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プロトタイプ版「悪魔の指先」
まずは久木さんをぺろり
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「ん?何だこれ?」
必要な機材を運ぼうとトラックの荷台を漁っていたら、ダンボールの奥の方に妙なものを見つけた。ソフトボールくらいの大きさの玉。ガラス素材で、ツルツルとした表面であり、真っ黒に照り輝いている。
さては前に誰かが持ってきたラッキーアイテムか?
一時期、現場では占いが流行っていたため、何かと現場にその日のラッキーアイテムが持ち込まれていた。すぐにそのブームも去ったが、持ってきてそのまま置いていくなんてことはよくある。どの人もずぼらだから。
俺は休憩している皆の元へ持っていこうと、黒い玉に手を伸ばした。
「うわっ、ちぃっ!」
黒い玉を掴んだ途端、掌にビリッとした痛みがはしった。驚いて掴んだ黒い玉をパッと離す。
未だに痛みが引かずジンジンする掌を見てみると、不思議なことに何ともなっていない。火傷するくらいの熱さだったから、少しは赤くなっているかと思っていたのに……。
黒は太陽の光を集めてしまうから、妙に熱を持っていたのだろうか。
「くそ、誰だよ。こんな危険物持ち込んだの。」
俺は手放してしまった黒い玉を探したのだが、これまた不思議なことに、いくら探しても出てこなかった。まるで煙のように消えてしまったのだ。
いつまでも探している暇はない。もし火傷になっていたら大変だと思い、掌を冷やすため近くの公園へと走った。
現在、俺は派遣社員としてとある元請けの小さな建設会社で働いている。一応、かつては新卒で大企業に入社したのだが、上司とのトラブルが露見して退職に追い込まれた。
上司とのトラブルというのは……まぁ、所謂痴情のもつれだ。
その上司は会社の上役の娘と婚約していた。それにも関わらず、"男である"俺と浮気していたのだから、さぁ大変。上役の娘と婚約している有能な男にホモ疑惑なんてかけられたら、会社にとって大きな損失となる。
そこで、俺に白羽の矢が立った。
話は簡単だ。
――ホモである俺が、上司の部下に対する優しさを愚かにも恋愛感情であると勘違いして、彼に無理矢理迫った。
こうして俺は、将来有望な上司をたぶらかしたホモ野郎として、会社を追い出された。
しかし、悲しくはなかった。元々行きたかった業種ではなかったし、金にも困っていなかったからだ。
俺は早くに父を亡くした。その際に莫大な遺産を受け取っていたため、生活していくための貯蓄は潤沢すぎるほどあるのだ。
だが、いつまでも働かないでいるのは人間として間違っていると思い、早くに俺は新天地で職探しを始めた。
そして、派遣社員としてだが、今働いている会社と巡り合った。
この会社を選んだのは、実に不純な理由からだ。
一つ、筋肉質な男が好きだから。土方って最高の職だと思う。
そしてもう一つ、面接担当の男が非常に俺好みだったからだ。
「で、いつまで経っても戻ってこないと思えば、どうした?」
「――久木さん。」
俺は蛇口をひねって、水を止める。
「どうした、唯乃介?そんなに水を流して。」
そう言って、久木さんは心配そうに俺の手に視線を落とした。
この人こそ、俺がこの会社に決めるきっかけとなった人、久木忠志さんだ。
面接官として俺の前に現われたこの人を一目見て、どきゅんと心臓をやられたのだ。「やべぇ、超好みなんだけど。」と思わず言ってしまいそうになるほどに。
久木さんは三十代という若さなのだが、実質今回の作業チームのリーダー的存在となっている。きめ細かな仕事ぶり、高い技術、そして柄の悪いおっさんたちとも仲良くできるそのコミュ力。もちろん、絶妙な気配りもできる。そんな久木さんの素晴らしさは語っても語っても言い尽くせない。
しかし、最も俺が推したいのはやはり彼の容姿そのものだ。
まず、久木さんは工事現場に似つかわしくないほど顔が整っている。美少年だった面影が今もあり、よく「若い頃の写真を見せろ、見せろー!」と他のメンバーからも言われている。顎髭を生やしているのは、幼く見られたくないためなんだとか。
もちろん、顔だけではない。その鍛えられた身体も俺の好みそのものである。厚すぎず、薄すぎない胸筋。美しく割れた腹筋。すらりと均整のとれた、無駄のない筋肉質な身体を初めて見た時は、これほど完璧な男がこの世にいるのかと驚いたほどだ。
あぁ、俺を心配して、走って来てくれたのだろう。うっすらと汗をかいている。俺は派遣社員で、いつ切られてもおかしくない身分なのに。久木さんの分け隔てなく接してくれるその姿勢が愛おしくてしょうがない。
「いやぁ、実は変なもの触ったら、すごい熱くて。火傷しちゃったのかなって、冷やしていたんです。」
「どれ、見せてみろ。」
久木さんに言われた通り、痛む左手を差し出す。すると、久木さんの大きな手が俺の左手を捕まえた。掌を覗き込まれる。息が当たって、何だかこぞばゆい。
「うーん……確かに見た感じ何ともなっていないが……。一応、病院行くか?」
「え!?いやいや、大丈夫ですよ!多分、仕事しているうちに痛みも引きますし!」
