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四
ふたりの赤城 ── 山が抱く二つの魂
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赤城の祠。
赤城山の神が王座に座って高みの見物をしている。
神を目指す人間たちが集まっている。
舞台中央中段に妖魔。
その他無数の百足が景気のいい音楽にのって盛り上げている。
神の基準 (曲:基準 約1:35)
ふざけんじゃねぇ 男体山
うぜぇ うざってぇ クソ大神
ただの怪力 あたまからっぽ 負けた俺たちかなりサイテー
むしゃくしゃする 体変える 集めて選ぶ人間ども
体探せ 体探せ 前より強い体探せ
神は選ぶ 体選ぶ 強さ選ぶ 人を選ぶ
ちょっといい?殺しあっいていい?
残った奴が神でいい?
あ~んこれは試練 あ~んこれは試験
神になるのは誰なのか 妖魔の世界はどこなのか
弱者 敗者 死者は排除
差別じゃないよ 区別しないと
戦え人間神は一人 残った奴が神の「基準」
赤城の山を真っ赤に染めろ お前の命で真っ赤に染めろ
赤城の山を真っ赤に染めろ お前の命で真っ赤に染めろ(フェードアウト)
赤城山の神 「(椅子から立ち上がり)始めろ。」
人間達の殺し合いが始まる。
暗転。
場面は赤城山の山道。
見張りのカラスとフクロウが佇む。
カラス 「カー……ついてねぇべ。なんで俺がこんな外れ見張り役なんだよ。神選びの武道会、観たかったのになぁ。」
フクロウ 「ホー、全くだ。死人の肉くらい残してくれりゃいいがのう。」
カラス 「カー……それにしても、人間限定って差別じゃねぇの?俺だって赤城山の神になりたかったべよ。」
フクロウ 「ホー、仕方ねぇべ。知恵のある人間がこの世で最強だかんな。」
カラス 「カー、人間なんざ俺のくちばし一撃でダウンだべ。」
フクロウ 「ホー、自信満々だな。でもよ、俺たちは妖魔付きだから赤城様の神体は乗り移れねぇべ。」
カラス 「カー、でもなフクちゃん。誰にも内緒だぞ。俺が本気出せば、赤城様だって赤子同然だべ。」
フクロウ 「ホー、赤子って……お前、どんだけ実力隠してんだよ。それじゃ俺はお前についてくしかねぇな。」
カラス 「カー、その通りだべ。俺はこれまでは赤城様に媚びてただけだから。これからは俺のこと「おカー様」って呼べ。」
フクロウ 「カー様って…お母さんじゃねえんだから。(遠くに人影を見つける)おっと、カッちゃん、獲物が来たぞ。」
カラス 「カー様って呼べって言ってんべ!しゃあね、俺の力、見せてやっからよ!一撃だ一撃。」
カラスとフクロウ、赤城の目前に舞い降りる。赤城はまだ気付かない
カラス 「カー……そこの人間!妖魔が蠢く赤城山をよくも登ってきたな。」
赤城 「お前たちは……。」
フクロウ 「ホー、人間よ。神選びの大会はもう始まってる。赤城様はルーズな奴が大嫌い。つまり、お前は食われるしかねぇってわけだホーッホッホー。」
カラス 「カー……不運を呪え。俺のくちばし一撃で──ん?この顔、見覚えが……あれ?あかぁ…あかぁ…あかぁ~!」
フクロウ 「ホー、どうしたカラス?鳴きっぱなしじゃねぇか。」
赤城 「久しぶりだな、カラス、フクロウ。」
フクロウ 「ホー?久しぶり?人間に知り合いいたか?……って、赤城様!?」
赤城 「ああ、俺だ。」
フクロウ 「ホー、これは手強そうだべ。でも、ここには妖魔の中の妖魔、おカー様がいるべ!お前なんざ赤子同然だ!」
赤城 「ああ?(鋭い眼光をカラスに向ける)」
カラス 「カー……フクちゃん、何言ってんだよ。赤城様に失礼だべ。」
フクロウ 「ホー、そうだ失礼、ホ?(驚いてカラスを見る)」
