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四日目
消える邪魔者
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「江頭、さん?」
「えっ!?あ、あああ、アキラくんっ!?」
視聴覚室から出て、広間に続く廊下を歩いていたら、江頭と会った。
よほど驚いたのか、江頭は目を見開いている。
そろそろ正午になる頃だから、自分の昼食を取りに来たのかもしれない。
江頭は後退りし、俺から離れようとした。
まぁ、昨日の件もあるからな。御堂あたりに、俺と関わらないように言われたのだろう。
しかし、ここで無視するのも不自然だ。
俺は江頭に声をかけ続ける。
「もしかして、お昼ご飯を取りに?」
「えっ!?あ!そ、そうなんです!はい!」
「俺もなんです。」
「あっ、そ、そうなんですか……。」
微妙な距離を保ったまま、江頭は俺と広間に向かって歩く。
「そういえば、御堂さんたちが江頭さんのことを探していましたよ。」
「そうなんですかっ!?すみません……。実は起きたのもついさっきで……。そ、それで……アキラくん……。」
「はい?」
江頭はちらちらと俺を窺いながら、意を決して、口を開いた。
「昨日は急にすみませんでした……。えぇ、と、その、ちょっと私も混乱していましてね、ははは。傷つけるつもりは全くなかったのですが、えぇ、周りが、ね。」
「あぁ、全然大丈夫なので、気になさらず。」
「……………え?」
「江頭さんが藤山さんのことを疑っている様子だったのも分かっていますし、それに例の件は長根さんが単独でやったことですから、俺は、江頭さんは関係がないと思っています。」
「あ、は、はいっ!ありがとう、ございますっ!ありがとうございますっ!」
江頭は顔を明るくさせ、何度も俺に感謝の言葉を述べる。
「はぁ、良かった!アキラくんならやっぱり、分かってくれると思っていました!」
安心したのだろう。
江頭は胸を撫で下ろし、涙目で俺を見る。
まぁ、そういう反応をするだろうよ。
俺はずっと、江頭が求めている言葉しか口にしていないのだから――。
広間に着くと、既に拓兄や柳生教授、そして清水先輩が席に着いていた。
「アキラくん、こちらですよ。」
柳生教授から声をかけられたその時だ。
スマホに【人狼ゲーム】アプリからのお知らせが届いたのは。
「え?今?何だろう?」
清水先輩も、拓兄も、ポケットからスマホを取り出して、画面を確認する。
俺も流れに乗じて、画面を開いた。
『江頭文吉は、【人狼】です。』
『江頭文吉は、【人狼】です。』
『江頭文吉は、【人狼】です。』
アプリからの通知に書かれた文章を目にして、ざわざわと皆が騒ぎ出す。
「え、どういうこと?江頭さんが、【人狼】?」
「でも、今朝は藤山さんが【人狼】だって詰め寄っていたのに……。」
「あれはフェイクだったのか?」
「落ち着いて下さい、皆さん。この文が真実だとは……。」
広間に突然広がっていく、江頭に対する疑念。
いいぞ、もっともっと、騒げ。
江頭を、追い詰めろ。
「な、何なんだこれはぁっ!?」
広間に、江頭の絶叫が轟く。
江頭は自分のスマホから俺たちの方へ視線を移した。
体をがくがくと震わせながら、江頭は首を横に振る。
「ち、違う!私じゃない!【人狼】は私じゃ……っ!こんなのはでたらめだ!違う、違う、違ううううっ!!!」
そして、ハッと江頭は目を見開き、よたよたと俺の方へ寄ってきた。
「あ、アキラくんなら、信じてくれますよね?ね?さっき言ってくれたじゃないですか……?大丈夫だって……。」
「え、えがしら、さん……。」
俺は数歩後退りし、江頭から顔を背けた。
「なっ……!何でっ!」
江頭は唖然として、俺の方を見つめる。
――そして、失望は、怒りへと変化する。
「なぜっ!?どうしてですかっ!?アキラくんっ!違う!私じゃないんだ!信じてくれ!……藤山……あいつだ……あいつが私を嵌めようとしているんだ!あいつのせいで!クソッ!クソッ!藤山!あの女!」
うわぁ、すごい。
江頭は目を吊り上げ、口から唾を飛ばし、顔を真っ赤にしながら、頭を掻きむしっている。
「違うっ!あの女はクズなんだっ!私が何をしたっていうんだ!?あいつがいるせいで……あいつさえいなければ!」
「しかし、藤山さんは『白』でしたよ、江頭さん。」
広間に来た御堂が、スマホ片手にそう告げる。
「藤山さんが【人狼】であるはずがないんです。だとすれば――。」
「嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だあああああっ!」
江頭は頭を掻きむしるのをやめ、突然後ろに振り向いた。そして、広間の外へと駆け出す。
「皆さんはここにいてください!」
すかさずその後を御堂が追いかける。
「アキラ、大丈夫?」
心配して駆け寄ってきた拓兄が、俺の顔を覗きこむ。
俺はこくりと頷いた。
「どういうこと……。江頭さん、【人狼】なの……?」
清水先輩の困惑した声に、誰も答えない。
張り詰める広間の空気に、俺は内心高揚感が隠せない。
ははっ!いいぞ!もっと、もっと疑え!
