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7.悪口はいけません、って先生に言われなかった?
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男子トイレで二人きり。相手が女子ならちょっと人には言えないような怪しい雰囲気が漂うところだけど、大迫と二人きりはノーサンキューである。
「でさ、綾乃は僕の悩みを黙って聞いてくれたんだ。こんなに優しい女の子は他にいないよね」
用を足し終わったってのに、大迫の自分語りは終わる様子がない。
語っているのは松雪との馴れ初めらしい。ぼかしてはいたけれど、いじめを受けて落ち込んでいるところを優しく慰められたのだとか。要約すればそれだけのことだ。
「へー、そうなんだー」
適当に返しながら手を洗う。俺の手綺麗なお手て。
トイレを出て教室へと向かう。なぜか大迫もついて来た。クラスメイトなんだから当たり前か。
「ふふっ。まさかこんな僕なんかと付き合ってくれるだなんてね。綾乃は天使のような女の子だよ」
おい、マジでこの話いつまで続くんだよ? このままだとノロケ話まで聞かされそうなんですけど。
不快感で頬が引きつりそうな俺。そんなことには気づかない大迫はなよなよとした笑みで口を動かしている。
誰もが羨む美少女と付き合っている。そんな自尊心が大迫の口を軽くさせているのだろう。
「綾乃はとても心が綺麗なんだ。まったく、千夏とは大違いだよ」
「おい」
無視するつもりだった。適当に返事だけしてこの場をやり過ごすつもりだった。
だけど、千夏ちゃんの悪口を言おうってんなら話は別だ。
「千夏ちゃんの世話になってるお前に、彼女のこと悪く言う権利があんのかよ」
「え、え?」
大迫からしたら急に俺がすごんでいるように見えるかもしれない。
ずっといっしょだった幼馴染を信じてやらず、それどころか悪口ばかりで千夏ちゃんを陥れる。好きな子がそんな風に言われて、正直こいつをぶん殴りたくなった。
「千夏ちゃんと幼馴染なんだろ? だったら彼女がどんな子か、お前は一番わかってるはずだろうが。少なくとも、心の綺麗さがどうとかって悪く言えるような子じゃないはずだ」
でも殴らない。
大迫が傷つくと、千夏ちゃんが悲しむとわかっているからだ。どんなにひどいことをしたとしても、こいつは彼女の大切な幼馴染で、初恋の相手なんだ。
でも、睨むくらいはいいよね?
うっ、と言葉に詰まる大迫。しかし意外と言ってはなんだが反論してきた。
「さ、佐野くんは知らないだけさ。千夏がどれだけ汚いことをする奴かをね」
「知らねえよ。お前の妄想に付き合うつもりはねえから」
廊下で足を止めて睨み合う形となったからだろうか。周囲から好奇に満ちた目を向けられている気がする。
「お? なになに? マサってばケンカすんの? やっちゃえやっちゃえ」
「面白そうじゃん。俺審判やろっか?」
「いやいや、こんなとこでケンカとかシャレになんねえから。止めろって」
気がするんじゃなくて本当にそうだった。
クラスメイトに見られたのは面倒だ。なんて言い訳しようか。ていうか興味本位で煽るんじゃありません。
「い、いや……僕はそんなつもりじゃ……」
そして勝手にびびる大迫。暴力反対なのは俺も同じなんだけども。
これ以上面倒が広がるのはごめんだ。俺は両手を挙げて無害だとアピールする。
「ごめんごめん。変な誤解させちゃったな。ちょっと注意しただけだったんだよ。ほら、人の悪口を言ってはいけません、って小学生の時に先生に言われただろ?」
にこやかな表情で大迫へと近づく。オイコラ、後退ってんじゃねえぞ。
大迫の肩にぽんっと手を置く。その瞬間ビクッて勢いで肩が跳ねていた。
「俺が言いたいのは女の子には優しくしようぜ、ってこと。ほら、男が女を守るのは本能みたいなもんだろ。な?」
「う、うん……そうだね……」
よし。これにて一件落着。
ちょうど授業開始五分前のチャイムも鳴った。周りからも追及はなく、みんな各々の教室へと向かう。
「マサってナルシストだったんだー」
「ナルシストじゃなくてフェミニストだろ」
「むしろ俺は女子に守られたい願望があるんだけど……どう思う?」
「「「勝手にしろよ」」」
クラスメイトに見られるとか迂闊だった。見られたのが友達グループだったのが不幸中の幸いか。変なうわさにはしないでくれるだろう。……しないでくれるよね?