カラス 「カー……まさか赤城様とは気付かず…失礼しました!神体の赤城様は祠に戻られて以来、次の体を探しておられます。今は人間同士を戦わせ、最強の肉体を選んでいる最中なんです。」
フクロウ 「ホー、お前、なんで戦わねぇんだよ!」
カラス 「うるせぇ!赤城様の体を壊したら神罰が下るんだ!黙っとけ!」
赤城 「…噂は本当だったか。なら急いで戻らねば。お前たち、先に神体に伝えておけ。「俺が帰ってきた」と。」
カラス 「カー、承知しました!行くべ、フクちゃん!」
フクロウ 「ホー、お前の本気は、いつ見られんだ?」
二匹、慌てて退場
赤城 「嫌な予感がする…。」
暗転。
再び赤城山の祠前。
既に生き残りは二人になっていた。
赤城の山を真っ赤に染めろコールが鳴り響く。
熊の不動 「残ったのは俺たち二人か。赤城一の怪力、熊の不動とはこの俺だ。命が惜しけりゃ、今すぐ逃げな。」
盗賊の十朗 「へっ、死ぬ奴に名乗るのも変だがな。俺は盗賊、十朗。切り刻んで妖魔の餌にしてやるぜ、ひゃっはー!」
二人が激突。
熊の不動が倒れる。
盗賊の十朗 「勝った!俺が神だ!ひゃっはー!」
カラスとフクロウが駆け込む。
カラス 「カー!赤城様、大変です! 」
赤城山の神 「今いいところだ。邪魔するな。」
フクロウ 「ホー…赤城様の人体が戻られました。もうすぐここに…。」
赤城山の神 「人体…生きていたのか。分かった、下がれ。」
カラスとフクロウ、顔を見合わせて退場。
赤城登場。
熊の不動の亡骸に駆け寄る。
赤城 「これは…死んでいる…。神体、これは何だ? 」
赤城山の神 「肉体が失われたから、次の器を選んでいた。目の前の男が、次の俺だ。」
赤城 「なぜ殺し合いを?命を奪う必要などないはずだ。」
赤城山の神 「俺が男体山の神に敗れたからだ。だから、より強い肉体を求めた。それが悪いか? 」
赤城 「他者の命を犠牲にしてまで得る力に、神の意味はあるのか?」
妖魔が死体を片付ける
盗賊の十朗 「待て!約束通り、集まった連中は全部ぶっ殺した。さあ、神の力をよこせ!」
赤城山の神 「約束は守る。だが、まだ一人残っている。」
盗賊の十朗 「ちっ…そういうことか。(構える)」
赤城 「待て。俺は戦うつもりはない。 」
盗賊の十朗 「じゃあ何しに来た? 」
赤城 「神体と一つになるために。」
盗賊の十朗 「同じじゃねぇか!ふざけんな! 」
赤城 「お前は神になって何をする? 」
盗賊の十朗 「富と権力を手に入れる。」
赤城 「それを手に入れて、どうする?」
盗賊の十朗 「手に入れてから考えるさ!いくぞ!」
十朗が切りかかる。赤城、紙一重でかわす
赤城 「富も権力も、神にならずとも得られる。」
盗賊の十朗 「うるせえ!お前に俺のクソな人生が分かるか、俺は奪う事しかできねえ、だから神も奪ってやる。」
赤城 「俺は赤城山を守りたいだけだ。」
盗賊の十朗 「焼け焦げた山を守る?それじゃ神じゃなくて悪魔だな! 」
赤城 「…なんだと?」
盗賊の十朗 「怒ったか?面白え。」
赤城 「神体よ、この戦いは無意味だ。止めさせろ。」
盗賊の十朗 「どうする、赤城の神さん? 」
赤城山の神 「勝った方が神だ。戦え。」
赤城 「貴様…! 」
赤城山の神 「弱い者に興味はない。」
十朗が連続で切りかかる。赤城、必死にかわす。
盗賊の十朗 「逃げ方だけはうめえな。」
赤城 「神になっても、幸せにはなれんぞ。」
盗賊の十朗 「腰抜けが!かかってこいよ!」
赤城 「お前は…盗賊の十朗だな。」
盗賊の十朗 「なんだと?俺はてめえなんか知らねえぞ。」
赤城 「俺はお前が生まれた時から知っている。」
盗賊の十朗 「イカレたか?殺してやるよ!」
十朗が連続で斬りかかる。
赤城、懐に飛び込み手元を抑える。