流石は『特殊カード』!
想像以上の効き目だ。まさかアプリ自体から、江頭を疑わせるようなメッセージが届くとは思わなかったな。
全ては昨日、『疑念(Suspicion)』のカードを手に入れてくれた柳生教授のおかげだ。
仕掛け人なのに見ろよ、あの表情!とんでもない役者だな!
「江頭さん、もしかして、藤山さんのところに行こうとしているんじゃ……。」
「御堂さんが追いかけてくれたから大丈夫だと思うけど……。」
「でも、何を仕出かすか、あの様子だと分からないんじゃないか……?」
「まさか殺そうとまではしないよな?さすがに……。」
「結局、江頭さんが【人狼】なの?でも、あそこまで取り乱しているから、【人狼】ではないかな?」
「あれがパフォーマンスである可能性も捨てきれません……。」
「そ、そんなの、どうすりゃいいんだよ……!また怪我人が出たら……!」
「――投票すれば、分かるんじゃないかな。」
俺がそう告げると、皆はハッとしたように顔を上げた。
「投票して、ゲームが終われば江頭さんが【人狼】だったってことだし、終わらなければ【人狼】じゃなかったってことになる。」
「で、でも!もし、【人狼】じゃなかったら……っ!」
清水先輩のあまりにも切羽詰まった声に、俺は思わず口元が歪む。
そうだなぁ。
【人狼】じゃなかったら、ただ『追放』されて終わりだな。
「……リスクはありますが、あの精神状態を鑑みると、江頭さんはもう限界かもしれません。」
柳生教授は険しい顔で、江頭が出て行った方を見つめる。
「ゲームさえ終われば、参加者たちは解放されます。もし【人狼】ではなかったとしても、我々がゲームを終えられれば、江頭さんも助かるわけです。――私は、江頭さんに投票します。彼のためにも、その方がいいでしょう。」
不安定な精神状態のままゲームに参加させるよりも、江頭の意識を無くした状態でゲームを終えた方が、彼の為になるってか。
うまくまとめたな、教授。
そして、この場で一番の年長者である教授の言葉は、重い。
「そ……そうですよね……。私もそう思います。」
ほら、すぐに清水先輩が鵜呑みにした。
「俺も、教授の案に賛成です。」
柳生教授に続き、拓兄もすぐに賛同する。
「俺は勧めないけどな。御堂が来てからでも、遅くはないだろう。」
新田は至極冷静にそう言ったが、この流れは止められそうにない。
柳生教授、拓兄、清水先輩、学斗、そして俺――これで5票だ。
江頭を『追放』するには、今参加している人数の過半数以上だから、あと一人分の票が必要だ。
まぁ、そこはきっと、心配いらないだろう――。
俺はスマホを操作し、江頭文吉に投票をする。他のメンバーもそれに続いて、投票を行った。
しばらくして、御堂が広間に駆け込んできた。
「……江頭さんが、急に倒れました。」
そして、スマホの画面を俺たちに見せる。
『投票が終わりました。』
『江頭文吉さんに過半数を超える票が集まりましたので、江頭文吉さんを村から追放します。』
「原因はこれ、ですね。」
「で、でも……っ!」
清水先輩が御堂の言葉を遮るように、声をあげた。
「仕方がなかったんです!あのままじゃ、江頭さん、何するか分かりませんでしたし……っ!」
「それはっ……そうかもしれませんが。」
御堂はどこか歯切れの悪い返事だ。
「おそらくあなた方五人の投票が行われたと思いますが、新田さんは?」
「俺はやってない。」
「それならあと一票は……?」
「――私よ。」
