54 / 153
気にしてなかった謎。
しおりを挟む各社、気合いの入ったプレゼンをしてくれた翌日。
凄まじい熱量を持った大人達に囲まれて長時間を過ごした結果、私はとても学校に行きたくなった。なので今日は学校だ。
「へいマーちゃん! 学校行くよ!」
「あーい!」
「ナイトー! おねがーい!」
「わぅんっ!」
顔洗って歯磨きして朝ごはんを食べ、制服に着替えてお庭に出てナイトを召喚! いでよ私の騎士様!
私はもう、学校に行きたくて行きたくて仕方ないのだ。助けて肉球わんわんタクシー!
「ナイト、今日はコレで行こうね。DDスクリプトさんから貰ったの」
「わぅ?」
前回はグレイパーってアイテムを利用してナイトに騎乗してたけど、今回はちゃんとナイト用の鞍が有る。
昨日の会合でDDスクリプトさんから貰ったのだ。
なんでも、どこからか私がナイトに騎乗して学校に行ってるとの情報をキャッチしてたDDスクリプトさんが、私にプレゼントとして作ってくれてた。
マスコミは潰したのに情報はどこから漏れたのかと言えば、まぁ通学途中に私を目撃した様々な人が呟いたペイッター等である。うん、そりゃそうや。
それで、DDスクリプトさんは電子機器系の応用アイテムが得意なんだけど、アイズギアと同じシステムでナビゲーションとかしてくれる超高性能な鞍を作ってくれた。
鞍の見た目は、なんて言うのかなコレ? ロボットアニメで見る様なコックピットをスッキリさせた感じ? うん、そんな感じの椅子と、座席の前に配置されたモニターが特徴だ。
もちろんシートベルトも有るし、ナイトに装備させる為のベルトも、サイズにかなり余裕があって使いやすい。ナイトが大きさを微調整する必要が無いからね。
製品化はしないだろうけど、敢えて製品名を付けるとしたら『ドッグライド』だそうで、真緒と一緒に乗れる様にタンデム仕様だ。有難い。
「いま付けてあげるからね」
私はインベントリから蒼炎を介してドッグライドを出して、ナイトの背中に宛てがいながらベルトで取り付ける。
一人ではちょっと難しいけど、真緒が手伝ってくれた。
「ナイト、かっこいい!」
「うんうん、似合うね~」
「わぅんっ♪︎」
ドッグライドを装備したナイトを褒めると、喜んだナイトがまたアレ、しゃちほこのポーズをしてくれた。可愛い。でもこれナイト自身はカッコイイつもりなんだろうな。
そんなこんなで出発だ。
大きいナイトに寝そべって貰ってから、先に真緒をドッグライドの後部座席に座らせて、シートベルトをしっかりとしめる。
「お母さん、行ってきます!」
「はーい、行ってらっしゃい。気を付けて行くのよー? 真緒も、お姉ちゃんの言うことちゃんと聞いて、良い子にするのよ?」
「あーいっ!」
そして出発。
同じDDスクリプト社製と言うだけあって、アイズギアとも連動機能可能なドッグライド。
だけど、ナビから得た情報を視界に『目視出来る道順』を表示するまでもなく、ナイトは学校までの道を完璧に覚えているので、あっと言う間に到着する。
まるで車に乗ってる様な座り心地で、快適な登校だった。
これはもう鞍って言うか、パイロットシートだね。
「うん、いいなこれぇ。マーちゃんと二人でどこかにお出かけする時なら、ナビ機能もちゃんと使えるだろうし、良いもの貰ったなぁ。DDスクリプトさんの株とか買っちゃおうかなぁ」
実はDDスクリプトさん、技術が先行し過ぎて経営が結構厳しいらしいのだ。
アイズギアとか私にとっては紛うことなき神製品なんだけど、普通の人にとっては魔力操作で動く製品ってひたすら使いづらいらしく、そのせいでDDスクリプトさんは「ネタ製品をガチで作ってる変な会社」って評価が、世間のイメージだと言う。
いやいや…………、そんな訳ないじゃないですか。
今は難しいだけで、この先ずっとそうである訳がない。
ダンジョンアタッカー達のレベルが上がって、魔力って物に馴染んだ人の母数が増えて行けば、その人たちはDDスクリプトさんの製品を手放せなくなるに決まってる。
そんな独自技術を抱えてる会社が今潰れるのは、世界の損失だ。絶対に保護しなきゃ。
「そんなこんなで到着!」
「ちゃくー!」
「あぉーん!」
今日も今日とて学校の入口に陣取るマスコミをノンストップで跳ねて(死んでない)、そのまま学校の敷地にエントリー!