赤城 「お前は奪うことしか知らない。だから誰にも愛されず、誰も信じない。」
盗賊の十朗 「それがどうした!生きるとは奪うことだ! 」
赤城 「違う。お前に必要なのは── 」
盗賊の十朗 「なんだってんだよ! 」
赤城 「神の力でもない。 」
盗賊の十朗 「聞き飽きた! 」
赤城 「与えて得る心だ!」
十朗が一瞬止まる。
暗転。
影声で。
十朗(幼少)「母ちゃん…腹減ったよ…。」
村の子 「やーい、貧乏十郎ー。」
照明戻る。
盗賊の十朗 「…誰が与えてくれんだよ!」
十朗、赤城を蹴り飛ばす。
盗賊の十朗 「俺に神の座をよこせ! 」
赤城 「聞け、十朗! 」
盗賊の十朗 「死ねぇ!」
華厳の神通力が発動。時が止まる。
赤城 「…時が止まった?今しかない!」
赤城、十朗の攻撃をかわし、強烈な一撃を叩き込む。十朗、吹き飛ぶ。時が再び動き出す。
盗賊の十朗 「な、何が…?一度でいい…俺に…あ…(気を失う)」
赤城山の神、立ち上がる。百足軍がどよめく。
赤城 「…十朗。奪うだけの世界はあまりに寂しいだろう…。」
百足達の、歓声とどよめきが起こる。手下の妖魔が死体を片付ける。
赤城山の神 「貴様…何をした? 」
赤城 「…… 」
赤城山の神 「語らぬか。ならば、どうやって生き延びた?」
赤城 「…… 」
赤城山の神 「捨てたことを恨んでいるのか?」
赤城 「いや…神体よ。」
赤城山の神 「言え。」
赤城 「お前は、人体を得て何を望む?」
赤城山の神 「大神となり、二荒を征す。」
赤城 「ならば、もう争う必要はない。」
赤城山の神 「どういう意味だ?」
赤城 「語らずとも、一つになれば分かるだろう。」
赤城山の神 「……その力、俺の欲するところだ。」
赤城 「では戻ろう。我ら、もとは一つ。」
赤城山の神 「もとは一つ。」
赤城・赤城山の神(同時) 「いざ、一つに戻らん!」
二人が片手を合わせる。
音楽「その血の記憶」開始。
鏡のような動きで融合。
赤城山の神 「戻った…ふははは。男体山の神よ、今度こそ息の根を──なに!?」
赤城 「待て!そんなことをせずとも、華厳と私は──うっ…! 」
赤城山の神 「俺が求めたのは華厳だけではない! 」
赤
城 「ぐう…大神になれば、我らの望みは叶うだろう!」
赤城山の神 「忘れたか!大神の力だけではない。妖魔が生きるは神の魂が必要だ!それこそが妖魔の命を繋ぐ唯一の道!」
赤城 「分かってくれ…誰かを想い、共に過ごす時間こそが命の輝きだ! 」
赤城山の神 「救った命を捨てるのか! ならぬ…ならぬぞぉ!生こそ全て——…生きてこそ命!」
赤城 「命を踏みにじり、犠牲を重ねて何の神だ!」
赤城山の神 「命を守るため、お前の魂
を俺にくれ!(妖魔の声 捧げろぉ…もっとだ…もっと捧げろぉ!)」
赤城 「やめろ!俺は過去を受け入れた! 」
赤城山の神 「俺は赤城、魂は妖魔に売った!」
赤城 「華厳…俺に力を! 奪うためじゃない、共に生きるために!」
赤城、華厳のネックレスを握りしめる。
赤城・赤城山の神(同時) 「ぬあああああ! 俺は赤城!赤城山の命を── 」
赤城 「取り戻す、赤城だ!」
赤城山の神 「守り抜く、赤城だ!」
沈黙。自身を見つめ、確かめる赤城。赤城山の神は退場。
赤城は椅子に座り、虚空を見つめる。
取り巻きの百足達も静まり返る。
しばらくして赤城は取り巻きの百足達見回す、百足達は小さく赤城様、赤城様と何かを懇願するように口々に呼びかける。
赤城 「妖魔は妖魔でしか生きられん…。お前達、もう元の姿には戻れないなのだな…。」
妖魔が現れ、赤城の背後に立つ。
妖魔 「そう、おまえはもう、逃げられない。」
妖魔は赤城に妖魔の仮面をつけて消える。ゆっくりと椅子から立ち上がる赤城。
