷跡は敏感になっているところもあるのだ」

 感覚がにぶいところもあるが、引きつれて敏感な部分もある。天気が悪いと痛むことがあるのは、後者のほうだ。

「申し訳ありませんでした。はい、包帯で軟膏を覆い隠せば治療は終わりですよ」

 せっかく塗った軟膏が服についてとれないように、天祐は碧玉の上半身に、丁寧に包帯を巻いた。

「まるで重症のようではないか」
「このほうが効き目がいいそうですから」

 天祐はそう説明すると、包帯の端を結び、碧玉を牀頭に押し倒した。

「つい気がはやってしまいましたが、薬を塗るのは明日の朝にすれば良かったですね」
「閨をするのか? しかし……あの者に見られはしないか」

 安がどこでヤモリを乗っ取って、様子を窺っているか分からない。碧玉は秘事を他人の目にさらす気などないので躊躇した。

「あんな話し合いをした後で、まだ覗き見するとは思えませんよ。それに、人間として暮らしていくなら、あの精霊は見て見ぬふりをすることも覚えるべきでは?」

 天祐はなめらかな口調で碧玉を説得する。

「まったく、こういう時ばかり調子のいい口だな。虎の謎かけにはまごついておったくせに」
「兄上を口説くためなら、頭の回転も速くなるというものです」

 堂々とそんなことを言うので、碧玉は呆れた。

「それに、明日からまた旅なのですから、今日は兄上と触れあっておきたいですね。でないと、兄上が不足して、私が飢え乾いてしまいます」
「本当に調子のいい……」

 碧玉は呆れ果てながらも、天祐の口づけを受け入れた。



 薄暗い部屋に、ギシッギシッと牀頭がきしむ音が響いている。

「うあっ、あっ、ああっ」

 碧玉はうつぶせにされて、尻を上げる格好で、後ろから天祐に責められていた。
 旅は移動が長く久しぶりだったので、天祐は丁寧に碧玉の体を解きほぐしたが、いったん中を暴いてしまえば、理性の手綱を手放すのは早かった。
 薬を塗ったばかりだからと遠慮していたのに、包帯はほどけて、とっくに床に落ちている。

「兄上、兄上」

 天祐は噛みしめるみたいに碧玉の名を呼び、碧玉の体にぴたりと体を合わせて、腰を突き上げる。そのせいで、背中に塗っていた薬が互いの肌に溶け合ってこすれるものだから、碧玉としてはたまらない。ひきつれている敏感な傷跡から、妙な感覚が湧き上がってくるせいだ。

「て、天祐、背中、変だから……っ」

 碧玉はなんとか単語で離れるように伝えたいのに、声が妙に甘ったれてしまい、上手くいかない。

「兄上の体温、気持ちいいですよ。中も最高だ」
「んんっ」

 上から押しつぶすように奥を突くので、碧玉は敷布を掴んでうめく。びりびりと甘い痺れが背筋を駆け抜けていき、腕に力が入らない。

「ああ、前が寂しかったですか?」
「ちがっ。ああっ」

 脱力しているところに、天祐は碧玉の胸の飾りに左手で触れ、ぐりぐりと指先で愛撫し始める。その刺激で、つい後孔を締めてしまい、今度は天祐がうめいた。

「くっ」

 碧玉が思わず笑ってしまうと、天祐に仕返しで、奥をぐっと突かれた。

「ひあっ」
「意地悪しないでください」

 どちらがだという文句は、碧玉の口からは出せなかった。天祐が碧玉の腰を両手でがしりと掴み、激しく突き上げ始めたせいだ。

「ひっ、ひぁっ、やあっ」
「はは、兄上、奥がお好きですよね?」

 またもや牀頭がギシギシと激しく揺れ始める。碧玉が感じるところばかり狙って、しつこく穿つものだから、碧玉の体は陸に上げられた魚みたいに跳ねた。

「はあ、はあ。ああ、もっと近づきたい」

 こちらは息が苦しいくらいなのに、天祐は物足りなさそうに、碧玉の両腕を掴んで後ろに引っ張る。

「兄上……愛してます」

 一度腰を大きく引くと、勢いよく叩きつけた。

「ああああっ」

 あれだけぴったりくっついていたのに、更に奥があったらしい。最奥をえぐられ、碧玉の視界が一瞬、白く染まる。体を法悦が駆け抜け、中に温かな飛沫を感じた。碧玉も知らぬうちに達したようで、天祐が腕の拘束を緩めた敷布に倒れると、腹の辺りが精で濡れていた。

「はあ……兄上、今宵も最高です」

 くたりとしている碧玉のうなじや背に口づけを何度も落として、天祐はうっとりと甘い言葉をささやく。

「碧玉兄上……」

 天祐が耳元で愛を乞う。碧玉が息を整えるのに必死で何も言わないので、天祐は寂しくなったらしい。しかたがないので、碧玉はかすれた声で返す。

「私も愛している」
「ありがとうございます!」

 途端に嬉しそうに、天祐は碧玉のこめかみに口づけを落とした。

「あと二回くらいいいですか?」

 本当に調子に乗っているな……と碧玉は遠い目をしたが、どうせしばらくは旅でご無沙汰になるだろうしと、天祐のわがままを受け入れた。
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