インスタントフィクション

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欠落

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 私は消化器内科の看護師。病院にはさまざまな患者が入院してくる。
 
 他人の恋愛、健康、仕事の良し悪しを占えても、自身の血糖値の上昇を占えない名のある占い師。
 入院中にビールを持ち込む、アルコール性肝硬変の男。
 食べることに夢中になり、首の周りについた贅肉のせいで呼吸すらできなくなった女。
 美を追求するための資金調達のため、酒を飲み、吐瀉物にまみれるホステス。

 こういった類の人間を見ると、ため息が出てしまう。

 「お大事にしてくださいね」と他人にに声をかけるが、大事にしてもらえない男。
 他人の身体を治すため、自分の身体を酷使する男。

 しかし、このような類の人間の、不完全さを食い物にし、自分を自分たらしめる私もまた同じ類の人間なのである。
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