赤城(魔人)「者ども聞けい!お前たちの神、赤城は今復活した。」
百足達の歓声が湧き上がる。
赤城(魔人)「赤城の国の全妖魔に告ぐ。戦だ!戦の支度をしろ!今度こそ男体を倒し、やつの魂を食らうのだ!男体を、二荒の地を真っ赤に染めろ!」
熱狂する百足達。赤城、赤城と赤城コールが鳴り響く。笑う妖魔の声が鳴り響く。
上手花道の子供たちに照明切り替え。
龍之介 「おい!勇気!赤城が悪い赤城に戻っちゃったぞ!」
興奮してる龍之介。勇気の肩をつかんで前後に大きくゆする。勇気の首が大きく前後する。
愛 「やめなさいよ龍之介。あーん、でもどうして悪い赤城になっちゃうの?」
勇気 「…でも、赤城山の神って本当に悪い神様なのかなあ?」
美森 「うん、赤城山を守ろうと必死だった。」
愛 「でも華厳との約束はどうなるのよ。」
龍之介 「そうだなあ。」
勇気 「僕、複雑だよ。」
カッコウ。カッコウ。とカッコウが鳴く。徐々に静かな湖畔が聞こえてくる。
愛 「あれ、カッコウが鳴いたわよ。」
勇気 「うん、鳴いた。」
美森 「みんな聞いてカッコウの歌が!」
愛 「なに?何が起きてるの?」
静かな湖畔の輪唱がどんどん大きくなってくる。舞台中央奥が光り輝く。カッコウの歌が終わると、なかよしが現れる。
なかよし 「レディース・アンド・ジェントルメン、戦場ヶ原の伝説の舞台へようこそ、私が夢の世界の案内人、その名も、な・か・よ・し!ラブ・アンド・ピース。」
一見執事風のダンディなおじさんだが、操り人形のような怪しい動きをする上に、肩にカッコウの人形を乗せている。ポカンとする四人。
愛 「おじさん…。誰?」
なかよし 「夢の世界の案内人。」
びよ~んと、怪しいポーズを決めるなかよし。
楽しげな音楽(エドムントロスオーケストラの軍艦マーチ)。
緞帳下げ。
なかよし 「あれ、なんで幕下がっちゃうの?出てきたばっかりなのに?えっちょと…後半につづく!」
赤城山の神が王座に座って高みの見物をしている。
神を目指す人間たちが集まっている。
舞台中央中段に妖魔。
その他無数の百足が景気のいい音楽にのって盛り上げている。
神の基準 (曲:基準 約1:35)
ふざけんじゃねぇ 男体山
うぜぇ うざってぇ クソ大神
ただの怪力 あたまからっぽ 負けた俺たちかなりサイテー
むしゃくしゃする 体変える 集めて選ぶ人間ども
体探せ 体探せ 前より強い体探せ
神は選ぶ 体選ぶ 強さ選ぶ 人を選ぶ
ちょっといい?殺しあっいていい?
残った奴が神でいい?
あ~んこれは試練 あ~んこれは試験
神になるのは誰なのか 妖魔の世界はどこなのか
弱者 敗者 死者は排除
差別じゃないよ 区別しないと
戦え人間神は一人 残った奴が神の「基準」
赤城の山を真っ赤に染めろ お前の命で真っ赤に染めろ
赤城の山を真っ赤に染めろ お前の命で真っ赤に染めろ(フェードアウト)
赤城山の神 「(椅子から立ち上がり)始めろ。」
人間達の殺し合いが始まる。
暗転。
場面は赤城山の山道。
見張りのカラスとフクロウが佇む。
カラス 「カー……ついてねぇべ。なんで俺がこんな外れ見張り役なんだよ。神選びの武道会、観たかったのになぁ。」
フクロウ 「ホー、全くだ。死人の肉くらい残してくれりゃいいがのう。」
カラス 「カー……それにしても、人間限定って差別じゃねぇの?俺だって赤城山の神になりたかったべよ。」
フクロウ 「ホー、仕方ねぇべ。知恵のある人間がこの世で最強だかんな。」
カラス 「カー、人間なんざ俺のくちばし一撃でダウンだべ。」
フクロウ 「ホー、自信満々だな。でもよ、俺たちは妖魔付きだから赤城様の神体は乗り移れねぇべ。」
カラス 「カー、でもなフクちゃん。誰にも内緒だぞ。俺が本気出せば、赤城様だって赤子同然だべ。」