「そうかぁ?でも、無理はしないこと。いいな?」
と、微笑みながら言う久木さん。あざとい。少女漫画的に言うと、胸がきゅんきゅんする。
だが、残念なことに既に久木さんは売却済みである。もう高校生の息子だっている。この前、デレデレと奥さんの写真を見せてもらったが、普通に可愛い奥さんだった。料理もお菓子作りも得意なんだとか。見事に付け入る隙がない。
まぁ、仮にそういう隙があったとしても、以前のように浮気はしないかな。今の関係を崩したくはないし。
久木さんにお礼を言って、二人で現場に戻る。すると、休憩を終えたメンバーが既に仕事を再開していた。
「お?坊主、やっと来たか!何だ?でかいほうだったのか?がははっ!」
大きな笑い声をあげるのは、武田疾風さん。四十代、二児の父で、単身赴任中。飲みに行くのが好きで、よく夜の街を歩き回っている。むっちりとした筋肉の持ち主だ。
「ったく、ハヤさんは下品だなぁ。大丈夫かい?唯乃介くん。具合悪かったとか?」
武田さんのことをハヤさんと呼ぶのは、三宅哲雄さん。三十代後半で、武田さんとは高校の時から先輩後輩の仲だったらしい。何かと言葉が荒く、敵を作りやすい武田さんの良きストッパーとなっている。彼は触り心地のよさそうな、今にも触りたくなるお尻の持ち主で、いつも俺を悶々とさせる。
「……大丈夫そうだな。」
ちらりと俺を見て、すぐに自分の作業を再開したのは黒岩伸太郎さん。寡黙な人で、何かと誤解されてしまう人だが、根はいい人だ。それにすごく真面目な人で、仕事に熱心に取り組む姿は俺も見習いたいと思っている。非常に禁欲的な方で、この人は何をオカズにオナニーしているのか非常に気になるところである。
「すみません。ご心配、おかけしました!」
俺は頭を下げる。
「ま!別に心配してねぇけどな!」
「とか言って、ハヤさんは結構心配していたけどね。とにかく、大丈夫そうで何より、何より。」
「おい、三宅!適当なこと言ってんじゃねぇよ!」
「はいはい、分かってますよ~。ハヤ先輩~。」
「てめっ!ふざけやがって!」
「……。」
楽しそうに言い合いをする武田さんと三宅さん。そして、黙って自分の作業に戻る黒岩さん。
「さ、仕事はたくさんあるからな。午後もちゃちゃっとがんばりますか。」
そう言って、トンと背中を押してくれる久木さん。
以前の会社に未練はない。むしろ、俺は給料が低くても、今の職場の方が居心地がいい。
ここへ来たのも、きっと巡り合わせなんじゃないかって、最近そう思っている。
午後になると、太陽はあっという間に傾いていき、冬の訪れを感じさせる。昼食後の休憩時間を迎えるころには、すっかり外は暗くなって、街灯がほんのりと灯っていた。
俺はリビングとなる部屋の床に座って、ぼんやりと暗い外を眺めていた。武田さんたちは「腹減ったー。」と言って、コンビニへ行ってしまった。久木さんもふらりとごこかへ出かけてしまったため、今この場にいるのは俺一人だ。
「はぁぁ~~~。」
誰もいないのを良いことに、大きなため息をつく。
午後の俺の仕事ぶりは酷いものだった。重い物を運ぼうとすると、手に痛みがはしってまともに持ち上げることすらできない。そんな俺の様子を瞬時に察した久木さんが「無理すんな。」と、代わりに運んでくれた。
派遣社員である俺は、他のメンバーのように技術も何も持っていない。そのため、物を運ぶことくらいしかまだできない身なのに、それすらできない今の自分って給料泥棒以外の何者でもないじゃないか。
「つら……。」
「何が辛いんだ?」
「うわっ!?」
突然、ピトッと頬に温かい物が触れる。
頬をおさえながら後ろを振り向くと、してやったりと久木さんが子どもみたいな笑顔を浮かべて立っていた。その両手には缶コーヒーが。
「昼と同じ反応だな!」
「だ……もう。びっくりしましたよ。」
「いやぁ、何かでかい溜息ついてたから、少し元気づけようかなって。よいしょっと。」
俺の隣に座り、ほいと缶コーヒーを一本俺の手の中に置く。これを買いに行っていたのか。
「ありがとうございます。」
「暖かいコーヒーが美味しく感じられる季節がくるな。俺は暗い中仕事するの嫌だから、冬嫌いなんだけど、このコーヒーの美味しさはたまらん。」
「確かに。」
プルタブを開け、喉にコーヒーを流し込む。胃の中に温かいコーヒーが流れていき、冷えていた身体が温かくなった。
「今日はすみませんでした。」
「え?」
キョトンとこちらを見る久木さんに、へらりとした笑みを返す。
「俺、今日全然役に立たなくて……。むしろ久木さんに助けられてばかりで、ダメダメだったんで。本当に申し訳ないです。」
「唯乃介って……真面目だなぁ。あれくらいどうってことないさ。それに誰だって、不調な時くらいあるよ。」
「でも……。」
あぁ、久木さんの優しい言葉が逆に辛い。
俺の煮え切らない態度に、久木さんは少し眉を寄せる。かと思ったら、急にパチンと指を鳴らした。
「確かに!今日は俺、唯乃介のことたくさんフォローしたわ!なぁ?」
「え?えぇ。たくさんフォローしていただきました。」
「てことは、だ。少しくらい見返り貰ってもいいよなぁ?」
見返り?何だろう。帰りに何か奢るとかか?
