女戦士の防御力が低すぎる!

みずがめ

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5.元凶現る

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 俺の背後から威圧してくる人物がいる。
 相手はわかっている。これだけの威圧感を忘れるってのが無理な話だ。

「お帰りなさいお父さん。どこへ行っていたんだ?」
「おおおおおぉぉぉぉぉう! 愛しのフィーナ! ごめんなお父さんいなくて心配したよな!」
「ううん、心配はしていなかったぞ」

 強面の大男がフィーナに抱きつこうと迫る。彼女はそれをひらりとかわした。慣れた動きである。

「ぶべっ!」

 目標を見失った大男は盛大にすっころんで床と熱いキスをした。
 ここだけ見れば残念な人物だろう。内面も残念だと俺は思っている。

「ふぃー。それでテッドくん。うちに何か用かな?」

 床との熱烈なキスを終えて、大男がゆっくりと立ち上がった。
 筋骨隆々な大男。額には斬られたのかなんなのか傷が残っている。それで強面なもんだから、もう怖いなんて一言じゃ済まない。
 それがフィーナの父親。名はフィリップだ。

「なあおじさん」
「おう」

 ニカッと笑顔を向けられる。獲物を前にした野獣の顔にしか見えなかった。

「フィーナにあの鎧をプレゼントしたんだって?」
「おう。高かったんだぜ、あのビキニアーマー」

 悪びれもせずそうのたまった。悪気がないからって悪くないってわけじゃないんだよ。
 やはりおじさんが元凶か。アリシアに目配せする。妹は力強く頷いた。

「それよりもよ」

 俺が口を開くよりも早く、おじさんが言葉を発した。

「フィーナの首にかかってるそれ、なんだ?」

 おじさんが指を差したのはフィーナの胸元……ではなく、そのやや上にある首飾りだった。

「これはテッドがプレゼントしてくれたんだ!」

 満面の笑顔で答えるフィーナ。嬉しそうに首飾りを撫でる。

「ほう……?」

 喜びを態度で示す娘とは対照的に、おじさんは表情を消して俺を睨みつける。強面を向けないでほしい。

「テッドくんが、うちの愛娘に、プレゼントを、贈ったって?」

 いちいち区切るなよ。顔以外も怖いおじさんだ。
 そんな怖い顔が壮絶な笑みの形となる。さらに怖さが増した。

「フィーナ、お父さんちょーっとテッドくんに用事ができた」
「それは俺もですよ。ちょーっとおじさんに用があります」

 二人で笑い合う。互いに目は笑っていなかった。

「そうなのか? なら──」
「行きましょうか」

 俺とおじさんは家を飛び出した。大地を蹴って景色を置き去りにする。俺達の速度にフィーナとアリシアはついてこられない。
 たどり着いたのは村はずれの開けた場所。

「ここでいいだろう」
「そうですね」

 おじさんと向かい合う。歴戦の戦士の威圧感が俺の肌を焼く。

「テッドくん」
「はい」

 俺とおじさんは同時に膝を曲げた。

「小童風情がうちの愛娘にプレゼントとはどういうことだーー!!」

 おじさんが跳躍する。全身の筋肉が膨れ上がったかと思えば、急降下して俺へと拳を落としてきた。

「クソジジイこそフィーナにあんな露出の激しい鎧をプレゼントって何考えてんだーー!!」

 俺も大地を削るほど踏み込み、力をみなぎらせて飛んだ。クソジジイを迎え撃って俺も拳を打ち出す。
 俺達の拳がぶつかり合い、轟音が鳴り響いた。
 拳が割れそうなほどの衝撃だ。あの筋肉は見た目以上のパワーを秘めている。

「ぐおおおおっ!!」

 だが負けられない。筋肉と魔力に任せてクソジジイを吹き飛ばした。

「その程度で勝ったと思うなよ!」

 クソジジイはでかい図体を空中でくるりと一回転、何事もなかったかのように着地した。
 それだけではない。すでに次の攻撃態勢へと移っていた。

「んなこと思ってねえよ!」

 もちろんそんなことは織り込み済みだ。次の攻撃をさせる前に顔面へと拳を叩き込んだ。
 大地が震えるほどの衝撃。確実に入った一撃だ。
 なのに、今度はクソジジイの体は地面に根を張ったみたいに動かなかった。

「くるとわかっていればこの程度耐えられるぜ」

 額から血を流しながら笑いやがった。

「ぐはぁっ!?」

 その硬直を狙われた。腹にクソジジイの一発をもらってしまった。
 凄まじい衝撃に襲われる。俺は吹き飛ばされて地面を一回二回とバウンドする。
 三回目でなんとか足から着地した。

「やるなクソジジイ」
「当然だろ。まだまだ小童には負けんさ」

 さすがは村一番の実力者である。昔は伝説級の冒険者ってのはハッタリじゃないのかもしれない。自分で言ってるだけだから全部を信じてるわけじゃないがな。
 いくらクソジジイが強かろうが、お互い剣を持っていないのだ。殴り合いで負けるわけにはいかない。
 二人して笑い合う。やはり目は笑っていなかった。

「フィーナにあんな格好させやがって……万死に値する!」
「フィーナたんはエロカワなのがいいんだろうが! その良さがわからねえガキが文句垂れてんじゃねえ!」

 フィーナのためにもここは負けるわけにはいかない!
 俺とクソジジイは距離を一瞬で縮め、どつき合いを続けた。それは日が傾き、夕焼けに染められても続けていた。タフだなクソジジイ!

「って、いつまで続ける気なのよ!!」

 俺とクソジジイの頭上から雷が落ちた。いや、比喩ではなく本当に。
 そんなことができるのは村でただ一人だけだ。
 村で一番の魔法の実力者。俺の妹、アリシアだけだ。
 妹の雷を、俺は甘んじて受けるのであった。
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