フクロウ 「ホー、赤子って……お前、どんだけ実力隠してんだよ。それじゃ俺はお前についてくしかねぇな。」
カラス 「カー、その通りだべ。俺はこれまでは赤城様に媚びてただけだから。これからは俺のこと「おカー様」って呼べ。」
フクロウ 「カー様って…お母さんじゃねえんだから。(遠くに人影を見つける)おっと、カッちゃん、獲物が来たぞ。」
カラス 「カー様って呼べって言ってんべ!しゃあね、俺の力、見せてやっからよ!一撃だ一撃。」
カラスとフクロウ、赤城の目前に舞い降りる。赤城はまだ気付かない
カラス 「カー……そこの人間!妖魔が蠢く赤城山をよくも登ってきたな。」
赤城 「お前たちは……。」
フクロウ 「ホー、人間よ。神選びの大会はもう始まってる。赤城様はルーズな奴が大嫌い。つまり、お前は食われるしかねぇってわけだホーッホッホー。」
カラス 「カー……不運を呪え。俺のくちばし一撃で──ん?この顔、見覚えが……あれ?あかぁ…あかぁ…あかぁ~!」
フクロウ 「ホー、どうしたカラス?鳴きっぱなしじゃねぇか。」
赤城 「久しぶりだな、カラス、フクロウ。」
フクロウ 「ホー?久しぶり?人間に知り合いいたか?……って、赤城様!?」
赤城 「ああ、俺だ。」
フクロウ 「ホー、これは手強そうだべ。でも、ここには妖魔の中の妖魔、おカー様がいるべ!お前なんざ赤子同然だ!」
赤城 「ああ?(鋭い眼光をカラスに向ける)」
カラス 「カー……フクちゃん、何言ってんだよ。赤城様に失礼だべ。」
フクロウ 「ホー、そうだ失礼、ホ?(驚いてカラスを見る)」
カラス 「カー……まさか赤城様とは気付かず…失礼しました!神体の赤城様は祠に戻られて以来、次の体を探しておられます。今は人間同士を戦わせ、最強の肉体を選んでいる最中なんです。」
フクロウ 「ホー、お前、なんで戦わねぇんだよ!」
カラス 「うるせぇ!赤城様の体を壊したら神罰が下るんだ!黙っとけ!」
赤城 「…噂は本当だったか。なら急いで戻らねば。お前たち、先に神体に伝えておけ。「俺が帰ってきた」と。」
カラス 「カー、承知しました!行くべ、フクちゃん!」
フクロウ 「ホー、お前の本気は、いつ見られんだ?」
二匹、慌てて退場
赤城 「嫌な予感がする…。」
暗転。
再び赤城山の祠前。
既に生き残りは二人になっていた。
赤城の山を真っ赤に染めろコールが鳴り響く。
熊の不動 「残ったのは俺たち二人か。赤城一の怪力、熊の不動とはこの俺だ。命が惜しけりゃ、今すぐ逃げな。」
盗賊の十朗 「へっ、死ぬ奴に名乗るのも変だがな。俺は盗賊、十朗。切り刻んで妖魔の餌にしてやるぜ、ひゃっはー!」
二人が激突。
熊の不動が倒れる。
盗賊の十朗 「勝った!俺が神だ!ひゃっはー!」
カラスとフクロウが駆け込む。
カラス 「カー!赤城様、大変です! 」
赤城山の神 「今いいところだ。邪魔するな。」
フクロウ 「ホー…赤城様の人体が戻られました。もうすぐここに…。」
赤城山の神 「人体…生きていたのか。分かった、下がれ。」
カラスとフクロウ、顔を見合わせて退場。
赤城登場。
熊の不動の亡骸に駆け寄る。
赤城 「これは…死んでいる…。神体、これは何だ? 」
赤城山の神 「肉体が失われたから、次の器を選んでいた。目の前の男が、次の俺だ。」
赤城 「なぜ殺し合いを?命を奪う必要などないはずだ。」
赤城山の神 「俺が男体山の神に敗れたからだ。だから、より強い肉体を求めた。それが悪いか? 」
赤城 「他者の命を犠牲にしてまで得る力に、神の意味はあるのか?」
妖魔が死体を片付ける
盗賊の十朗 「待て!約束通り、集まった連中は全部ぶっ殺した。さあ、神の力をよこせ!」
