スキルを極めろ!

アルテミス

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276 結界を貫く剣

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#276 結界を貫く剣

 カンカルーの腹袋を納品すると、報酬の金貨10枚をもらった。どうやら状態は満足できる鮮度だったらしく、満額で引き取ってもらえた。

「ジン様、このとうもろこしは?」

 リリアが俺の持って帰ったとうもろこしに気づいて問いかけてきたが、これはちゃんと調理してもらわないといけない。

「ああ、跳びコーンとか言う魔物の素材だ。パンケーキを作ってくれないか?」

「跳びコーンですか。聞かない魔物ですね。食べれるんですよね?」

「ああ、採取の依頼があったくらいだから食べれるはずだ。パンケーキにするのは難しいのか?」

「いえ、粉末にして焼くだけなので難しくはないのですが、甘味が強いです。これほどの物ならバターも蜂蜜もいらないでしょうね。焼くだけで美味しそうですわ。ただ、乾燥させるのに一晩必要ですね。少しお時間をいただきます」

「それなら良かった。クレアが食べたがっていたから作ってやってくれ」

「あれ?ジン様は食べられないのですか?」

「ああ、俺はもう少しダンジョンに潜って来る。どうもゴブリンジェネラルが出なかったのが気になる」

「ジン様ってそんなに完璧主義でしたっけ?まあ気になるなら止めませんけど、ゴブリンジェネラルなんですよね?それなら危険もないでしょうし、頑張ってくださいね」

「あ、私はご一緒します」

「マリアもパンケーキ食べたいだろう?残ってて良いぞ。そんなに深く潜るつもりもないから」

「あうぅ」

 マリアもパンケーキは食べたかったようだ。別についてこなくても大丈夫だよ?地図もあるし、問題ない」

「あの、私は、、、」

「メアリーは残っていてくれ。セルジュ様との連絡係が必要だ」

「は、はい」

 別に誰が残ってても構わないからメアリーでなくても良いんだけどね。ダンジョンに連れて行くには不安要素がいっぱいだ。

「数日で戻って来る予定だけど、何かあったときのためにこれは渡しておく」

 今日の報酬の金貨10枚を渡しておく。また何かで俺がいなくなっても大丈夫なように。いや、何かある予感がするわけじゃないよ?ただ、万が一の保険は必要だと思うんだ。

「確かにお預かりしました。ジン様、ちゃんと帰ってきてくださいね?」

「もちろんだ。そう何回もトラップに引っかかるような間抜けじゃないつもりだ」

 フリじゃないよ?


 パンケーキを食べたい女性たちを残して早速ダンジョンに戻る。本当は一晩くらいゆっくりしたいところだが、あれだけ探してもジェネラルが出てこないのはおかしい。
 ギルドで揉めていた探索者だって10体倒してるのだ。全く見つからないのはおかしい。

 ダンジョンの5層を過ぎて、7層を過ぎて、9層。ようやく最初のゴブリンジェネラルを発見した。

 ん?なんか怪我してるような?

 まあ良い。大事なのは見つけたと言う事だ。今回も全く見つからなかったらギルドに報告しようと思ってたからな。

 さくっと首を刈って魔石を採取する。

 ふむ。背中から鋭利な刃物で斬られてるな。探索者から逃げ出してきたんだろうか?


 ざざっ!

 奥の方から何人かの足音が聞こえる。

「おい、そのゴブリンを倒したのはお前か?」

「ええ、私ですが、何か?」

「それは俺たちの獲物だ。魔石を渡してもらおうか」

 何勝手なこと言ってくれるの、こいつ。
 戦闘中ならともかく、逃げ出した魔物を倒したらそれは俺のものだ。

「沈黙は否定ととるぞ?!」

 おや、挑戦的だな。何か急ぐ必要でもあるのか?

「おい、かかれ!」

 いつの間にか2人に後ろに回り込まれていた。これは話しかけたのも、俺の注意をそらすためだと思った方がいいかな。

 後ろにいたのは、ハムスターのように可愛い耳をした獣人だった。全く戦闘が得意には見えないのだが、動きは素早く無駄がない。多分力ではなく、素早さで戦うのだろう。

 だけど、俺の敵ではない。剣で戦ったら結構苦戦しそうだが、魔法なら話は別だ。俺の風の刃は使い慣れてるだけあって、発動が早いのだ。

 後ろの男二人の両腕を切り飛ばす。話を聞きたいので殺すのは後回しだ。

「はっ!」

 後ろを振り向いたすきに話しかけてきていた男が切りかかってきた。連携が取れていたようで、俺の意識の隙間をつく絶妙なタイミングだ。

 だけど、俺もただ振り向いただけじゃない。切りかかって来るのは分かっていたから結界は張ってある。一撃を受け止めたらこいつも両腕を切り飛ばして。。。

 なっ!結界を突き抜けた?!

 男の剣が俺の結界を突き破って、俺の腕に突き刺さる。筋肉が切られたのか、腕が上がらなくなった。

 男はそのまま突きを繰り返して、俺の体を狙って来る。

「ちょ、ちょっと、待って、、、」

 いくら俺でも純粋な剣士と接近戦で戦うと不利は否めない。それも結界を突き抜ける剣を持ってるとなれば尚更だ。

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