その声は、御堂の後ろから聞こえてきた。
「私が票を入れたの。悪い?」
藤山明子。
ほとんど部屋に引きこもっているのか、なかなか顔を合わせていなかったが、相変わらず露出度の高い服を纏って、堂々としている。
「藤山、さん……。」
「私を入れて六票になったから、あの男、【追放】されたのね。いい気味だわ!ずっと根拠もなく、私が【人狼】だのなんだの言いがかりつけてきて。これで安心して、この部屋で食事ができるわね。」
「だからって、そんな言い方……っ!」
清水先輩が思わず不満を口にすると、藤山はキッと彼女に鋭い視線を向けた。
「あなたも江頭に投票しておいて、随分な言い草ねぇ?私に口答えする資格が、あなたにあるのかしら?」
「……っ!」
清水先輩は口をつぐみ、藤山から視線を逸らす。
藤山は勝ち誇ったように鼻を鳴らすと、キビキビした足取りで広間を去っていった。
皆、口には出さないが、結局ゲームが続いているということは、江頭は【人狼】ではなかったということになる。
きっと後悔や不安が渦巻いているだろう。
なぜアプリが虚偽の情報を流したのか、なぜ江頭は標的にされたのか――ってね?
いやぁ!どうもありがとう!皆さん!
おかげさまで、邪魔な江頭を無事『追放』することができました!
特に今回のMVPである柳生教授にはとっておきのご褒美をあげなきゃいけないなぁ!♡
――なんて、声に出せるはずもなく、俺も皆と同じように悲痛な顔を作って、俯く。
それから昼食が始まったが、もちろんそこに会話はない。皆、固い表情をしている。
んんっ、困ったなぁ。
これでは面白くない。
それじゃあ、皆に元気になってもらうために――さっき手に入れた『特殊カード』、使ってしまおうか♪
「えっ!?あ、あああ、アキラくんっ!?」
視聴覚室から出て、広間に続く廊下を歩いていたら、江頭と会った。
よほど驚いたのか、江頭は目を見開いている。
そろそろ正午になる頃だから、自分の昼食を取りに来たのかもしれない。
江頭は後退りし、俺から離れようとした。
まぁ、昨日の件もあるからな。御堂あたりに、俺と関わらないように言われたのだろう。
しかし、ここで無視するのも不自然だ。
俺は江頭に声をかけ続ける。
「もしかして、お昼ご飯を取りに?」
「えっ!?あ!そ、そうなんです!はい!」
「俺もなんです。」
「あっ、そ、そうなんですか……。」
微妙な距離を保ったまま、江頭は俺と広間に向かって歩く。
「そういえば、御堂さんたちが江頭さんのことを探していましたよ。」
「そうなんですかっ!?すみません……。実は起きたのもついさっきで……。そ、それで……アキラくん……。」
「はい?」
江頭はちらちらと俺を窺いながら、意を決して、口を開いた。
「昨日は急にすみませんでした……。えぇ、と、その、ちょっと私も混乱していましてね、ははは。傷つけるつもりは全くなかったのですが、えぇ、周りが、ね。」
「あぁ、全然大丈夫なので、気になさらず。」
「……………え?」
「江頭さんが藤山さんのことを疑っている様子だったのも分かっていますし、それに例の件は長根さんが単独でやったことですから、俺は、江頭さんは関係がないと思っています。」
「あ、は、はいっ!ありがとう、ございますっ!ありがとうございますっ!」
江頭は顔を明るくさせ、何度も俺に感謝の言葉を述べる。
「はぁ、良かった!アキラくんならやっぱり、分かってくれると思っていました!」
安心したのだろう。
