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三日目(後)
バディ再結成②
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思わず口から溢れた疑問に、御堂が顔を上げた。
「あ、いや。悪い。今のはなしだ。」
馬鹿か、俺は。捜査内容を喋れないって自分で言っていたくせに。御堂だって、依頼人の個人情報を明かせるわけがないだろう。
しかし、少しの沈黙のあと、御堂は口を開いた。
「初瀬山貴美子さんの依頼で、初瀬山勇次郎について調べて欲しいと言われたんです。」
「初瀬山貴美子って、もしかして……。」
「はい。初瀬山勇次郎の遠縁に当たる女性で、この遺品整理を場を設けたその人ですよ。」
依頼人の名前にも驚いたが、すんなりと御堂が依頼について話し始めたことに虚をつかれた。
「貴美子さんは初瀬山勇次郎の妹である初瀬山千恵子さんの孫に当たります。数年前にご両親を病気で亡くし、初瀬山貴美子さんは一人となりました。」
しかし、貴美子には婚約者の男性がいた。
彼の助力もあって、両親の死の悲しみを乗り越えることができたのだという。
「そんな彼女に初瀬山勇次郎から連絡が入ったのは、彼が死ぬ一年ほど前だったそうです。全ての遺産を貴美子に渡すから、その準備のために屋敷に来て欲しいと。」
それまで勇次郎と一切関わりがなかった彼女は大変驚いたが、両親も亡くなり、生活に不安を感じていた彼女はこの話に食いついた。
ただ、彼女は一人では不安だったため、婚約者と共にこの屋敷を訪れた。
「彼女はこう言っていました。『あんな場所に行かなければ良かった。婚約者を連れて行かなければ良かった』とね。」
「どういうことだ?」
「ここが不思議な話なんですけれど、どうやらその婚約した男性、【魅了】されてしまったそうです。初瀬山勇次郎に。」
「おいおい、冗談だろ?その頃の初瀬山勇次郎なんて、ヨボヨボのジジィだろうが!」
初瀬山勇次郎と会った貴美子は、彼のもつ異様な雰囲気に、ただその場に立っていることしかできなかったという。
気がついたら、執事の男によって遺産相続の資料がまとめられていた。
そして――。
「そのジジィの前で、婚約者の男性は自ら服を脱ぎ始め、彼の性器を貪っていたそうです。」
「……。」
「まるで金縛りにでもあったかのように、体が動かなくなった貴美子さんは、二人の行為をただ見ているしかなかったと。」
俺は、なんと言って良いのか分からず、口を噤んだ。
「その後、貴美子さんは莫大な資産を手に入れましたが、同時に婚約者の男性も失うこととなりました。彼は結局、屋敷から戻って来なかったそうです。……私がここに来たのは、その男性を探しに来たのと、初瀬山勇次郎の正体を暴くためですよ。」
「そうか……。」
御堂の話は、にわかには信じ難いものだった。
だが、この男がこんな悪趣味な嘘をつくような人間ではないことは、よく分かっている。
御堂がここまで喋ったんだ。俺も腹を括らないとな。
「じゃあ、次は俺の番。始めはフリージャーナリストの飯島を探していたんだ。」
「飯島……飯島寛ですか?」
「まぁ、名前は聞いたことあるよな。で、調べていくうちに飯島が三島智之っていうプログラマーと一緒にこの屋敷へ向かったってことが分かった。」
「じゃあ、新田さんは飯島と三島を探しにここへ?」
「まぁ、そうなるわな。なぜか屋敷から出られず、【人狼ゲーム】に巻き込まれているけれど。」
御堂は顎に指を当てて、何やら考え込んでいる。
「三島……ですか。」
「ん?」
「貴美子さんの婚約者の名前が、三島聡というんです。三島という名字はそこまで珍しくないので、今まで気にしていなかったんですが。」
「もしかして、兄弟か親戚関係かもしれないな。」
「えぇ。ですが、これで分かりましたね。この屋敷はあまりにも人を『喰い過ぎている』。」
喰い過ぎ、ねぇ。
言い得て妙だな。
「初瀬山勇次郎の亡霊にでも、囚われているのかねぇ。」
「調べてみましょう。初瀬山勇次郎が一体何者なのか。この屋敷で何が行われてきたのか。これらを明らかにしないと、私たち、多分屋敷から出られませんよ。」
俺は立ち上がって、ぐっと背伸びをした。
「そいつぁ困ったなぁ。始末書、溜まっているんだよね。」
「それは上に迷惑かけますから、早めに出さないといけませんねぇ。お手伝いしましょうか?」
「馬鹿言え。警察辞めたくせに。」
「そうでした。」
俺たちは顔を見合わせ、同時に噴き出した。なんて茶番だ。
かつて、警察官としてこいつとバディを組んでいた頃の、あの高揚感が蘇ってくる。
こいつとなら、御堂となら、どんな困難でも乗り越えられると思ってしまった。
俺たちなら負けない、と。
――そう、信じていたんだ。
「あ、いや。悪い。今のはなしだ。」
馬鹿か、俺は。捜査内容を喋れないって自分で言っていたくせに。御堂だって、依頼人の個人情報を明かせるわけがないだろう。
しかし、少しの沈黙のあと、御堂は口を開いた。
「初瀬山貴美子さんの依頼で、初瀬山勇次郎について調べて欲しいと言われたんです。」
「初瀬山貴美子って、もしかして……。」
「はい。初瀬山勇次郎の遠縁に当たる女性で、この遺品整理を場を設けたその人ですよ。」
依頼人の名前にも驚いたが、すんなりと御堂が依頼について話し始めたことに虚をつかれた。
「貴美子さんは初瀬山勇次郎の妹である初瀬山千恵子さんの孫に当たります。数年前にご両親を病気で亡くし、初瀬山貴美子さんは一人となりました。」
しかし、貴美子には婚約者の男性がいた。
彼の助力もあって、両親の死の悲しみを乗り越えることができたのだという。
「そんな彼女に初瀬山勇次郎から連絡が入ったのは、彼が死ぬ一年ほど前だったそうです。全ての遺産を貴美子に渡すから、その準備のために屋敷に来て欲しいと。」
それまで勇次郎と一切関わりがなかった彼女は大変驚いたが、両親も亡くなり、生活に不安を感じていた彼女はこの話に食いついた。
ただ、彼女は一人では不安だったため、婚約者と共にこの屋敷を訪れた。
「彼女はこう言っていました。『あんな場所に行かなければ良かった。婚約者を連れて行かなければ良かった』とね。」
「どういうことだ?」
「ここが不思議な話なんですけれど、どうやらその婚約した男性、【魅了】されてしまったそうです。初瀬山勇次郎に。」
「おいおい、冗談だろ?その頃の初瀬山勇次郎なんて、ヨボヨボのジジィだろうが!」
初瀬山勇次郎と会った貴美子は、彼のもつ異様な雰囲気に、ただその場に立っていることしかできなかったという。
気がついたら、執事の男によって遺産相続の資料がまとめられていた。
そして――。
「そのジジィの前で、婚約者の男性は自ら服を脱ぎ始め、彼の性器を貪っていたそうです。」
「……。」
「まるで金縛りにでもあったかのように、体が動かなくなった貴美子さんは、二人の行為をただ見ているしかなかったと。」
俺は、なんと言って良いのか分からず、口を噤んだ。
「その後、貴美子さんは莫大な資産を手に入れましたが、同時に婚約者の男性も失うこととなりました。彼は結局、屋敷から戻って来なかったそうです。……私がここに来たのは、その男性を探しに来たのと、初瀬山勇次郎の正体を暴くためですよ。」
「そうか……。」
御堂の話は、にわかには信じ難いものだった。
だが、この男がこんな悪趣味な嘘をつくような人間ではないことは、よく分かっている。
御堂がここまで喋ったんだ。俺も腹を括らないとな。
「じゃあ、次は俺の番。始めはフリージャーナリストの飯島を探していたんだ。」
「飯島……飯島寛ですか?」
「まぁ、名前は聞いたことあるよな。で、調べていくうちに飯島が三島智之っていうプログラマーと一緒にこの屋敷へ向かったってことが分かった。」
「じゃあ、新田さんは飯島と三島を探しにここへ?」
「まぁ、そうなるわな。なぜか屋敷から出られず、【人狼ゲーム】に巻き込まれているけれど。」
御堂は顎に指を当てて、何やら考え込んでいる。
「三島……ですか。」
「ん?」
「貴美子さんの婚約者の名前が、三島聡というんです。三島という名字はそこまで珍しくないので、今まで気にしていなかったんですが。」
「もしかして、兄弟か親戚関係かもしれないな。」
「えぇ。ですが、これで分かりましたね。この屋敷はあまりにも人を『喰い過ぎている』。」
喰い過ぎ、ねぇ。
言い得て妙だな。
「初瀬山勇次郎の亡霊にでも、囚われているのかねぇ。」
「調べてみましょう。初瀬山勇次郎が一体何者なのか。この屋敷で何が行われてきたのか。これらを明らかにしないと、私たち、多分屋敷から出られませんよ。」
俺は立ち上がって、ぐっと背伸びをした。
「そいつぁ困ったなぁ。始末書、溜まっているんだよね。」
「それは上に迷惑かけますから、早めに出さないといけませんねぇ。お手伝いしましょうか?」
「馬鹿言え。警察辞めたくせに。」
「そうでした。」
俺たちは顔を見合わせ、同時に噴き出した。なんて茶番だ。
かつて、警察官としてこいつとバディを組んでいた頃の、あの高揚感が蘇ってくる。
こいつとなら、御堂となら、どんな困難でも乗り越えられると思ってしまった。
俺たちなら負けない、と。
――そう、信じていたんだ。
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