教室に戻って席に着く。先に戻っていた千夏ちゃんは次の授業の準備は万端のようだった。
最後に気まずそうな顔をした大迫が教室に入った。誰も見向きもしなかったけど、千夏ちゃんだけがあいつの方に目を向けていた。
「……」
何かに勘づいたのか、それとも暗い表情をしているのを気にかけただけなのか、千夏ちゃんが悲しそうな顔をする。その表情が、俺の胸を苦しめた。
「でさ、綾乃は僕の悩みを黙って聞いてくれたんだ。こんなに優しい女の子は他にいないよね」
用を足し終わったってのに、大迫の自分語りは終わる様子がない。
語っているのは松雪との馴れ初めらしい。ぼかしてはいたけれど、いじめを受けて落ち込んでいるところを優しく慰められたのだとか。要約すればそれだけのことだ。
「へー、そうなんだー」
適当に返しながら手を洗う。俺の手綺麗なお手て。
トイレを出て教室へと向かう。なぜか大迫もついて来た。クラスメイトなんだから当たり前か。
「ふふっ。まさかこんな僕なんかと付き合ってくれるだなんてね。綾乃は天使のような女の子だよ」
おい、マジでこの話いつまで続くんだよ? このままだとノロケ話まで聞かされそうなんですけど。
不快感で頬が引きつりそうな俺。そんなことには気づかない大迫はなよなよとした笑みで口を動かしている。
誰もが羨む美少女と付き合っている。そんな自尊心が大迫の口を軽くさせているのだろう。
「綾乃はとても心が綺麗なんだ。まったく、千夏とは大違いだよ」
「おい」
無視するつもりだった。適当に返事だけしてこの場をやり過ごすつもりだった。
だけど、千夏ちゃんの悪口を言おうってんなら話は別だ。
「千夏ちゃんの世話になってるお前に、彼女のこと悪く言う権利があんのかよ」
「え、え?」
大迫からしたら急に俺がすごんでいるように見えるかもしれない。
ずっといっしょだった幼馴染を信じてやらず、それどころか悪口ばかりで千夏ちゃんを陥れる。好きな子がそんな風に言われて、正直こいつをぶん殴りたくなった。
「千夏ちゃんと幼馴染なんだろ? だったら彼女がどんな子か、お前は一番わかってるはずだろうが。少なくとも、心の綺麗さがどうとかって悪く言えるような子じゃないはずだ」
でも殴らない。
大迫が傷つくと、千夏ちゃんが悲しむとわかっているからだ。どんなにひどいことをしたとしても、こいつは彼女の大切な幼馴染で、初恋の相手なんだ。
でも、睨むくらいはいいよね?
うっ、と言葉に詰まる大迫。しかし意外と言ってはなんだが反論してきた。
「さ、佐野くんは知らないだけさ。千夏がどれだけ汚いことをする奴かをね」
「知らねえよ。お前の妄想に付き合うつもりはねえから」
廊下で足を止めて睨み合う形となったからだろうか。周囲から好奇に満ちた目を向けられている気がする。
「お? なになに? マサってばケンカすんの? やっちゃえやっちゃえ」
「面白そうじゃん。俺審判やろっか?」
「いやいや、こんなとこでケンカとかシャレになんねえから。止めろって」
気がするんじゃなくて本当にそうだった。
クラスメイトに見られたのは面倒だ。なんて言い訳しようか。ていうか興味本位で煽るんじゃありません。
「い、いや……僕はそんなつもりじゃ……」
そして勝手にびびる大迫。暴力反対なのは俺も同じなんだけども。
これ以上面倒が広がるのはごめんだ。俺は両手を挙げて無害だとアピールする。
「ごめんごめん。変な誤解させちゃったな。ちょっと注意しただけだったんだよ。ほら、人の悪口を言ってはいけません、って小学生の時に先生に言われただろ?」
にこやかな表情で大迫へと近づく。オイコラ、後退ってんじゃねえぞ。
大迫の肩にぽんっと手を置く。その瞬間ビクッて勢いで肩が跳ねていた。
「俺が言いたいのは女の子には優しくしようぜ、ってこと。ほら、男が女を守るのは本能みたいなもんだろ。な?」
「う、うん……そうだね……」
よし。これにて一件落着。
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「マサってナルシストだったんだー」
「ナルシストじゃなくてフェミニストだろ」
「むしろ俺は女子に守られたい願望があるんだけど……どう思う?」
「「「勝手にしろよ」」」
クラスメイトに見られるとか迂闊だった。見られたのが友達グループだったのが不幸中の幸いか。変なうわさにはしないでくれるだろう。……しないでくれるよね?
教室に戻って席に着く。先に戻っていた千夏ちゃんは次の授業の準備は万端のようだった。
最後に気まずそうな顔をした大迫が教室に入った。誰も見向きもしなかったけど、千夏ちゃんだけがあいつの方に目を向けていた。
「……」
何かに勘づいたのか、それとも暗い表情をしているのを気にかけただけなのか、千夏ちゃんが悲しそうな顔をする。その表情が、俺の胸を苦しめた。
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