江頭は胸を撫で下ろし、涙目で俺を見る。
まぁ、そういう反応をするだろうよ。
俺はずっと、江頭が求めている言葉しか口にしていないのだから――。
広間に着くと、既に拓兄や柳生教授、そして清水先輩が席に着いていた。
「アキラくん、こちらですよ。」
柳生教授から声をかけられたその時だ。
スマホに【人狼ゲーム】アプリからのお知らせが届いたのは。
「え?今?何だろう?」
清水先輩も、拓兄も、ポケットからスマホを取り出して、画面を確認する。
俺も流れに乗じて、画面を開いた。
『江頭文吉は、【人狼】です。』
『江頭文吉は、【人狼】です。』
『江頭文吉は、【人狼】です。』
アプリからの通知に書かれた文章を目にして、ざわざわと皆が騒ぎ出す。
「え、どういうこと?江頭さんが、【人狼】?」
「でも、今朝は藤山さんが【人狼】だって詰め寄っていたのに……。」
「あれはフェイクだったのか?」
「落ち着いて下さい、皆さん。この文が真実だとは……。」
広間に突然広がっていく、江頭に対する疑念。
いいぞ、もっともっと、騒げ。
江頭を、追い詰めろ。
「な、何なんだこれはぁっ!?」
広間に、江頭の絶叫が轟く。
江頭は自分のスマホから俺たちの方へ視線を移した。
体をがくがくと震わせながら、江頭は首を横に振る。
「ち、違う!私じゃない!【人狼】は私じゃ……っ!こんなのはでたらめだ!違う、違う、違ううううっ!!!」
そして、ハッと江頭は目を見開き、よたよたと俺の方へ寄ってきた。
「あ、アキラくんなら、信じてくれますよね?ね?さっき言ってくれたじゃないですか……?大丈夫だって……。」
「え、えがしら、さん……。」
俺は数歩後退りし、江頭から顔を背けた。
「なっ……!何でっ!」
江頭は唖然として、俺の方を見つめる。
――そして、失望は、怒りへと変化する。
「なぜっ!?どうしてですかっ!?アキラくんっ!違う!私じゃないんだ!信じてくれ!……藤山……あいつだ……あいつが私を嵌めようとしているんだ!あいつのせいで!クソッ!クソッ!藤山!あの女!」
うわぁ、すごい。
江頭は目を吊り上げ、口から唾を飛ばし、顔を真っ赤にしながら、頭を掻きむしっている。
「違うっ!あの女はクズなんだっ!私が何をしたっていうんだ!?あいつがいるせいで……あいつさえいなければ!」
「しかし、藤山さんは『白』でしたよ、江頭さん。」
広間に来た御堂が、スマホ片手にそう告げる。
「藤山さんが【人狼】であるはずがないんです。だとすれば――。」
「嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だあああああっ!」
江頭は頭を掻きむしるのをやめ、突然後ろに振り向いた。そして、広間の外へと駆け出す。
「皆さんはここにいてください!」
すかさずその後を御堂が追いかける。
「アキラ、大丈夫?」
心配して駆け寄ってきた拓兄が、俺の顔を覗きこむ。
俺はこくりと頷いた。
「どういうこと……。江頭さん、【人狼】なの……?」
清水先輩の困惑した声に、誰も答えない。
張り詰める広間の空気に、俺は内心高揚感が隠せない。
ははっ!いいぞ!もっと、もっと疑え!
流石は『特殊カード』!
想像以上の効き目だ。まさかアプリ自体から、江頭を疑わせるようなメッセージが届くとは思わなかったな。
全ては昨日、『疑念(Suspicion)』のカードを手に入れてくれた柳生教授のおかげだ。
仕掛け人なのに見ろよ、あの表情!とんでもない役者だな!
