白家の冷酷若様に転生してしまった

夜乃すてら

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4幕 家守の鏡

一、桃家の噂 / 1 とあるものの独白




 ――この家をよくよく守りなさい

 私の最初の記憶は、この言葉であった。
 あれは何年前のことだろうか。数百年は過ぎているのかもしれない。
 薄暗い部屋の祭壇で、私は与えられた役目の通り、この家の人々を見守り続けてきた。
 たいていの家人は私を大切に扱いはしても、あまり近づかない。

 だが、この代の主人が迎えた嫁は、私を大層気に入ったらしく、何かとあいさつに顔を出した。
 変わった嫁だと思っていたが、私は特に興味はなかった。
 やがて私の心が惹かれたのは、その嫁が産んだ子どもだった。
 生まれたての小さな赤子が嫁に抱えられ、きゃあきゃあと笑って、小さな手を振っている。

 ――どうか、この子に幸いありますように

 自然とそう願っていた。
 その子どもは嫁に似た変わり者で、歩けるようになってからは、毎日のように私のもとにあいさつに来る。夕方にはその日の出来事を話すが、私はこの家のことは子どもよりもよく知っていた。
 それでも、子どもが話すことは新鮮に聞こえた。

 ある日、子どもは小さな白い花がついた草を持ってきて、私の前に供えた。

「これはニラの花だよ。秋に咲く雪とも呼ばれてるんだって。素敵でしょ」

 前歯の抜けた顔で、子どもはにっこりと笑った。
 なんとも間抜けで、愛おしい。

「あなたはずっとここにいるから、お星様のことを知らないんじゃないかと思ったの。このお花みたいで、とっても綺麗なんだよ」

 お前は知らないだろう。屋根の上に広がる、満開の星空を。
 そのどの星々よりも、子どもの目に輝く光のほうが綺麗だということを。

 ――ああ、美しい桃家よ。美しい人々よ。私はお前達を守っていこう

 改めて、そう思っていたのに。
 
 ――いったい誰が、あの子を傷つけたのだ。私はあの子を守らねばならない。


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