そう考えていると、久木さんはトントンと自分の右肩を叩いた。
「いやぁ~、たくさん木材は運んだし、重い機材使ったから、肩が凝ったなぁ~。」
「へ?」
「誰か揉んでくれないかなぁ~?」
あぁ、なんだ。そういうことか。
久木さんのわざとらしい口調に、思わずふふっと笑みがこぼれてしまった。
どうせこのまま優しい言葉をかけたって、俺が納得しないと感じて、あえて"見返り"を求めたのだろう。俺の罪悪感を減らすために。
あぁ、好きだな。久木さんのそう言う優しい所。
俺は久木さんの背中に回り、その肩に両手を置く。男らしい広い肩。
「じゃ、後輩である俺が揉みますよ。」
「おっ。なら、お願いしちゃおうかな。」
「はい!任せてください。」
父が亡くなる前は、よく仕事から帰って来た父の肩もみをしていたものだ。それなりに腕はある。
まずは肩の筋肉をほぐすために、ゆっくりと指に圧力をかけていく。ううん、確かに固い。
「お客さん、かなり凝ってますね~。」
「だろ~?毎日頑張って働いているからなぁ。」
ぐりぐりと少しすつ力をこめて、揉みほぐしていく。やっているうちに、指先に熱が集まってくるような気がしてきた。その熱を感じれば感じるほど、あっけないほど簡単に肩の筋肉はほぐれていく。
あれ?俺って、こんなに肩もみ上手だったっけ?
揉み始めた最初は会話を交わしていたのだが、俺が集中するにつれ、久木さんも沈黙するようになっていた。よほど気持ちいいのか、頭は前の方に傾き、身体の力が抜けているように思われる。
「お客さん、いかがですか~?俺のテクニック~。」
「……。」
「お客さん……久木さん?」
「……。」
久木さんは何も答えない。
「ひ、久木先輩?」
「……。」
何かがおかしいとやっと気づき、俺は久木さんの肩から手を離し、彼の正面に回り込んだ。
「ちょっと、いきなり返事しなくなるとびっくりするんでやめてくださいよ。」
久木さんは俯いている。トントンと俺は久木さんの肩を軽く叩き、もう一度呼びかけた。
「久木さん?」
「……はい。」
久木さんは緩慢な動きで顔を上げた。
「っ!?」
何だこれ。
一体、何が起きている……!?
顔を上げた久木さんの表情は虚ろだった。笑顔のまぶしい久木さんからは考えられない。口を半開きにし、瞳は虚空を見つめている。よく見ると、口の端からたらりと唾液が零れていた。
目の前の光景が信じられない。いくらマッサージが気持ちいいからって、こんな、まるで、薬物でも摂取したような……。いや、薬物摂取した人の表情なんて実際見たことないけど。
「ちょっと、ふざけるのもいいかげんにしてくださいよ、久木さん。いくら俺の肩もみが気持ちいいからって。」
「肩もみ……気持ちいい……。」
「へ?」
すると、久木さんは表情を蕩けさせた。目を細くし、ぽやっと頬が赤く染まる。はぁっと熱い吐息を漏らし、色気たっぷりな声で言った。
「もっと……。」
「も、もっと?」
「もっと……マッサージして……。」
やべぇ。何か股間にきそうで、俺の中に警告ランプが真っ赤にけたたましい音を立てながら点滅している。
いやいや、ちょっと待て。今は煩悩に負けてはいけない。
俺はぶんぶんと頭を振り、思考を巡らす。
そう、マッサージ。肩もみだ。俺が肩もみをしたら、なぜか久木さんはおかしくなってしまった。肩もみと言えば、妙に指先が熱かったな……。
俺は自分の掌を見る。
「なんだっ……これ?」
爪が真っ黒に染まっていた。まるで大理石のようにキラキラと輝いて、爪じゃないみたいだ。しかも、指先にジンジンと熱が増してきている。
そうだ。昼時に触った、あの黒い玉。もしかして、あれが原因なんじゃないか。
とにもかくにも、まずはこの状況を何とかしなければいけない。
「んっ、ふぅっ……。」
はっと久木さんの方に視線を移す。
久木さんの身体はゆらゆら揺れていた。そして、バランスを崩し、ゆっくりと床へと倒れそうになる。
床に頭をぶつけてはいけないと、今までにない瞬発力を発揮し、久木さんの身体を支える。その時、片方の腕で彼の肩を抱き、もう片方の手を腰に添えた。すると、久木さんの喉がひくりと鳴って、「ひぁ、あんっ!」という嫌に艶めかしい声が俺の耳に届いた。
くたりと俺の身体に身を預ける久木さん。いつもなら皆を引っ張っていくリーダーであるはずなのに、俺の腕の中で気持ちよさそうにうっとりとしている……。
ドッドッドッドッとはっきり聞こえるほど、心臓が激しく暴れる。そのくせ、緊張で背筋に寒気を感じる。
これは。
これは、逃してはいけない、チャンスなのでは?
久木さんは前後不覚だ。今なら、何をやっても、久木さんの意識に残らないんじゃないか?
俺は、ゆっくりと久木さんの体をうつ伏せにする。
そして、思い切って久木さんの尻に手をおいた。
「はっ、久木さんっ……!」
その筋肉質で固い尻を揉みしだく。
久木さんの、尻。やっぱり想像していたように、固くて、でも俺の手に収まる大きさで。むにむにと、なんて弾力性があるのだろう。あぁ、何か事故でも起きない限り触ることなんてできないと思っていたから、夢みたいだ。
いける。
調子に乗った俺は、久木さんのズボンを一気におろす。ぷりんと少し焼けた尻が顔を出す。そして、遠慮せず直に尻を触る。
「……っ!」
やっぱり服の上からと直とでは、柔らかさが違う。なんて気持ちが良いんだろう。
少し顔を近づけて臭いをかいでみる。仕事終わりの汗臭さで鼻がツンとする。そんなことですら、俺にとっては興奮材料だ。
むくむくと自分の性器が膨れていくのが分かる。
やりたい。久木さんの尻でやりたい!