ちなみに跳ね飛ばされたアホたちはなんの比喩も無く吹っ飛んだ。
カメラマンもアナウンサーも機材も纏めて轢いた。
校門の外で何やら馬鹿共が騒いてるけど、校内に入って来たら不法侵入で即通報で現行犯逮捕だ。
現行犯逮捕は一般人にも許された権利なので、容赦無くグレイパーを投げる所存である。そして笹木さんに口利きして人生を終わらせて貰う。
さて、ガチめにアスファルトを転がって迫真の血塗れになったアホはほっといて! 学校である!
「ナイト、ありがとね」
「わぅぅうんっ♪︎」
「…………あぃえッ!?」
シートベルトを外してナイトから降りて、真緒のシートベルトも外して降りるの手伝ってからドッグライドを外そうとする私。
だけど、私が手を伸ばす前にナイトの背中にあるドッグライドが蒼炎に包まれたかと思えば、そのまま消え去ってしまった。
………………えっ!? 何が起きたの!?
「も、もしかして、ナイトもインベントリ使えるの?」
「わんっ」
…………えぇ、マジですか。
もしかして、ナイトのインベントリにも素材がザックザク? て言うか、もしかして、ナイトもDMに認められたプレイヤー扱い?
だって、スキルを介してインベントリを使えるのって覚醒者だけでしょ? 今のナイトって、私の蒼炎だったけど、確かにスキルを使ってインベントリを使用したよね?
と言うか、あれ? DMって死んだらアカウント消えるよね? インベントリの管理はDMで……? スキルとステータスが……?
ダメだ混乱してきた。
「………………あっ」
そう言えば、DMアカウントは自動作成だけど、手動作成も出来たりする……?
ナイトは私と一緒にダンジョンへ落ちて、一緒にアカウントを手に入れたとして、ナイトが死んでアカウントが消えて、だけどステータスは残ってるとしたら…………?
そのナイトがDMに登録し直したら…………?
と言うか、そもそも、ナイトが幽霊である事を当たり前に受け入れたけど、もしかしてナイトが幽霊なのって、スキルの効果だったりするの…………?
0
あなたにおすすめの小説
万物争覇のコンバート 〜回帰後の人生をシステムでやり直す〜
黒城白爵
ファンタジー
異次元から現れたモンスターが地球に侵攻してくるようになって早数十年。
魔力に目覚めた人類である覚醒者とモンスターの戦いによって、人類の生息圏は年々減少していた。
そんな中、瀕死の重体を負い、今にもモンスターに殺されようとしていた外神クロヤは、これまでの人生を悔いていた。
自らが持つ異能の真価を知るのが遅かったこと、異能を積極的に使おうとしなかったこと……そして、一部の高位覚醒者達の横暴を野放しにしてしまったことを。
後悔を胸に秘めたまま、モンスターの攻撃によってクロヤは死んだ。
そのはずだったが、目を覚ますとクロヤは自分が覚醒者となった日に戻ってきていた。
自らの異能が構築した新たな力〈システム〉と共に……。
勘当された少年と不思議な少女
レイシール
ファンタジー
15歳を迎えた日、ランティスは父親から勘当を言い渡された。
理由は外れスキルを持ってるから…
眼の色が違うだけで気味が悪いと周りから避けられてる少女。
そんな2人が出会って…
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
S級スキル『剣聖』を授かった俺はスキルを奪われてから人生が一変しました
白崎なまず
ファンタジー
この世界の人間の多くは生まれてきたときにスキルを持っている。スキルの力は強大で、強力なスキルを持つ者が貧弱なスキルしか持たない者を支配する。
そんな世界に生まれた主人公アレスは大昔の英雄が所持していたとされるSランク『剣聖』を持っていたことが明らかになり一気に成り上がっていく。
王族になり、裕福な暮らしをし、将来は王女との結婚も約束され盤石な人生を歩むアレス。
しかし物事がうまくいっている時こそ人生の落とし穴には気付けないものだ。
突如現れた謎の老人に剣聖のスキルを奪われてしまったアレス。
スキルのおかげで手に入れた立場は当然スキルがなければ維持することが出来ない。
王族から下民へと落ちたアレスはこの世に絶望し、生きる気力を失いかけてしまう。
そんなアレスに手を差し伸べたのはとある教会のシスターだった。
Sランクスキルを失い、この世はスキルが全てじゃないと知ったアレス。
スキルがない自分でも前向きに生きていこうと冒険者の道へ進むことになったアレスだったのだが――
なんと、そんなアレスの元に剣聖のスキルが舞い戻ってきたのだ。
スキルを奪われたと王族から追放されたアレスが剣聖のスキルが戻ったことを隠しながら冒険者になるために学園に通う。
スキルの優劣がものを言う世界でのアレスと仲間たちの学園ファンタジー物語。
この作品は小説家になろうに投稿されている作品の重複投稿になります
帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす
黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。
4年前に書いたものをリライトして載せてみます。
異世界へ行って帰って来た
バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。
そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる