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四日目
人狼ゲーム記録映像 1938年①
しおりを挟むワゴンを押しながら、スロープを通って二階へ行く。
廊下を進んで行くと、学斗がドアを開けて待っていてくれた。
「たくさん貰ってきたな。」
「大サービスしてくれた。」
最上さんが準備してくれた飲み物やお菓子をのせたワゴンと共に、視聴覚室へ入る。
すると、そこには新田さんもいた。
「よっ。俺も混ぜてくれや。」
「どうぞ。飲み物、何が良いですか?」
「ジンジャーエール。」
各自の飲み物を準備し、着席したところで、御堂が映像を再生させる。
起動音の後、黒の背景に白抜きの文字が表示される。
『人狼ゲーム記録映像 1938年』
文字は消え、今度は明るい室内が映される。
「ここ、俺たちがご飯を食べる広間だよな?」
学斗の呟きに、御堂が「そうですね」と頷く。
映像には、見覚えのある長テーブルと、そこに座る人たちの姿が映っている。
『あぁ、そこにあるカメラはどうぞ気にしないで。記録のために、撮っておいているのです。』
テーブル奥に座る男が、手を広げて言った。
初瀬山勇次郎だ。
玄一郎さんを手に入れた頃の勇次郎の顔を脳裏に思い浮かべる。
この映像の方が、少し歳をとっているように見えた。
『では、お待ちかねの遊戯の時間です。あぁ、もちろん。勝者にはちゃんと、豪華な報酬を用意しておりますので。』
『それでは遊戯の流れをご説明します。私たちの中に、【狼】が紛れ込んでいます。日中、【狼】は人に化けており、夜になると人を喰らいます。【狼】に食べられた人は、【狼】のモノになってしまうので、気をつけて下さい。【狼】が誰なのかを推理し、当てた人が勝者です。』
人狼ゲームが知られるようになったのは2000年代。
当時、人狼ゲームは存在しなかったためか、今俺達が参加させられているものよりかなり単純なゲームになっている。
共通しているのは、【狼】が食べた相手を好き勝手できることだ。
「……おかしいですね。」
御堂が眉間にしわを寄せ、真剣な様子で画面を注視している。
「今、ゲームを説明している男はおそらく初瀬山勇次郎です。記録に残っている彼の肖像画や写真の姿よりもかなりお若いですが。問題は、当時の初瀬山勇次郎は戦火を逃れて海外にいるはずなのです。」
「現地の投資会社を牛耳っていたという、あの話ですよね。」
「その通りです、アキラくん。それに、〈初瀬山邸〉を建てたのは戦後のはず。1938年の時点ではまだ存在しません。」
「俺たち一般人に伝えられている情報が偽物だったってことじゃねぇの?」
新田がせんべいを噛りながら、口を挟んだ。
「この男、秘密裏にこうしたゲームをこの屋敷で、繰り返し行っていたんじゃないか?周囲の目を欺くために、自分は海外にいると、嘘の情報まで流して。」
あり得る話だ。人の感情や思考を操作できるなんて知られたら、色んな組織に狙われるだろう。
そうならないよう、おそらくこの屋敷の位置も公にせず、ひっそりと初瀬山勇次郎は卑猥な遊戯を楽しんでいたんだ。
映像の画面は変わり、参加者一人一人の挨拶が流れていく。
『私は富澤秀夫、陸軍大尉でございます。昭和三年、陸軍士官学校を首席で卒業し、現在は某師団の一部隊を指揮しております。』
『俺は南野雄二。日本画の大家、南野五岳の一人息子だ。親父は日本画壇の重鎮だし、俺は将来有望な若手画家として注目されている。』
『小林美津子と申します。雄二様の許嫁として、一緒に参りました。』
『えっと、あ、はい。どうも、僕は柳原蒼です。えっと、某美術大学の学生で、水彩画を学んでおります。』
『大谷拓郎と申します。茶屋を妻と経営しております。まさか初瀬山様にうちの茶菓子が気に入られるとは夢にも思いませんでした!しかも、こうしてお屋敷にまでお招きいただいて!』
『大谷香織です。以前は尋常小学校で音楽の先生をしておりました。現在は、夫の営む茶屋で働いております。』
他にも医師、弁護士、学者、音楽家など、様々な肩書の人間が自己紹介をしていく。
全員がこれから行われる悪趣味な遊戯の参加者だ。
そして、最後の一人の番がきた。
最後は女性だ。
頬がこけていて、白髪混じりの長い髪をゆるく結っている。不健康そうだが、目だけはギラギラと光って、強い意志が感じられた。
女性が口を開いた。
『……最上尚子です。』
最上だって……?
予想外の名字に、視聴覚室にいる全員がハッと息を飲む。
『夫である最上玄一郎を返していただきたく、馳せ参じました。』
彼女は、堂々とそう宣言した。
『この遊戯に勝ったあかつきには、初瀬山勇次郎様より、玄一郎さんをこの屋敷から解放していただきたく存じます。』
『ほうほう。私から解放しろと、お前の奥方が言っているぞ?玄一郎。』
勇次郎の言葉が聞こえたかと思うと、カメラが移動し、一人の男性が映し出される。
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