「江頭さん、もしかして、藤山さんのところに行こうとしているんじゃ……。」
「御堂さんが追いかけてくれたから大丈夫だと思うけど……。」
「でも、何を仕出かすか、あの様子だと分からないんじゃないか……?」
「まさか殺そうとまではしないよな?さすがに……。」
「結局、江頭さんが【人狼】なの?でも、あそこまで取り乱しているから、【人狼】ではないかな?」
「あれがパフォーマンスである可能性も捨てきれません……。」
「そ、そんなの、どうすりゃいいんだよ……!また怪我人が出たら……!」
「――投票すれば、分かるんじゃないかな。」
俺がそう告げると、皆はハッとしたように顔を上げた。
「投票して、ゲームが終われば江頭さんが【人狼】だったってことだし、終わらなければ【人狼】じゃなかったってことになる。」
「で、でも!もし、【人狼】じゃなかったら……っ!」
清水先輩のあまりにも切羽詰まった声に、俺は思わず口元が歪む。
そうだなぁ。
【人狼】じゃなかったら、ただ『追放』されて終わりだな。
「……リスクはありますが、あの精神状態を鑑みると、江頭さんはもう限界かもしれません。」
柳生教授は険しい顔で、江頭が出て行った方を見つめる。
「ゲームさえ終われば、参加者たちは解放されます。もし【人狼】ではなかったとしても、我々がゲームを終えられれば、江頭さんも助かるわけです。――私は、江頭さんに投票します。彼のためにも、その方がいいでしょう。」
不安定な精神状態のままゲームに参加させるよりも、江頭の意識を無くした状態でゲームを終えた方が、彼の為になるってか。
うまくまとめたな、教授。
そして、この場で一番の年長者である教授の言葉は、重い。
「そ……そうですよね……。私もそう思います。」
ほら、すぐに清水先輩が鵜呑みにした。
「俺も、教授の案に賛成です。」
柳生教授に続き、拓兄もすぐに賛同する。
「俺は勧めないけどな。御堂が来てからでも、遅くはないだろう。」
新田は至極冷静にそう言ったが、この流れは止められそうにない。
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江頭を『追放』するには、今参加している人数の過半数以上だから、あと一人分の票が必要だ。
まぁ、そこはきっと、心配いらないだろう――。
俺はスマホを操作し、江頭文吉に投票をする。他のメンバーもそれに続いて、投票を行った。
しばらくして、御堂が広間に駆け込んできた。
「……江頭さんが、急に倒れました。」
そして、スマホの画面を俺たちに見せる。
『投票が終わりました。』
『江頭文吉さんに過半数を超える票が集まりましたので、江頭文吉さんを村から追放します。』
「原因はこれ、ですね。」
「で、でも……っ!」
清水先輩が御堂の言葉を遮るように、声をあげた。
「仕方がなかったんです!あのままじゃ、江頭さん、何するか分かりませんでしたし……っ!」
「それはっ……そうかもしれませんが。」
御堂はどこか歯切れの悪い返事だ。
「おそらくあなた方五人の投票が行われたと思いますが、新田さんは?」
「俺はやってない。」
「それならあと一票は……?」
「――私よ。」
その声は、御堂の後ろから聞こえてきた。
「私が票を入れたの。悪い?」
藤山明子。
ほとんど部屋に引きこもっているのか、なかなか顔を合わせていなかったが、相変わらず露出度の高い服を纏って、堂々としている。
「藤山、さん……。」
「私を入れて六票になったから、あの男、【追放】されたのね。いい気味だわ!ずっと根拠もなく、私が【人狼】だのなんだの言いがかりつけてきて。これで安心して、この部屋で食事ができるわね。」
「だからって、そんな言い方……っ!」
清水先輩が思わず不満を口にすると、藤山はキッと彼女に鋭い視線を向けた。
「あなたも江頭に投票しておいて、随分な言い草ねぇ?私に口答えする資格が、あなたにあるのかしら?」
「……っ!」
清水先輩は口をつぐみ、藤山から視線を逸らす。
藤山は勝ち誇ったように鼻を鳴らすと、キビキビした足取りで広間を去っていった。
皆、口には出さないが、結局ゲームが続いているということは、江頭は【人狼】ではなかったということになる。
きっと後悔や不安が渦巻いているだろう。
なぜアプリが虚偽の情報を流したのか、なぜ江頭は標的にされたのか――ってね?
いやぁ!どうもありがとう!皆さん!
おかげさまで、邪魔な江頭を無事『追放』することができました!
特に今回のMVPである柳生教授にはとっておきのご褒美をあげなきゃいけないなぁ!♡
――なんて、声に出せるはずもなく、俺も皆と同じように悲痛な顔を作って、俯く。
それから昼食が始まったが、もちろんそこに会話はない。皆、固い表情をしている。
んんっ、困ったなぁ。
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