「ねぇ、久木さん……?」
「んっ、あ……ふぁ……っ。」
「マッサージって気持ちいいですよね?」
「んっ、んぅっ、ふ……ひもちいい……。」
「もっと気持ちよくなりたいですよね?」
「ん、んんっ……!」
コクコクと真っ赤な顔で頭を縦にふる久木さん。
俺の真っ黒な心が燃え上がった。
「なら、今からもっと気持ちよくなれるローションを塗りますから。ちゃんと受け止めてくださいね……!」
俺はジッパーを下げ、完全に勃起した自分のペニスを取り出し、数回竿を上下に擦る。
そして、亀頭を久木さんのお尻に擦り付ける。びちゃびちゃと俺の我慢汁を塗りたくるが、久木さんは自分が何をされているかも分からず、下であんあん喘いでいる。
「今からっ……ローション出しますからねっ!」
「はっ、あぁっ、ん!」
「も、もう少しっ……ん、ぐぅっ!」
溜まっていた熱が一気に放出される。びゅるびゅるとペニスから溢れた白濁は久木さんの尻を汚していく。
息を整えながら、自分のペニスを手早くズボンの中にしまう。
やべぇ。やっちまった。
久木さんの尻は、俺の精液でベトベトだ。もうこれは言い訳のしようもないくらいに。
しかし、俺は妙な確信があった。
「久木さん。」
俺は再び彼のお尻に手を伸ばし、精液をまるでクリームのように彼の尻に塗りたくった。
「これは久木さんを気持ちよくしてくれるローションです。毎日身体に塗ると、力がみなぎってきます。しかし、このローションを持っているのは俺だけです。」
「ゆいのすけくんだけ……」
「そう。だから、久木さんは俺に毎日マッサージして貰う必要があります。」
「まっさーじ……ゆいのすけくんに……。」
「ね。久木さん。」
俺は彼の耳元で囁いた。
「これから、俺の家に来てくださいよ。」
「あっ、あぁんっ!出るっ!ゆいのすけくんっ、で、出るからぁっ!」
あの黒い玉に触ったことで、俺に妙な力が宿った。
どうやら俺の手から出る熱を人の身体に当てると、その人はトランス状態になっていまうらしい。正常な思考ができなくなるため、何を言っても相手を納得させてしまうことができる。いわゆる催眠状態だ。
あのあと、久木さんには俺の家に来てもらった。久木さんの家族には電話口でご本人に「急な飲み会が入った。」と断ってもらった。
そして、家の中へ入った途端、彼の頭を俺の手で挟んでやれば、すぐに久木さんは堕ちてくれた。あっけないほどに。
あとは簡単だ。
「久木さんはっ、俺のことがっ、好きですよねっ!」
「んっ、んんっ、はいっ!好きっ!好きですぅっ!」
「奥さんよりもっ、子どもよりもっ、誰よりもっ、俺のことが好きですよね!」
「好きっ!好きぃっ!」
「俺とこうやってセックスして、気持ちよくなるのも大好きですよねっ!」
「はっぁ、せっくすっ、んっ、ぁんっ!好きっ、だいすきっ、いっ!」
パンパンパンパンっ。殺風景なリビングに肌と肌がぶつかる、いやらしい音が響き渡る。
四つん這いになった久木さんを後ろから犯し始めて、どのくらいが経ったのだろう。
セックスの持ち込むのは簡単だった。耳元で俺の都合のいい言葉を吐けば、全部久木さんはその通りに思い込んでくれた。
久木さんはもう俺の言いなりだった。何だってしてくれる。「おちんちんを舐め舐めして。」と言えば、口いっぱいに俺のペニスを一生懸命ほうばってくれた。床に射精して、「舐めてくださいよ。」といえば、犬みたいに床をべろべろと美味しそうに舐めてくれた。
「久木さんの大好きな精液をあげますよっ!ほらっ、なんで言うんでしたっけ!?」
「あっ、ありがとうございますっ!お、俺のっ、けつまんこにっ、精液をくださって、ありがとう、ございますぅっ!あ、あ、んぁああーーーーっ!」
彼の中へ出すと、一緒に彼もイッた。もう何度も射精させているから、薄い透明な液しか出てこない。それでも、気持ちよさそうに久木さんはよがる。
「はっ、ん……」
俺がずるりとペニスを抜くと、久木さんは慌てて自分の指でアナルにふたをする。
俺はわざとらしく聞く。
「何をしているんですか?久木さん」
「んっ……こ、これはね。唯之助くんがくれた、大事な精液なんだ。だから、こぼすわけにはいかない。ちゃんと、全部、全部、下のお口で飲み干さなきゃ……。」
「そうなんですね。久木さんは、俺の精液が大好きなんですね。」
「うんっ、大好き!唯之助くんが好きで、唯之助くんの精液が大好きで……ッ!あぁッ!キミが好きすぎて、もう、どうしたら良いのか分からないよ!」
「俺も久木さんのことが大好きですよ。」
「ん、んんぅっ!あ、ありがとうっ!」
久木さんは俺にあごをくすぐられると、嬉しそうにまたチンポをふくらませる。
これで、もう久木さんは俺のものだ。彼の厚い胸も、乳首も、ペニスも、お尻も、アナルも、感情も、何もかもがすべて俺のものだ。
既婚者?家族?知ったことか。何か問題があれば、彼の家族だって俺のこの手で黙らせればいいだけのこと。
「まぁ、かわいそうだから、生活費だけは振り込んであげますか。」
「ん?何が?」
「いいえ、なんでも。それより、」
俺は彼を引っ張り、自分の腕の中に閉じ込める。
「明日から忙しいですよ。」
するりと久木さんのたくましい腕が、俺の背中へと回る。
「唯之助くんのためなら、なんでも協力するよ。」
彼はキラキラとまるで少女漫画のヒーローみたいな笑みを浮かべて、俺の股間に顔を埋めた。
必要な機材を運ぼうとトラックの荷台を漁っていたら、ダンボールの奥の方に妙なものを見つけた。ソフトボールくらいの大きさの玉。ガラス素材で、ツルツルとした表面であり、真っ黒に照り輝いている。
さては前に誰かが持ってきたラッキーアイテムか?
