もし学園のアイドルが俺のメイドになったら

みずがめ

文字の大きさ
115 / 141
おまけ編

after 音々ちゃんは女子高生⑧

しおりを挟む
 チャイムの音で目を覚ました。

「お……あれ、俺寝てたのか?」

 机を見ればよだれの水溜まりができていた。だいぶ熟睡していたらしい。
 毎日メイドとエチエチな生活を送っているおかげで、身体が引き締まり、体力がついてきた自負がある。そんな俺でも、朝からの連続射精で疲労困憊になっていた。

「だからって、授業を寝て過ごすとか……。学生の本分を蔑ろにしてしまった自分が恥ずかしい」

 これでも、真面目に授業を受けてきた優良生徒なのだ。まあ成績が良いとは言ってないけどな。
 そんなわけで放課後。午後の授業? 全部吹き飛びましたけど何か?
 周りは帰宅する者、部活へ向かう者、教室でだべっている者と様々だ。なんか普通の風景がすごく青春っぽく見える。普通じゃない体験をしすぎたせいかもしれないね。

「あれ、音々ちゃんはどこだ?」

 教室に音々ちゃんの姿がない。まさか俺を置いて先に帰ったのか? そんなバカなと思いつつも焦ってしまう。

「いやいや、音々ちゃんに限って俺を置いて帰るはずがないだろ。うん、きっとトイレにでも行っているに違いない」

 そうだそうだ。帰る前にトイレを済ませる。そんなの普通じゃないか。……トイレか。
 ぽけーと妄想していると股間が膨らむ。それに気づいたわけじゃないだろうが、クラスメイトの女子がニヤニヤしながら近づいてきた。

「あのさ会田くん」
「ひゃいっ!? べべべ別にエッチなことなんか考えてなかとですよ?」
「は? しゃべり方おかしくなってるよ? ……キモ」

 オイ、小声でもちゃんと聞こえているんだからな。
 くっ、洗脳フィールド内なんだから堂々としていればよかったのに。心の準備ができていなかったせいで無駄に焦ってしまった。
 脳内でサンドバッグを叩いていると、クラスメイト女子は構わず話を続けた。

「音々ちゃんから伝言。『放課後、屋上で待っています』だってさ」

 何が面白いのか、ニヤニヤしながらそう言った。

「了解」
「それだけ? もっと何かあるでしょ」
「いや、ただ屋上で待っているだけしか聞いてないし」
「……鈍感」

 クラスメイト女子に大きなため息を吐かれてしまった。オイ、こっちに息が当たってんだろうが。俺が女子の息なら誰のだろうが喜ぶ変態と思うなよ。
 まあ、言いたいことはわからなくもないけど。音々ちゃんがやりたいこともなんとなくわかった。
 そんなわけで、俺は屋上へと向かった。
 屋上はあまり人が立ち入らない場所だ。屋上へと続く階段に辿り着く頃には、周りには誰もいなかった。
 誰もいない空気感。それだけのことでちょっとした緊張感がある。何かされたわけでもないのにドキドキする。
 だからこそ、この学園で異性を呼び出す場所としてピッタリだったのだ。前例がありまくりだけどな。
 屋上のドアを開ける。ギィ、と軋みながらも外の空気が俺を出迎えてくれた。

「来てくれたのね祐二くん」
「美少女に呼び出されたら大抵の男子は来る以外の選択肢はないって」
「あら、お上手ね。……ありがとう、ご主人様」

 音々ちゃんはメイドの時のような微笑みを浮かべた。大人っぽいというか、母性に溢れた顔だ。
 美女の微笑みも、すぐに美少女の笑顔へと変わる。音々ちゃんのためにも、彼女の変化に目をつむった。

「祐二くん」
「うん」
「ずっと好きでした。わたくしと、付き合ってください」

 青春の甘酸っぱさが詰め込まれたような告白だった。
 過去を懐かしむかのように、音々ちゃんは微笑んだ。まるでタイムスリップでもしたみたいに、この時ばかりは同年代にしか見えなかった。

「ありがとう音々ちゃん。すっげえ嬉しい」

 もし今の関係ではなく、ただのクラスメイトとして彩音に告白されていたら。その喜びは計り知れない。
 でも、それはあくまでifの話。
 そして、音々ちゃんにとってもそうなのだろう。

「俺も、ずっと前から音々ちゃんのことが好きだったんだ」

 するりと言葉が出てくる。音々ちゃんの青春時代を想像しながら、俺は演じていた。

「……ありがとう、ございます」

 音々ちゃんの目が、夕日に照らされてキラリと光った。


  ※ ※ ※


 音々ちゃんの初恋は、俺と同年代の頃だったらしい。
 学生時代の音々ちゃんは引っ込み思案だったとのことで、その初恋の男子とはあまり話せなかったのだそうだ。

「わたくしには許嫁がいましたし、男性に接すること自体、とてもはしたない行為だと教えられてきました」

 そういう理由もあり、音々ちゃんはずっと自分の心を押し殺していたのだ。学生時代だけではなく、結婚してからもずっと。
 初恋は叶わない。なんて言葉はよく聞くけれど、何もできない無力感の中にいることがどれほどの苦痛か。俺には想像できなかった。

「もし状況が違っていたら? わたくしに勇気があって、ちゃんと自分の口から告白できたら? お恥ずかしい話ですが、たまにそういった考えが頭に過ぎってしまうのです」

 音々ちゃんは照れ笑いを浮かべる。
 今はスッキリした顔で、彼女は俺に頭を下げた。

「ご主人様、ありがとうございます。やっと、あの時の気持ちに区切りをつけられました」
「まあ、音々ちゃんがそれでいいなら俺は構わないよ」

 俺は藤咲彩音に告白をしたことがある。
 それは彼女の外見が好みだったからだ。見た目ばかりを重視してではあるが、俺が絶対に告白しようと決めた相手は彩音だけだった。他にはいなかったんだ。
 絶対に振り向いてくれるわけがない。そんなことはわかっていた。普段の俺ならよほど有利な状況でもない限り、告白なんぞしなかっただろう。
 それでも、俺は告白に踏み切った。その強い気持ちは、俺にとっての本物の初恋だったからなのかもしれない。
 もしも藤咲彩音に告白しなかったら。俺は音々ちゃんと同じような気持ちになっていたのだろうか?
 まあ、そんなことをいくら考えたってしょうがない。今はみんな俺のメイドだ。その結果があれば満足である。

「祐二くん」
「なんだい音々ちゃん?」
「恋人になって、初めてのエッチしよ♪」

 なんとも可愛らしいお誘いである。それに応えるのは彼氏の務めってやつだろう。

「まったく、しょうがねえ彼女だなぁ」
「だって、彼氏に甘えるのが彼女の特権でしょ?」
「甘えるっていうか、エッチを求められてるだけだけどな」
「祐二くんはエッチが嫌いなの?」
「……大好きです」

 今が幸せならそれでいいじゃない。そう結論づけて、屋上に伸びている俺と音々ちゃんの影が重なった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。 かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。 しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。 現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。 その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。 「今日から私、あなたのメイドになります!」 なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!? 謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける! カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

処理中です...