赤城山の神 「約束は守る。だが、まだ一人残っている。」
盗賊の十朗 「ちっ…そういうことか。(構える)」
赤城 「待て。俺は戦うつもりはない。 」
盗賊の十朗 「じゃあ何しに来た? 」
赤城 「神体と一つになるために。」
盗賊の十朗 「同じじゃねぇか!ふざけんな! 」
赤城 「お前は神になって何をする? 」
盗賊の十朗 「富と権力を手に入れる。」
赤城 「それを手に入れて、どうする?」
盗賊の十朗 「手に入れてから考えるさ!いくぞ!」
十朗が切りかかる。赤城、紙一重でかわす
赤城 「富も権力も、神にならずとも得られる。」
盗賊の十朗 「うるせえ!お前に俺のクソな人生が分かるか、俺は奪う事しかできねえ、だから神も奪ってやる。」
赤城 「俺は赤城山を守りたいだけだ。」
盗賊の十朗 「焼け焦げた山を守る?それじゃ神じゃなくて悪魔だな! 」
赤城 「…なんだと?」
盗賊の十朗 「怒ったか?面白え。」
赤城 「神体よ、この戦いは無意味だ。止めさせろ。」
盗賊の十朗 「どうする、赤城の神さん? 」
赤城山の神 「勝った方が神だ。戦え。」
赤城 「貴様…! 」
赤城山の神 「弱い者に興味はない。」
十朗が連続で切りかかる。赤城、必死にかわす。
盗賊の十朗 「逃げ方だけはうめえな。」
赤城 「神になっても、幸せにはなれんぞ。」
盗賊の十朗 「腰抜けが!かかってこいよ!」
赤城 「お前は…盗賊の十朗だな。」
盗賊の十朗 「なんだと?俺はてめえなんか知らねえぞ。」
赤城 「俺はお前が生まれた時から知っている。」
盗賊の十朗 「イカレたか?殺してやるよ!」
十朗が連続で斬りかかる。
赤城、懐に飛び込み手元を抑える。
赤城 「お前は奪うことしか知らない。だから誰にも愛されず、誰も信じない。」
盗賊の十朗 「それがどうした!生きるとは奪うことだ! 」
赤城 「違う。お前に必要なのは── 」
盗賊の十朗 「なんだってんだよ! 」
赤城 「神の力でもない。 」
盗賊の十朗 「聞き飽きた! 」
赤城 「与えて得る心だ!」
十朗が一瞬止まる。
暗転。
影声で。
十朗(幼少)「母ちゃん…腹減ったよ…。」
村の子 「やーい、貧乏十郎ー。」
照明戻る。
盗賊の十朗 「…誰が与えてくれんだよ!」
十朗、赤城を蹴り飛ばす。
盗賊の十朗 「俺に神の座をよこせ! 」
赤城 「聞け、十朗! 」
盗賊の十朗 「死ねぇ!」
華厳の神通力が発動。時が止まる。
赤城 「…時が止まった?今しかない!」
赤城、十朗の攻撃をかわし、強烈な一撃を叩き込む。十朗、吹き飛ぶ。時が再び動き出す。
盗賊の十朗 「な、何が…?一度でいい…俺に…あ…(気を失う)」
赤城山の神、立ち上がる。百足軍がどよめく。
赤城 「…十朗。奪うだけの世界はあまりに寂しいだろう…。」
百足達の、歓声とどよめきが起こる。手下の妖魔が死体を片付ける。
赤城山の神 「貴様…何をした? 」
赤城 「…… 」
赤城山の神 「語らぬか。ならば、どうやって生き延びた?」
赤城 「…… 」
赤城山の神 「捨てたことを恨んでいるのか?」
赤城 「いや…神体よ。」
赤城山の神 「言え。」
赤城 「お前は、人体を得て何を望む?」
赤城山の神 「大神となり、二荒を征す。」
赤城 「ならば、もう争う必要はない。」
赤城山の神 「どういう意味だ?」
赤城 「語らずとも、一つになれば分かるだろう。」
赤城山の神 「……その力、俺の欲するところだ。」
赤城 「では戻ろう。我ら、もとは一つ。」
赤城山の神 「もとは一つ。」
赤城・赤城山の神(同時) 「いざ、一つに戻らん!」
二人が片手を合わせる。
音楽「その血の記憶」開始。
鏡のような動きで融合。
赤城山の神 「戻った…ふははは。男体山の神よ、今度こそ息の根を──なに!?」