一時期、現場では占いが流行っていたため、何かと現場にその日のラッキーアイテムが持ち込まれていた。すぐにそのブームも去ったが、持ってきてそのまま置いていくなんてことはよくある。どの人もずぼらだから。
俺は休憩している皆の元へ持っていこうと、黒い玉に手を伸ばした。
「うわっ、ちぃっ!」
黒い玉を掴んだ途端、掌にビリッとした痛みがはしった。驚いて掴んだ黒い玉をパッと離す。
未だに痛みが引かずジンジンする掌を見てみると、不思議なことに何ともなっていない。火傷するくらいの熱さだったから、少しは赤くなっているかと思っていたのに……。
黒は太陽の光を集めてしまうから、妙に熱を持っていたのだろうか。
「くそ、誰だよ。こんな危険物持ち込んだの。」
俺は手放してしまった黒い玉を探したのだが、これまた不思議なことに、いくら探しても出てこなかった。まるで煙のように消えてしまったのだ。
いつまでも探している暇はない。もし火傷になっていたら大変だと思い、掌を冷やすため近くの公園へと走った。
現在、俺は派遣社員としてとある元請けの小さな建設会社で働いている。一応、かつては新卒で大企業に入社したのだが、上司とのトラブルが露見して退職に追い込まれた。
上司とのトラブルというのは……まぁ、所謂痴情のもつれだ。
その上司は会社の上役の娘と婚約していた。それにも関わらず、"男である"俺と浮気していたのだから、さぁ大変。上役の娘と婚約している有能な男にホモ疑惑なんてかけられたら、会社にとって大きな損失となる。
そこで、俺に白羽の矢が立った。
話は簡単だ。
――ホモである俺が、上司の部下に対する優しさを愚かにも恋愛感情であると勘違いして、彼に無理矢理迫った。
こうして俺は、将来有望な上司をたぶらかしたホモ野郎として、会社を追い出された。
しかし、悲しくはなかった。元々行きたかった業種ではなかったし、金にも困っていなかったからだ。
俺は早くに父を亡くした。その際に莫大な遺産を受け取っていたため、生活していくための貯蓄は潤沢すぎるほどあるのだ。
だが、いつまでも働かないでいるのは人間として間違っていると思い、早くに俺は新天地で職探しを始めた。
そして、派遣社員としてだが、今働いている会社と巡り合った。
この会社を選んだのは、実に不純な理由からだ。
一つ、筋肉質な男が好きだから。土方って最高の職だと思う。
そしてもう一つ、面接担当の男が非常に俺好みだったからだ。
「で、いつまで経っても戻ってこないと思えば、どうした?」
「――久木さん。」
俺は蛇口をひねって、水を止める。
「どうした、唯乃介?そんなに水を流して。」
そう言って、久木さんは心配そうに俺の手に視線を落とした。
この人こそ、俺がこの会社に決めるきっかけとなった人、久木忠志さんだ。
面接官として俺の前に現われたこの人を一目見て、どきゅんと心臓をやられたのだ。「やべぇ、超好みなんだけど。」と思わず言ってしまいそうになるほどに。
久木さんは三十代という若さなのだが、実質今回の作業チームのリーダー的存在となっている。きめ細かな仕事ぶり、高い技術、そして柄の悪いおっさんたちとも仲良くできるそのコミュ力。もちろん、絶妙な気配りもできる。そんな久木さんの素晴らしさは語っても語っても言い尽くせない。
しかし、最も俺が推したいのはやはり彼の容姿そのものだ。
まず、久木さんは工事現場に似つかわしくないほど顔が整っている。美少年だった面影が今もあり、よく「若い頃の写真を見せろ、見せろー!」と他のメンバーからも言われている。顎髭を生やしているのは、幼く見られたくないためなんだとか。
もちろん、顔だけではない。その鍛えられた身体も俺の好みそのものである。厚すぎず、薄すぎない胸筋。美しく割れた腹筋。すらりと均整のとれた、無駄のない筋肉質な身体を初めて見た時は、これほど完璧な男がこの世にいるのかと驚いたほどだ。
あぁ、俺を心配して、走って来てくれたのだろう。うっすらと汗をかいている。俺は派遣社員で、いつ切られてもおかしくない身分なのに。久木さんの分け隔てなく接してくれるその姿勢が愛おしくてしょうがない。
「いやぁ、実は変なもの触ったら、すごい熱くて。火傷しちゃったのかなって、冷やしていたんです。」
「どれ、見せてみろ。」
久木さんに言われた通り、痛む左手を差し出す。すると、久木さんの大きな手が俺の左手を捕まえた。掌を覗き込まれる。息が当たって、何だかこぞばゆい。
「うーん……確かに見た感じ何ともなっていないが……。一応、病院行くか?」
「え!?いやいや、大丈夫ですよ!多分、仕事しているうちに痛みも引きますし!」
「そうかぁ?でも、無理はしないこと。いいな?」
と、微笑みながら言う久木さん。あざとい。少女漫画的に言うと、胸がきゅんきゅんする。
