捨てられた転生幼女は無自重無双する

紅 蓮也

文字の大きさ
1 / 114
序章

第1話 疎まれている理由

しおりを挟む
 スクラルド王国の筆頭公爵家の次女として生を受けたアイリス・フォン・アリステラは、銀髪に紫と深紅のオッドアイという容姿のため、優しく接してくれるのは次期当主である年の離れた兄と兄がつけてくれたアイリスの専属メイドとアイリスに拾われ恩義のある専属騎士だけだった。

 兄以外の血の繋がった家族からもそのほかの使用人からもアイリスは疎まれていたからだ。


「煩いぞ。アリス、お前は専属メイドなのだから、そいつを静かにさせるか部屋へ連れていけ」

「本当ですよ、イルムと私から生まれたのにそんな容姿で生まれてくるなんて最悪ですわ」

「なら、王家や他の公爵家では喜ばれるみたいですから、養子に出してしまってはどうですか」

「ついでに、その専属メイドと専属騎士もつけてやればいい」

「そうですわね。王城に獣人の使用人がいるのは王国の恥になりますから王家には出すのはダメですが、他の公爵家になら養子にした家の汚点になりますから。蹴落とすのに丁度いいので、ありかもしれませんわね」

「そうなんだが、この容姿だから万が一稀少なスキルを持っていた場合にその家の力が強くなってしまうかもしれんな」

「では、専属メイドのアリスと獣人の専属騎士はクビにして、忌み子は魔の森に捨ててくるのはどうですかね」

 泣いているアイリスや専属メイドのアリスに向けて、当主と夫人に使用人までもが好き勝手に言っている。

「かしこまりました」

 当主が叩いたため、痛くて泣いたのでしょうがとアリスは苛立ちを感じていたが、当主に反発するわけにもいかないのでアイリスを部屋に連れていった。
  
 王家や王家の血を濃く受け継ぐ公爵家では、稀少なスキルや膨大な魔力を持ち、名君といわれる者や歴史に名を残す者が生まれてくることがある。

 そういう者たちは伝承にある神と同じ銀髪、紫と深紅のオッドアイの両方またはどちらかを持って生まれてくるか、あるいは色が違うがオッドアイで生まれてくる。

 なので、王家や公爵家ではそのような容姿の子供が生まれると喜ばれ大切にされるのだが、筆頭公爵家であるアリステラ公爵家では違う。

 アリステラ公爵家では、以前は王家や他の公爵家同様に生まれてくると喜んでいた。

 ある時、アイリスと同じ容姿の子が生まれたのだが、公爵家の子なのに全く魔力を持っていなかった。ならばと稀少なスキルに期待したがスキルも持っていないことが判明した。

 無能と判明した数年後に、もともと公爵領は魔の森に接していているのだが、今まで一度もなかった魔の森からたくさんの魔物が出て来るという事件が起きた。

 そして公爵家を襲い、屋敷内にいた当時の当主、第二夫人、次の当主となった第二夫人との子を除く、第一夫人と第一夫人の子で次期当主となるはずだった子、無能と判明した子や使用人を殺して魔物は魔の森に戻っていった。

 同じことが再び起こることを恐れた当主たちは、領民を捨て王都に逃げた。当主からの報告を聞いた当時の国王は魔の森とアリステラ領の境に外壁を造らせた。

 当主たちは、元の屋敷には戻らずに領地内の王都から程近い場所に新たに屋敷を建てた。

 それが、今のアリステラ公爵家の屋敷である。
 そして、魔物が魔の森から出て来たのも、屋敷が襲われ第一夫人と第一夫人の子、第一夫人達と一緒にいた使用人たちが死んだのも、すべて無能と判明した子の所為だと、当時の当主は、考えたのだ。

 その後、アリステラ公爵家では、銀髪で紫と深紅のオッドアイの子は忌み子とされるようになったのである。
しおりを挟む
感想 152

あなたにおすすめの小説

【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。  なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!  冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。  ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。  そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

幼馴染パーティーから追放された冒険者~所持していたユニークスキルは限界突破でした~レベル1から始まる成り上がりストーリー

すもも太郎
ファンタジー
 この世界は個人ごとにレベルの上限が決まっていて、それが本人の資質として死ぬまで変えられません。(伝説の勇者でレベル65)  主人公テイジンは能力を封印されて生まれた。それはレベルキャップ1という特大のハンデだったが、それ故に幼馴染パーティーとの冒険によって莫大な経験値を積み上げる事が出来ていた。(ギャップボーナス最大化状態)  しかし、レベルは1から一切上がらないまま、免許の更新期限が過ぎてギルドを首になり絶望する。  命を投げ出す決意で訪れた死と再生の洞窟でテイジンの封印が解け、ユニークスキル”限界突破”を手にする。その後、自分の力を知らず知らずに発揮していき、周囲を驚かせながらも一人旅をつづけようとするが‥‥ ※1話1500文字くらいで書いております

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

魔法物語 - 倒したモンスターの魔法を習得する加護がチートすぎる件について -

花京院 光
ファンタジー
全ての生命が生まれながらにして持つ魔力。 魔力によって作られる魔法は、日常生活を潤し、モンスターの魔の手から地域を守る。 十五歳の誕生日を迎え、魔術師になる夢を叶えるために、俺は魔法都市を目指して旅に出た。 俺は旅の途中で、「討伐したモンスターの魔法を習得する」という反則的な加護を手に入れた……。 モンスターが巣食う剣と魔法の世界で、チート級の能力に慢心しない主人公が、努力を重ねて魔術師を目指す物語です。

スラム街の幼女、魔導書を拾う。

海夏世もみじ
ファンタジー
 スラム街でたくましく生きている六歳の幼女エシラはある日、貴族のゴミ捨て場で一冊の本を拾う。その本は一人たりとも契約できた者はいない伝説の魔導書だったが、彼女はなぜか契約できてしまう。  それからというもの、様々なトラブルに巻き込まれいくうちにみるみる強くなり、スラム街から世界へと羽ばたいて行く。  これは、その魔導書で人々の忘れ物を取り戻してゆき、決して忘れない、忘れられない〝忘れじの魔女〟として生きるための物語。

処理中です...