赤城 「待て!そんなことをせずとも、華厳と私は──うっ…! 」
赤城山の神 「俺が求めたのは華厳だけではない! 」
赤
城 「ぐう…大神になれば、我らの望みは叶うだろう!」
赤城山の神 「忘れたか!大神の力だけではない。妖魔が生きるは神の魂が必要だ!それこそが妖魔の命を繋ぐ唯一の道!」
赤城 「分かってくれ…誰かを想い、共に過ごす時間こそが命の輝きだ! 」
赤城山の神 「救った命を捨てるのか! ならぬ…ならぬぞぉ!生こそ全て——…生きてこそ命!」
赤城 「命を踏みにじり、犠牲を重ねて何の神だ!」
赤城山の神 「命を守るため、お前の魂
を俺にくれ!(妖魔の声 捧げろぉ…もっとだ…もっと捧げろぉ!)」
赤城 「やめろ!俺は過去を受け入れた! 」
赤城山の神 「俺は赤城、魂は妖魔に売った!」
赤城 「華厳…俺に力を! 奪うためじゃない、共に生きるために!」
赤城、華厳のネックレスを握りしめる。
赤城・赤城山の神(同時) 「ぬあああああ! 俺は赤城!赤城山の命を── 」
赤城 「取り戻す、赤城だ!」
赤城山の神 「守り抜く、赤城だ!」
沈黙。自身を見つめ、確かめる赤城。赤城山の神は退場。
赤城は椅子に座り、虚空を見つめる。
取り巻きの百足達も静まり返る。
しばらくして赤城は取り巻きの百足達見回す、百足達は小さく赤城様、赤城様と何かを懇願するように口々に呼びかける。
赤城 「妖魔は妖魔でしか生きられん…。お前達、もう元の姿には戻れないなのだな…。」
妖魔が現れ、赤城の背後に立つ。
妖魔 「そう、おまえはもう、逃げられない。」
妖魔は赤城に妖魔の仮面をつけて消える。ゆっくりと椅子から立ち上がる赤城。
赤城(魔人)「者ども聞けい!お前たちの神、赤城は今復活した。」
百足達の歓声が湧き上がる。
赤城(魔人)「赤城の国の全妖魔に告ぐ。戦だ!戦の支度をしろ!今度こそ男体を倒し、やつの魂を食らうのだ!男体を、二荒の地を真っ赤に染めろ!」
熱狂する百足達。赤城、赤城と赤城コールが鳴り響く。笑う妖魔の声が鳴り響く。
上手花道の子供たちに照明切り替え。
龍之介 「おい!勇気!赤城が悪い赤城に戻っちゃったぞ!」
興奮してる龍之介。勇気の肩をつかんで前後に大きくゆする。勇気の首が大きく前後する。
愛 「やめなさいよ龍之介。あーん、でもどうして悪い赤城になっちゃうの?」
勇気 「…でも、赤城山の神って本当に悪い神様なのかなあ?」
美森 「うん、赤城山を守ろうと必死だった。」
愛 「でも華厳との約束はどうなるのよ。」
龍之介 「そうだなあ。」
勇気 「僕、複雑だよ。」
カッコウ。カッコウ。とカッコウが鳴く。徐々に静かな湖畔が聞こえてくる。
愛 「あれ、カッコウが鳴いたわよ。」
勇気 「うん、鳴いた。」
美森 「みんな聞いてカッコウの歌が!」
愛 「なに?何が起きてるの?」
静かな湖畔の輪唱がどんどん大きくなってくる。舞台中央奥が光り輝く。カッコウの歌が終わると、なかよしが現れる。
なかよし 「レディース・アンド・ジェントルメン、戦場ヶ原の伝説の舞台へようこそ、私が夢の世界の案内人、その名も、な・か・よ・し!ラブ・アンド・ピース。」
一見執事風のダンディなおじさんだが、操り人形のような怪しい動きをする上に、肩にカッコウの人形を乗せている。ポカンとする四人。
愛 「おじさん…。誰?」
なかよし 「夢の世界の案内人。」
びよ~んと、怪しいポーズを決めるなかよし。
楽しげな音楽(エドムントロスオーケストラの軍艦マーチ)。
緞帳下げ。
なかよし 「あれ、なんで幕下がっちゃうの?出てきたばっかりなのに?えっちょと…後半につづく!」
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