だが、残念なことに既に久木さんは売却済みである。もう高校生の息子だっている。この前、デレデレと奥さんの写真を見せてもらったが、普通に可愛い奥さんだった。料理もお菓子作りも得意なんだとか。見事に付け入る隙がない。
まぁ、仮にそういう隙があったとしても、以前のように浮気はしないかな。今の関係を崩したくはないし。
久木さんにお礼を言って、二人で現場に戻る。すると、休憩を終えたメンバーが既に仕事を再開していた。
「お?坊主、やっと来たか!何だ?でかいほうだったのか?がははっ!」
大きな笑い声をあげるのは、武田疾風さん。四十代、二児の父で、単身赴任中。飲みに行くのが好きで、よく夜の街を歩き回っている。むっちりとした筋肉の持ち主だ。
「ったく、ハヤさんは下品だなぁ。大丈夫かい?唯乃介くん。具合悪かったとか?」
武田さんのことをハヤさんと呼ぶのは、三宅哲雄さん。三十代後半で、武田さんとは高校の時から先輩後輩の仲だったらしい。何かと言葉が荒く、敵を作りやすい武田さんの良きストッパーとなっている。彼は触り心地のよさそうな、今にも触りたくなるお尻の持ち主で、いつも俺を悶々とさせる。
「……大丈夫そうだな。」
ちらりと俺を見て、すぐに自分の作業を再開したのは黒岩伸太郎さん。寡黙な人で、何かと誤解されてしまう人だが、根はいい人だ。それにすごく真面目な人で、仕事に熱心に取り組む姿は俺も見習いたいと思っている。非常に禁欲的な方で、この人は何をオカズにオナニーしているのか非常に気になるところである。
「すみません。ご心配、おかけしました!」
俺は頭を下げる。
「ま!別に心配してねぇけどな!」
「とか言って、ハヤさんは結構心配していたけどね。とにかく、大丈夫そうで何より、何より。」
「おい、三宅!適当なこと言ってんじゃねぇよ!」
「はいはい、分かってますよ~。ハヤ先輩~。」
「てめっ!ふざけやがって!」
「……。」
楽しそうに言い合いをする武田さんと三宅さん。そして、黙って自分の作業に戻る黒岩さん。
「さ、仕事はたくさんあるからな。午後もちゃちゃっとがんばりますか。」
そう言って、トンと背中を押してくれる久木さん。
以前の会社に未練はない。むしろ、俺は給料が低くても、今の職場の方が居心地がいい。
ここへ来たのも、きっと巡り合わせなんじゃないかって、最近そう思っている。
午後になると、太陽はあっという間に傾いていき、冬の訪れを感じさせる。昼食後の休憩時間を迎えるころには、すっかり外は暗くなって、街灯がほんのりと灯っていた。
俺はリビングとなる部屋の床に座って、ぼんやりと暗い外を眺めていた。武田さんたちは「腹減ったー。」と言って、コンビニへ行ってしまった。久木さんもふらりとごこかへ出かけてしまったため、今この場にいるのは俺一人だ。
「はぁぁ~~~。」
誰もいないのを良いことに、大きなため息をつく。
午後の俺の仕事ぶりは酷いものだった。重い物を運ぼうとすると、手に痛みがはしってまともに持ち上げることすらできない。そんな俺の様子を瞬時に察した久木さんが「無理すんな。」と、代わりに運んでくれた。
派遣社員である俺は、他のメンバーのように技術も何も持っていない。そのため、物を運ぶことくらいしかまだできない身なのに、それすらできない今の自分って給料泥棒以外の何者でもないじゃないか。
「つら……。」
「何が辛いんだ?」
「うわっ!?」
突然、ピトッと頬に温かい物が触れる。
頬をおさえながら後ろを振り向くと、してやったりと久木さんが子どもみたいな笑顔を浮かべて立っていた。その両手には缶コーヒーが。
「昼と同じ反応だな!」
「だ……もう。びっくりしましたよ。」
「いやぁ、何かでかい溜息ついてたから、少し元気づけようかなって。よいしょっと。」
俺の隣に座り、ほいと缶コーヒーを一本俺の手の中に置く。これを買いに行っていたのか。
「ありがとうございます。」
「暖かいコーヒーが美味しく感じられる季節がくるな。俺は暗い中仕事するの嫌だから、冬嫌いなんだけど、このコーヒーの美味しさはたまらん。」
「確かに。」
プルタブを開け、喉にコーヒーを流し込む。胃の中に温かいコーヒーが流れていき、冷えていた身体が温かくなった。
「今日はすみませんでした。」
「え?」
キョトンとこちらを見る久木さんに、へらりとした笑みを返す。
「俺、今日全然役に立たなくて……。むしろ久木さんに助けられてばかりで、ダメダメだったんで。本当に申し訳ないです。」
「唯乃介って……真面目だなぁ。あれくらいどうってことないさ。それに誰だって、不調な時くらいあるよ。」
「でも……。」
あぁ、久木さんの優しい言葉が逆に辛い。
俺の煮え切らない態度に、久木さんは少し眉を寄せる。かと思ったら、急にパチンと指を鳴らした。
「確かに!今日は俺、唯乃介のことたくさんフォローしたわ!なぁ?」
「え?えぇ。たくさんフォローしていただきました。」
「てことは、だ。少しくらい見返り貰ってもいいよなぁ?」
見返り?何だろう。帰りに何か奢るとかか?
そう考えていると、久木さんはトントンと自分の右肩を叩いた。
「いやぁ~、たくさん木材は運んだし、重い機材使ったから、肩が凝ったなぁ~。」
「へ?」
「誰か揉んでくれないかなぁ~?」
あぁ、なんだ。そういうことか。
久木さんのわざとらしい口調に、思わずふふっと笑みがこぼれてしまった。
どうせこのまま優しい言葉をかけたって、俺が納得しないと感じて、あえて"見返り"を求めたのだろう。俺の罪悪感を減らすために。
あぁ、好きだな。久木さんのそう言う優しい所。
俺は久木さんの背中に回り、その肩に両手を置く。男らしい広い肩。
「じゃ、後輩である俺が揉みますよ。」
「おっ。なら、お願いしちゃおうかな。」
「はい!任せてください。」
父が亡くなる前は、よく仕事から帰って来た父の肩もみをしていたものだ。それなりに腕はある。
まずは肩の筋肉をほぐすために、ゆっくりと指に圧力をかけていく。ううん、確かに固い。
「お客さん、かなり凝ってますね~。」
「だろ~?毎日頑張って働いているからなぁ。」
ぐりぐりと少しすつ力をこめて、揉みほぐしていく。やっているうちに、指先に熱が集まってくるような気がしてきた。その熱を感じれば感じるほど、あっけないほど簡単に肩の筋肉はほぐれていく。
あれ?俺って、こんなに肩もみ上手だったっけ?
揉み始めた最初は会話を交わしていたのだが、俺が集中するにつれ、久木さんも沈黙するようになっていた。よほど気持ちいいのか、頭は前の方に傾き、身体の力が抜けているように思われる。
「お客さん、いかがですか~?俺のテクニック~。」
「……。」
「お客さん……久木さん?」
「……。」
久木さんは何も答えない。
「ひ、久木先輩?」
「……。」
何かがおかしいとやっと気づき、俺は久木さんの肩から手を離し、彼の正面に回り込んだ。
「ちょっと、いきなり返事しなくなるとびっくりするんでやめてくださいよ。」
久木さんは俯いている。トントンと俺は久木さんの肩を軽く叩き、もう一度呼びかけた。
「久木さん?」
「……はい。」
久木さんは緩慢な動きで顔を上げた。
「っ!?」
何だこれ。
一体、何が起きている……!?
顔を上げた久木さんの表情は虚ろだった。笑顔のまぶしい久木さんからは考えられない。口を半開きにし、瞳は虚空を見つめている。よく見ると、口の端からたらりと唾液が零れていた。
目の前の光景が信じられない。いくらマッサージが気持ちいいからって、こんな、まるで、薬物でも摂取したような……。いや、薬物摂取した人の表情なんて実際見たことないけど。
「ちょっと、ふざけるのもいいかげんにしてくださいよ、久木さん。いくら俺の肩もみが気持ちいいからって。」
「肩もみ……気持ちいい……。」
「へ?」
すると、久木さんは表情を蕩けさせた。目を細くし、ぽやっと頬が赤く染まる。はぁっと熱い吐息を漏らし、色気たっぷりな声で言った。
「もっと……。」
「も、もっと?」
「もっと……マッサージして……。」
やべぇ。何か股間にきそうで、俺の中に警告ランプが真っ赤にけたたましい音を立てながら点滅している。
いやいや、ちょっと待て。今は煩悩に負けてはいけない。
俺はぶんぶんと頭を振り、思考を巡らす。
そう、マッサージ。肩もみだ。俺が肩もみをしたら、なぜか久木さんはおかしくなってしまった。肩もみと言えば、妙に指先が熱かったな……。
俺は自分の掌を見る。
「なんだっ……これ?」
爪が真っ黒に染まっていた。まるで大理石のようにキラキラと輝いて、爪じゃないみたいだ。しかも、指先にジンジンと熱が増してきている。
そうだ。昼時に触った、あの黒い玉。もしかして、あれが原因なんじゃないか。
とにもかくにも、まずはこの状況を何とかしなければいけない。
「んっ、ふぅっ……。」
はっと久木さんの方に視線を移す。
久木さんの身体はゆらゆら揺れていた。そして、バランスを崩し、ゆっくりと床へと倒れそうになる。
床に頭をぶつけてはいけないと、今までにない瞬発力を発揮し、久木さんの身体を支える。その時、片方の腕で彼の肩を抱き、もう片方の手を腰に添えた。すると、久木さんの喉がひくりと鳴って、「ひぁ、あんっ!」という嫌に艶めかしい声が俺の耳に届いた。
くたりと俺の身体に身を預ける久木さん。いつもなら皆を引っ張っていくリーダーであるはずなのに、俺の腕の中で気持ちよさそうにうっとりとしている……。
ドッドッドッドッとはっきり聞こえるほど、心臓が激しく暴れる。そのくせ、緊張で背筋に寒気を感じる。
これは。
これは、逃してはいけない、チャンスなのでは?
久木さんは前後不覚だ。今なら、何をやっても、久木さんの意識に残らないんじゃないか?
俺は、ゆっくりと久木さんの体をうつ伏せにする。
そして、思い切って久木さんの尻に手をおいた。
「はっ、久木さんっ……!」
その筋肉質で固い尻を揉みしだく。
久木さんの、尻。やっぱり想像していたように、固くて、でも俺の手に収まる大きさで。むにむにと、なんて弾力性があるのだろう。あぁ、何か事故でも起きない限り触ることなんてできないと思っていたから、夢みたいだ。
いける。
調子に乗った俺は、久木さんのズボンを一気におろす。ぷりんと少し焼けた尻が顔を出す。そして、遠慮せず直に尻を触る。
「……っ!」
やっぱり服の上からと直とでは、柔らかさが違う。なんて気持ちが良いんだろう。
少し顔を近づけて臭いをかいでみる。仕事終わりの汗臭さで鼻がツンとする。そんなことですら、俺にとっては興奮材料だ。
むくむくと自分の性器が膨れていくのが分かる。
やりたい。久木さんの尻でやりたい!
「ねぇ、久木さん……?」
「んっ、あ……ふぁ……っ。」
「マッサージって気持ちいいですよね?」
「んっ、んぅっ、ふ……ひもちいい……。」
「もっと気持ちよくなりたいですよね?」
「ん、んんっ……!」
コクコクと真っ赤な顔で頭を縦にふる久木さん。
俺の真っ黒な心が燃え上がった。
「なら、今からもっと気持ちよくなれるローションを塗りますから。ちゃんと受け止めてくださいね……!」
俺はジッパーを下げ、完全に勃起した自分のペニスを取り出し、数回竿を上下に擦る。
そして、亀頭を久木さんのお尻に擦り付ける。びちゃびちゃと俺の我慢汁を塗りたくるが、久木さんは自分が何をされているかも分からず、下であんあん喘いでいる。
「今からっ……ローション出しますからねっ!」
「はっ、あぁっ、ん!」
「も、もう少しっ……ん、ぐぅっ!」
溜まっていた熱が一気に放出される。びゅるびゅるとペニスから溢れた白濁は久木さんの尻を汚していく。
息を整えながら、自分のペニスを手早くズボンの中にしまう。
やべぇ。やっちまった。
久木さんの尻は、俺の精液でベトベトだ。もうこれは言い訳のしようもないくらいに。
しかし、俺は妙な確信があった。
「久木さん。」
俺は再び彼のお尻に手を伸ばし、精液をまるでクリームのように彼の尻に塗りたくった。
「これは久木さんを気持ちよくしてくれるローションです。毎日身体に塗ると、力がみなぎってきます。しかし、このローションを持っているのは俺だけです。」
「ゆいのすけくんだけ……」
「そう。だから、久木さんは俺に毎日マッサージして貰う必要があります。」
「まっさーじ……ゆいのすけくんに……。」
「ね。久木さん。」
俺は彼の耳元で囁いた。
「これから、俺の家に来てくださいよ。」
「あっ、あぁんっ!出るっ!ゆいのすけくんっ、で、出るからぁっ!」
あの黒い玉に触ったことで、俺に妙な力が宿った。
どうやら俺の手から出る熱を人の身体に当てると、その人はトランス状態になっていまうらしい。正常な思考ができなくなるため、何を言っても相手を納得させてしまうことができる。いわゆる催眠状態だ。
あのあと、久木さんには俺の家に来てもらった。久木さんの家族には電話口でご本人に「急な飲み会が入った。」と断ってもらった。
そして、家の中へ入った途端、彼の頭を俺の手で挟んでやれば、すぐに久木さんは堕ちてくれた。あっけないほどに。
あとは簡単だ。
「久木さんはっ、俺のことがっ、好きですよねっ!」
「んっ、んんっ、はいっ!好きっ!好きですぅっ!」
「奥さんよりもっ、子どもよりもっ、誰よりもっ、俺のことが好きですよね!」
「好きっ!好きぃっ!」
「俺とこうやってセックスして、気持ちよくなるのも大好きですよねっ!」
「はっぁ、せっくすっ、んっ、ぁんっ!好きっ、だいすきっ、いっ!」
パンパンパンパンっ。殺風景なリビングに肌と肌がぶつかる、いやらしい音が響き渡る。
四つん這いになった久木さんを後ろから犯し始めて、どのくらいが経ったのだろう。
セックスの持ち込むのは簡単だった。耳元で俺の都合のいい言葉を吐けば、全部久木さんはその通りに思い込んでくれた。
久木さんはもう俺の言いなりだった。何だってしてくれる。「おちんちんを舐め舐めして。」と言えば、口いっぱいに俺のペニスを一生懸命ほうばってくれた。床に射精して、「舐めてくださいよ。」といえば、犬みたいに床をべろべろと美味しそうに舐めてくれた。
「久木さんの大好きな精液をあげますよっ!ほらっ、なんで言うんでしたっけ!?」
「あっ、ありがとうございますっ!お、俺のっ、けつまんこにっ、精液をくださって、ありがとう、ございますぅっ!あ、あ、んぁああーーーーっ!」
彼の中へ出すと、一緒に彼もイッた。もう何度も射精させているから、薄い透明な液しか出てこない。それでも、気持ちよさそうに久木さんはよがる。
「はっ、ん……」
俺がずるりとペニスを抜くと、久木さんは慌てて自分の指でアナルにふたをする。
俺はわざとらしく聞く。
「何をしているんですか?久木さん」
「んっ……こ、これはね。唯之助くんがくれた、大事な精液なんだ。だから、こぼすわけにはいかない。ちゃんと、全部、全部、下のお口で飲み干さなきゃ……。」
「そうなんですね。久木さんは、俺の精液が大好きなんですね。」
「うんっ、大好き!唯之助くんが好きで、唯之助くんの精液が大好きで……ッ!あぁッ!キミが好きすぎて、もう、どうしたら良いのか分からないよ!」
「俺も久木さんのことが大好きですよ。」
「ん、んんぅっ!あ、ありがとうっ!」
久木さんは俺にあごをくすぐられると、嬉しそうにまたチンポをふくらませる。
これで、もう久木さんは俺のものだ。彼の厚い胸も、乳首も、ペニスも、お尻も、アナルも、感情も、何もかもがすべて俺のものだ。
既婚者?家族?知ったことか。何か問題があれば、彼の家族だって俺のこの手で黙らせればいいだけのこと。
「まぁ、かわいそうだから、生活費だけは振り込んであげますか。」
「ん?何が?」
「いいえ、なんでも。それより、」
俺は彼を引っ張り、自分の腕の中に閉じ込める。
「明日から忙しいですよ。」
するりと久木さんのたくましい腕が、俺の背中へと回る。
「唯之助くんのためなら、なんでも協力するよ。」
彼はキラキラとまるで少女漫画のヒーローみたいな笑みを浮かべて、俺の股間に顔を埋めた。
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